上 下
36 / 44

初めて会う

しおりを挟む
「ようこそいらっしゃいました。」

人のよさそうな青年。
だが、鍛えられた肉体には隙がない。

これが、この国の王。騎士団長として数々の戦場で武勲を上げ続けた男。

プラチナブロンドに近い、薄い金色の髪。
コバルトブルーに近いような、青い瞳。



「こちらこそ急に申しましたのに、歓迎いただき感謝いたします。」

長い前髪を真ん中で横に分けて、髪を編み込んだカリスは一見人畜無害な貴公子に見える。

その見た目を活かして、人のよさそうな笑顔でエドワードと握手を交わした。


「妃のティアです。この国の侯爵家に嫁いだリュージュ王女の子息になります。」

「初めまして…。母から、そちらの国でのことはよく聞いております。」


ぴりりとした緊張が走る。


「リュージュ様には悪いことをしました。他の王族はどう思っているか知りませんが、私は反省しております。リュージュ様はとても美しく、賢く、気高い方でした。貴方はお母様に瓜二つですね。…………貴方を見ていると、なぜ、私は父を諭せなかったのか…。影ながらお助けできなかったのかと……今さらですが、思い出しては枕を濡らすばかりです。」

「向こうでの母はどんな暮らしをしていたのですか…?」


「私の父が王位を簒奪した後、リュージュ様は美しかったのと、王女でしたので、何かしらの道具に使えるだろうと生かされはしましたが、住んでいた宮から追い出され、薄汚れた廃宮へ移されました。政略結婚の道具としたかったので、王女としての教育は施されましたが、誰からも相手をされず、社交に出ることもなく、ただひっそりとそこで暮らして…。彼女はなるべく目立たないようにしていましたが、なにせあの美貌と知性ですからね。嫉妬した僕らは、彼女の持つ僅かな形見の品を奪ったり壊したり、髪をつかんで引きずり回し、ざんばらに切ってしまったり。大けがにならない程度の暴力をふるっていました。」

「そうですか。」


「………今ではやるべきことではなかったと、反省しております。」


信頼関係を構築するためには、非は素直に認め、正直に言うことだ。
はらはらする部下を視線で諫める。


「過去はもう変わりません。未来を見ましょう。ドラゴニア王国とよき隣人になれるよう、願います。」


「ありがとうございます。それでは、本来であればリュージュ様にお返しするべきだったのですが、結婚の祝いとして、貴方のおばあ様が身に着けていた宝玉をお贈りします。」


恭しく、うずらの卵くらいの大きさのオパールを進呈する。


「リュージュ様も大事にされておりました。お返しすることはかないませんでしたが、貴方に継承されれば、リュージュ様もお喜びになるでしょう。」








―――――――――ティアという従甥にエドワード陛下。


早く俺を信用しろ…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【短編】睨んでいませんし何も企んでいません。顔が怖いのは生まれつきです。

cyan
BL
男爵家の次男として産まれたテオドールの悩みは、父親譲りの強面の顔。 睨んでいないのに睨んでいると言われ、何もしていないのに怯えられる日々。 男で孕み腹のテオドールにお見合いの話はたくさん来るが、いつも相手に逃げられてしまう。 ある日、父がベルガー辺境伯との婚姻の話を持ってきた。見合いをすっ飛ばして会ったこともない人との結婚に不安を抱きながら、テオドールは辺境へと向かった。 そこでは、いきなり騎士に囲まれ、夫のフィリップ様を殺そうと企んでいると疑われて監視される日々が待っていた。 睨んでないのに、嫁いだだけで何も企んでいないのに…… いつその誤解は解けるのか。 3万字ほどの作品です。サクサクあげていきます。 ※男性妊娠の表現が出てくるので苦手な方はご注意ください

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

【完結】売れ残りのΩですが隠していた××をαの上司に見られてから妙に優しくされててつらい。

天城
BL
ディランは売れ残りのΩだ。貴族のΩは十代には嫁入り先が決まるが、儚さの欠片もない逞しい身体のせいか完全に婚期を逃していた。 しかもディランの身体には秘密がある。陥没乳首なのである。恥ずかしくて大浴場にもいけないディランは、結婚は諦めていた。 しかしαの上司である騎士団長のエリオットに事故で陥没乳首を見られてから、彼はとても優しく接してくれる。始めは気まずかったものの、穏やかで壮年の色気たっぷりのエリオットの声を聞いていると、落ち着かないようなむずがゆいような、不思議な感じがするのだった。 【攻】騎士団長のα・巨体でマッチョの美形(黒髪黒目の40代)×【受】売れ残りΩ副団長・細マッチョ(陥没乳首の30代・銀髪紫目・無自覚美形)色事に慣れない陥没乳首Ωを、あの手この手で囲い込み、執拗な乳首フェラで籠絡させる独占欲つよつよαによる捕獲作戦。全3話+番外2話

王様との縁談から全力で逃げます。〜王女として育った不遇の王子の婚姻〜

竜鳴躍
BL
アリアは、前王の遺児で本来は第一王子だが、殺されることを恐れ、地味メイクで残念な王女として育った。冒険者になって城から逃げる予定が、隣国の残酷王へ人質という名の輿入れが決まって……。 俺は男です!子どもも産めません! エッ。王家の魔法なら可能!? いやいやいや。 なんで俺を溺愛するの!?

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

悪辣と花煙り――悪役令嬢の従者が大嫌いな騎士様に喰われる話――

BL
「ずっと前から、おまえが好きなんだ」 と、俺を容赦なく犯している男は、互いに互いを嫌い合っている(筈の)騎士様で――――。 「悪役令嬢」に仕えている性悪で悪辣な従者が、「没落エンド」とやらを回避しようと、裏で暗躍していたら、大嫌いな騎士様に見つかってしまった。双方の利益のために手を組んだものの、嫌いなことに変わりはないので、うっかり煽ってやったら、何故かがっつり喰われてしまった話。 ※ムーンライトノベルズでも公開しています(https://novel18.syosetu.com/n4448gl/)

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

処理中です...