27 / 44
精霊の想い
しおりを挟む
ドラゴニア王国には、心のきれいな立派な王様とお妃様がいた。
血気盛んな竜たちをまとめ上げ、平和な国だった。
夜のような黒髪と、星屑が浮かんだ夜空の深い青の瞳の王様は、月の光のような美しいプラチナブロンドにコバルトブルーの海のような瞳の王妃様を溺愛し、王妃様にそっくりな王女をとても大切に育んでいて、彼らの美しい心根は、精霊たちも居心地がよく、この世界の女神もこの家族を見守っていた。
困っている者には膝を折り、話を聞く王妃を見習って、この王女もよく民のために祈り、働く少女だった。
だから、王弟に王様とお妃さまが殺され、一人になったこの王女の身の上を、女神さまも気にかけていたのだ。
ドラゴニア王国は竜の国で、竜の力を持つ王族は複数生まれた。
だが、竜の中でも、王たる竜は一人。
それは、王族の中で継承されていく力だったが、王弟が奪いたかったその力は、王の死とともに消え、彼の手には入らなかった。
自身の持つ、毒をばら蒔く邪竜の力は、聖獣とは真逆の力であり、他の者に疎まれるものだったが、王弟が王につくと、みな従うしかなかった。
恐怖政治の始まり。
先王の遺児は美しい姫君だったので、政略結婚の道具にでもなるかと生かしておくことにしたが、それは少女にとって、長い苦難の始まり。
部屋を追い出され、塔に追いやられて、侍女もつけられず、ご飯は毎日固くてすっぱい黒パンと野菜くずのスープ。
両親からもらったものも、全て取り上げられ、目の前で面白そうに捨てられた。
たまに塔から出されたと思えば、見すぼらしい格好のまま夜会に引きずり出され、罵倒された挙句に床の上に置いた皿からスープを飲まされたり、下女と同じように下働きをさせられた。
そんな中でもめげずにいたリュージュを、精霊たちはとても愛していた。
<こんないい子が苦しめられて…。>
ある日リュージュは夢を見た。
美しい黄金に輝く女神さまが、リュージュを愛し子として守ろうかという。
リュージュは答えた。
『いいえ、私より、いつか私が育む私の子に加護をください。私は力がありません。お父様から受け継いだものを活かすことができない。きっと、私の子が受け継げるように。』
女神は、あいわかったとリュージュの髪を撫でた。
精霊はずっと見て来た。
リュージュ、そしてティアを。
何故、あのような邪悪な者たちに二人が苦しめられなければならなかったのか。
普段話しかけはしても、精霊に自分から頼みごとをしないティアの頼みで、カラスを落とした。
ティアは申し訳なく思うかもしれないが、このカラスは寿命が尽きかけの者だ。
ティアのために最後の命を使えるのなら、と協力してくれた。
カラスの顔になった魔女は滑稽だった。
全く魔物にしか見えない。
放っておいても、この国の騎士たちが倒してしまうだろう。
血気盛んな竜たちをまとめ上げ、平和な国だった。
夜のような黒髪と、星屑が浮かんだ夜空の深い青の瞳の王様は、月の光のような美しいプラチナブロンドにコバルトブルーの海のような瞳の王妃様を溺愛し、王妃様にそっくりな王女をとても大切に育んでいて、彼らの美しい心根は、精霊たちも居心地がよく、この世界の女神もこの家族を見守っていた。
困っている者には膝を折り、話を聞く王妃を見習って、この王女もよく民のために祈り、働く少女だった。
だから、王弟に王様とお妃さまが殺され、一人になったこの王女の身の上を、女神さまも気にかけていたのだ。
ドラゴニア王国は竜の国で、竜の力を持つ王族は複数生まれた。
だが、竜の中でも、王たる竜は一人。
それは、王族の中で継承されていく力だったが、王弟が奪いたかったその力は、王の死とともに消え、彼の手には入らなかった。
自身の持つ、毒をばら蒔く邪竜の力は、聖獣とは真逆の力であり、他の者に疎まれるものだったが、王弟が王につくと、みな従うしかなかった。
恐怖政治の始まり。
先王の遺児は美しい姫君だったので、政略結婚の道具にでもなるかと生かしておくことにしたが、それは少女にとって、長い苦難の始まり。
部屋を追い出され、塔に追いやられて、侍女もつけられず、ご飯は毎日固くてすっぱい黒パンと野菜くずのスープ。
両親からもらったものも、全て取り上げられ、目の前で面白そうに捨てられた。
たまに塔から出されたと思えば、見すぼらしい格好のまま夜会に引きずり出され、罵倒された挙句に床の上に置いた皿からスープを飲まされたり、下女と同じように下働きをさせられた。
そんな中でもめげずにいたリュージュを、精霊たちはとても愛していた。
<こんないい子が苦しめられて…。>
ある日リュージュは夢を見た。
美しい黄金に輝く女神さまが、リュージュを愛し子として守ろうかという。
リュージュは答えた。
『いいえ、私より、いつか私が育む私の子に加護をください。私は力がありません。お父様から受け継いだものを活かすことができない。きっと、私の子が受け継げるように。』
