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魔王の側近は勇者パーティーの聖者に恋をする
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「魔王、ルシフェル。人類の敵、魔族は今日で根絶やしにしてくれる…!!!この、勇者グラディウスがなぁぁぁ!」
突然に押し入った勇者パーティーに攻め込まれて、主が転がる。
多勢に無勢、押し入った勇者パーティーは無残にも魔王を討ち取った。
「ルシフェルさま、陛下ぁあああっ!」
月夜に煌めいたプラチナブロンド、艶やかな白い肌は焦げ、もうぴくりとも動かない。
エメラルドグリーンの海の色のようだった澄んだ瞳は、もう濁って何も映さない。
血だまりの中に浮かび、彼が最後まで大事に抱えていた翡翠の玉が転がった。
漆黒の死神と言われた私は、何も役に立てなかった。
早々に片腕をもがれて、持っていた武器もどこかへ行った。
私も、致命傷だ。
もうこの国―――ディユはおしまいだろう。
私たちが何をしたのだろう。
人間は畏れた。
魔力が強く、いつまでも若々しく、魅了するような素晴らしい美貌を持つディユの民を。
雌型が存在せず、雄同士で繁殖する私たちの神秘を。
時には魔女と呼ばれ、迫害されてきた私たちの先祖は、ただ、森の奥に国を作り、ひっそりと自分たちだけで穏やかに暮らしてきただけなのに。
各国から奪ったと言われる宝物だって、そっちが勝手に送りつけてきたのではないか。
勝手に怖がって、勝手に貢いだのだ。
薄れゆく意識の中、私の手元に翡翠の玉は転がって来た。
そして、ふと。視界に勇者パーティーの回復薬の男が映った。
勇者に奴隷のようにこき使われている、もさっとした髪で分厚い眼鏡の、灰色のローブの男。
彼は、彼だけは私たちを嘲ってはいない。
最初に見たときから気になっていた。
彼は本当は美しい人なのに。
このパーティーで酷くいじめられていた。
何か口元で唱えている。
私たちがせめて死後安らかに過ごせるように。
よりよい人生に生まれ変われるように。
誰にも聞こえない声で、祈ってくれている。
ああ。
やり直したい。
このパーティーからあなたをさらって。
あなたと幸せに生きていきたい。
ディユのみんなを討伐の運命から救いたい。
そう、思った時。
翡翠の玉が光った。
◆◆◆◆
「カルディー!カルディ。起きなさい、もう朝だよ。」
ん…。
寝たりない体を起こして、寝ぼけまなこでベッドからおりる。
(あれ…。私、死んだんじゃなかったんだっけ??????????)
からん。
ベッドから落ちた緑色の玉……翡翠の玉をみて、眠気が飛ぶ。
翡翠の玉は、壊れて霧散した。
「もう!朝ごはんできているよ!」
部屋に入って来た人を見て驚く。
私を産んだ親が、まだ若い。それに、勇者に攻められて、今頃は死んでいるはずなのに。
手も小さい。
体も小さい。
そして、ここは。
私の実家。
まだ、新しい家。私の部屋。
私、カルディ=カフィは5歳に戻った。
おそらく、翡翠の玉の秘められた力で一回限りのやり直しの機会を得たのだ。
突然に押し入った勇者パーティーに攻め込まれて、主が転がる。
多勢に無勢、押し入った勇者パーティーは無残にも魔王を討ち取った。
「ルシフェルさま、陛下ぁあああっ!」
月夜に煌めいたプラチナブロンド、艶やかな白い肌は焦げ、もうぴくりとも動かない。
エメラルドグリーンの海の色のようだった澄んだ瞳は、もう濁って何も映さない。
血だまりの中に浮かび、彼が最後まで大事に抱えていた翡翠の玉が転がった。
漆黒の死神と言われた私は、何も役に立てなかった。
早々に片腕をもがれて、持っていた武器もどこかへ行った。
私も、致命傷だ。
もうこの国―――ディユはおしまいだろう。
私たちが何をしたのだろう。
人間は畏れた。
魔力が強く、いつまでも若々しく、魅了するような素晴らしい美貌を持つディユの民を。
雌型が存在せず、雄同士で繁殖する私たちの神秘を。
時には魔女と呼ばれ、迫害されてきた私たちの先祖は、ただ、森の奥に国を作り、ひっそりと自分たちだけで穏やかに暮らしてきただけなのに。
各国から奪ったと言われる宝物だって、そっちが勝手に送りつけてきたのではないか。
勝手に怖がって、勝手に貢いだのだ。
薄れゆく意識の中、私の手元に翡翠の玉は転がって来た。
そして、ふと。視界に勇者パーティーの回復薬の男が映った。
勇者に奴隷のようにこき使われている、もさっとした髪で分厚い眼鏡の、灰色のローブの男。
彼は、彼だけは私たちを嘲ってはいない。
最初に見たときから気になっていた。
彼は本当は美しい人なのに。
このパーティーで酷くいじめられていた。
何か口元で唱えている。
私たちがせめて死後安らかに過ごせるように。
よりよい人生に生まれ変われるように。
誰にも聞こえない声で、祈ってくれている。
ああ。
やり直したい。
このパーティーからあなたをさらって。
あなたと幸せに生きていきたい。
ディユのみんなを討伐の運命から救いたい。
そう、思った時。
翡翠の玉が光った。
◆◆◆◆
「カルディー!カルディ。起きなさい、もう朝だよ。」
ん…。
寝たりない体を起こして、寝ぼけまなこでベッドからおりる。
(あれ…。私、死んだんじゃなかったんだっけ??????????)
からん。
ベッドから落ちた緑色の玉……翡翠の玉をみて、眠気が飛ぶ。
翡翠の玉は、壊れて霧散した。
「もう!朝ごはんできているよ!」
部屋に入って来た人を見て驚く。
私を産んだ親が、まだ若い。それに、勇者に攻められて、今頃は死んでいるはずなのに。
手も小さい。
体も小さい。
そして、ここは。
私の実家。
まだ、新しい家。私の部屋。
私、カルディ=カフィは5歳に戻った。
おそらく、翡翠の玉の秘められた力で一回限りのやり直しの機会を得たのだ。
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