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苛められる男の子
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「パパぁ。今日は神殿で適性検査の日だね!ボク楽しみだなぁ。」
はちみつ色の明るい金髪の男の子が、恰幅のいい父親に甘える。
「ははは、グラディウスは可愛いなあ!きっと素晴らしい適性だろう!」
父親はこの国の伯爵だった。
「おい、ユース。お前も支度しろよ。どーせしょぼい適性だろうけど!」
「ああ。お前は孤児院から我が家の召使として引き取ったんだ。少しは我が家に貢献できる適性だといいがね、5歳の子に検査を受けさせるのは国で決められている義務なのだ。受けさせてやるんだから、感謝しろ。」
「は、はい…。ありがとうございます、うれしいですっ。」
灰色のみすぼらしい布を頭からかぶったような服で、茶色の長い髪を顔がかくれるようにもさっと伸ばしている。
だが、その髪の間から透けて見える瞳の色はラベンダー色で、将来ハンサムになると言われているグラディウスよりも、実は美しい造形をしていた。
地べたに這い、床の掃除を一時止めて、主人に感謝を述べると、また掃除を再開した。
奴隷のような人生は変わらないだろうけれど、グラディウス様より劣っていて、一般人よりは有用な、そんなスキルが覚えられそうな適性だったらいいな。
そう思っていた。
体には、グラディウスが八つ当たりした傷が多くある。
自分より美しいのが許せないと、グラディウスはユースにみすぼらしい服を着て、顔が見えないように髪を伸ばすように命令していた。
少しはマシな、使用人の子どものおさがりを着て、神殿に向かう。
先に受けたグラディウスには、『勇者』の適性があった。
剣の才能があるらしい。
森の奥の魔王が住むという国に侵攻して、人類の敵を討ち滅ぼす役目がある。
グラディウスこそ、成し遂げるだろうと。
大人たちは皆ほめたたえている。
よかった。
グラディウスが『勇者』ならば、他の何が出ても彼よりは下だろう。
彼の怒りは買わないはずだ。
「おおっ、彼も凄い!」
僕の番となり、水晶に手をかざすと、白く光り輝いた。
「さすがジャスティン家ですな。使用人の適性も素晴らしい!この子は『聖者』ですぞ!」
えっ…。
グラディウスの目が怖い。
帰ってから、ご主人さまはご機嫌だったけど、グラディウスに誰も見ていないところで殴られた。
彼は顔や人目につくところは狙わない。
「せっかく勇者だったから!可愛い女の子パーティーを作るつもりだったのにッ!なんでお前なんかが聖者なんだッ!これじゃあ、お前を連れていくしかないじゃないかッ!」
僕だって、絶望だ。
だけれど、聖者の適性があり、将来の彼のパーティーだから。
僕の衣服はちょっとだけマシになって、下働きの仕事も減って。
その代わり、神殿で読み書きや聖者のスキルについての特訓が始まることになった。
厳しい特訓だというけれど、その間だけでも彼と離れられるから、少しはいいのかもしれない。
はちみつ色の明るい金髪の男の子が、恰幅のいい父親に甘える。
「ははは、グラディウスは可愛いなあ!きっと素晴らしい適性だろう!」
父親はこの国の伯爵だった。
「おい、ユース。お前も支度しろよ。どーせしょぼい適性だろうけど!」
「ああ。お前は孤児院から我が家の召使として引き取ったんだ。少しは我が家に貢献できる適性だといいがね、5歳の子に検査を受けさせるのは国で決められている義務なのだ。受けさせてやるんだから、感謝しろ。」
「は、はい…。ありがとうございます、うれしいですっ。」
灰色のみすぼらしい布を頭からかぶったような服で、茶色の長い髪を顔がかくれるようにもさっと伸ばしている。
だが、その髪の間から透けて見える瞳の色はラベンダー色で、将来ハンサムになると言われているグラディウスよりも、実は美しい造形をしていた。
地べたに這い、床の掃除を一時止めて、主人に感謝を述べると、また掃除を再開した。
奴隷のような人生は変わらないだろうけれど、グラディウス様より劣っていて、一般人よりは有用な、そんなスキルが覚えられそうな適性だったらいいな。
そう思っていた。
体には、グラディウスが八つ当たりした傷が多くある。
自分より美しいのが許せないと、グラディウスはユースにみすぼらしい服を着て、顔が見えないように髪を伸ばすように命令していた。
少しはマシな、使用人の子どものおさがりを着て、神殿に向かう。
先に受けたグラディウスには、『勇者』の適性があった。
剣の才能があるらしい。
森の奥の魔王が住むという国に侵攻して、人類の敵を討ち滅ぼす役目がある。
グラディウスこそ、成し遂げるだろうと。
大人たちは皆ほめたたえている。
よかった。
グラディウスが『勇者』ならば、他の何が出ても彼よりは下だろう。
彼の怒りは買わないはずだ。
「おおっ、彼も凄い!」
僕の番となり、水晶に手をかざすと、白く光り輝いた。
「さすがジャスティン家ですな。使用人の適性も素晴らしい!この子は『聖者』ですぞ!」
えっ…。
グラディウスの目が怖い。
帰ってから、ご主人さまはご機嫌だったけど、グラディウスに誰も見ていないところで殴られた。
彼は顔や人目につくところは狙わない。
「せっかく勇者だったから!可愛い女の子パーティーを作るつもりだったのにッ!なんでお前なんかが聖者なんだッ!これじゃあ、お前を連れていくしかないじゃないかッ!」
僕だって、絶望だ。
だけれど、聖者の適性があり、将来の彼のパーティーだから。
僕の衣服はちょっとだけマシになって、下働きの仕事も減って。
その代わり、神殿で読み書きや聖者のスキルについての特訓が始まることになった。
厳しい特訓だというけれど、その間だけでも彼と離れられるから、少しはいいのかもしれない。
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