女神は、あいわかったとリュージュの髪を撫でた。
精霊はずっと見て来た。
リュージュ、そしてティアを。
何故、あのような邪悪な者たちに二人が苦しめられなければならなかったのか。
普段話しかけはしても、精霊に自分から頼みごとをしないティアの頼みで、カラスを落とした。
ティアは申し訳なく思うかもしれないが、このカラスは寿命が尽きかけの者だ。
ティアのために最後の命を使えるのなら、と協力してくれた。
カラスの顔になった魔女は滑稽だった。
全く魔物にしか見えない。
放っておいても、この国の騎士たちが倒してしまうだろう。
822
お気に入りに追加
1,425
あなたにおすすめの小説
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
僕の策略は婚約者に通じるか
藍
BL
侯爵令息✕伯爵令息。大好きな婚約者が「我慢、無駄、仮面」と話しているところを聞いてしまった。ああそれなら僕はいなくならねば。婚約は解消してもらって彼を自由にしてあげないと。すべてを忘れて逃げようと画策する話。
フリードリヒ・リーネント✕ユストゥス・バルテン
※他サイト投稿済です
※攻視点があります
嫌われ者の僕はひっそりと暮らしたい
りまり
BL
僕のいる世界は男性でも妊娠することのできる世界で、僕の婚約者は公爵家の嫡男です。
この世界は魔法の使えるファンタジーのようなところでもちろん魔物もいれば妖精や精霊もいるんだ。
僕の婚約者はそれはそれは見目麗しい青年、それだけじゃなくすごく頭も良いし剣術に魔法になんでもそつなくこなせる凄い人でだからと言って平民を見下すことなくわからないところは教えてあげられる優しさを持っている。
本当に僕にはもったいない人なんだ。
どんなに努力しても成果が伴わない僕に呆れてしまったのか、最近は平民の中でも特に優秀な人と一緒にいる所を見るようになって、周りからもお似合いの夫婦だと言われるようになっていった。その一方で僕の評価はかなり厳しく彼が可哀そうだと言う声が聞こえてくるようにもなった。
彼から言われたわけでもないが、あの二人を見ていれば恋愛関係にあるのぐらいわかる。彼に迷惑をかけたくないので、卒業したら結婚する予定だったけど両親に今の状況を話て婚約を白紙にしてもらえるように頼んだ。
答えは聞かなくてもわかる婚約が解消され、僕は学校を卒業したら辺境伯にいる叔父の元に旅立つことになっている。
後少しだけあなたを……あなたの姿を目に焼き付けて辺境伯領に行きたい。
義兄に愛人契約を強要する悪役オメガですが、主人公が現れたら潔く身を引きます!
月歌(ツキウタ)
BL
おそらく、ここはBLゲームの世界。義兄は攻略対象者だ。そして、僕は義兄に愛人関係を強要する悪役モブ。いや、不味いでしょ。この関係は明らかにヤバい。僕はゲーム主人公が登場したら、兄上から潔く身を引きます!だから、主人公さん、早く来て!
☆オメガバース(独自設定あり過ぎ)
☆男性妊娠あり
☆表紙絵
AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。
婚約者は愛を見つけたらしいので、不要になった僕は君にあげる
カシナシ
BL
「アシリス、すまない。婚約を解消してくれ」
そう告げられて、僕は固まった。5歳から13年もの間、婚約者であるキール殿下に尽くしてきた努力は一体何だったのか?
殿下の隣には、可愛らしいオメガの男爵令息がいて……。
サクッとエロ&軽めざまぁ。
全10話+番外編(別視点)数話
本編約二万文字、完結しました。
※HOTランキング最高位6位、頂きました。たくさんの閲覧、ありがとうございます!
※本作の数年後のココルとキールを描いた、
『訳ありオメガは罪の証を愛している』
も公開始めました。読む際は注意書きを良く読んで下さると幸いです!
第二の人生は王子様の花嫁でした。
あいえだ
BL
俺は幸福に命を終え、前世の記憶を持ったまま男が圧倒的に多いこの異世界に転生して公爵家御曹司となった。そして王子と婚約するが後から生まれてきた若い転生者に王子を奪われてしまう。
その時声をかけられた、辺境の悪魔と呼ばれ、黒いマスク姿で忌み嫌われるシュワルツ卿の元へ引き取られることに。実は彼は超大国の王子で、俺を手にいれるために属国のこの国へお忍びで来ていたと言い、俺を連れて帰り溺愛の限りを尽くす。
元おっさんの俺が第二の人生を謳歌する、あるある溺愛コメディなお話。主人公受けです。
国名がややこしいのでABつけています。ベンの国はガルデスフィールでかわりないのですが、人名が多すぎるので…。
そのうちがっつりR18です。性描写ありは★をつけています。
絵師活動もしているので表紙は自作です。
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる