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精霊の想い

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ドラゴニア王国には、心のきれいな立派な王様とお妃様がいた。

血気盛んな竜たちをまとめ上げ、平和な国だった。

夜のような黒髪と、星屑が浮かんだ夜空の深い青の瞳の王様は、月の光のような美しいプラチナブロンドにコバルトブルーの海のような瞳の王妃様を溺愛し、王妃様にそっくりな王女をとても大切に育んでいて、彼らの美しい心根は、精霊たちも居心地がよく、この世界の女神もこの家族を見守っていた。


困っている者には膝を折り、話を聞く王妃を見習って、この王女もよく民のために祈り、働く少女だった。


だから、王弟に王様とお妃さまが殺され、一人になったこの王女の身の上を、女神さまも気にかけていたのだ。



ドラゴニア王国は竜の国で、竜の力を持つ王族は複数生まれた。
だが、竜の中でも、王たる竜は一人。

それは、王族の中で継承されていく力だったが、王弟が奪いたかったその力は、王の死とともに消え、彼の手には入らなかった。

自身の持つ、毒をばら蒔く邪竜の力は、聖獣とは真逆の力であり、他の者に疎まれるものだったが、王弟が王につくと、みな従うしかなかった。

恐怖政治の始まり。


先王の遺児は美しい姫君だったので、政略結婚の道具にでもなるかと生かしておくことにしたが、それは少女にとって、長い苦難の始まり。

部屋を追い出され、塔に追いやられて、侍女もつけられず、ご飯は毎日固くてすっぱい黒パンと野菜くずのスープ。
両親からもらったものも、全て取り上げられ、目の前で面白そうに捨てられた。

たまに塔から出されたと思えば、見すぼらしい格好のまま夜会に引きずり出され、罵倒された挙句に床の上に置いた皿からスープを飲まされたり、下女と同じように下働きをさせられた。


そんな中でもめげずにいたリュージュを、精霊たちはとても愛していた。




<こんないい子が苦しめられて…。>


ある日リュージュは夢を見た。

美しい黄金に輝く女神さまが、リュージュを愛し子として守ろうかという。

リュージュは答えた。


『いいえ、私より、いつか私が育む私の子に加護をください。私は力がありません。お父様から受け継いだものを活かすことができない。きっと、私の子が受け継げるように。』


女神は、あいわかったとリュージュの髪を撫でた。



精霊はずっと見て来た。

リュージュ、そしてティアを。


何故、あのような邪悪な者たちに二人が苦しめられなければならなかったのか。




普段話しかけはしても、精霊に自分から頼みごとをしないティアの頼みで、カラスを落とした。

ティアは申し訳なく思うかもしれないが、このカラスは寿命が尽きかけの者だ。
ティアのために最後の命を使えるのなら、と協力してくれた。


カラスの顔になった魔女は滑稽だった。

全く魔物にしか見えない。

放っておいても、この国の騎士たちが倒してしまうだろう。
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