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愛しき君に
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「今頃凱旋パレードでもしているころかな?」
息子を膝に抱きながら、窓の外を見るダグラス。
剣や学問や、身に着けたそれを忘れることはなかったが、家族の記憶、婚約者との思い出を全て忘れてしまったダグラスは、私と一緒に学園に通った記憶もないのだろう。
「心配なら変装して、二人で見に行こうか。」
「………。」
「そうだな、エドワードがいるしな。」
膝の上の幼い息子は、母親の腕の中で丸くなって眠っている。
私たちは、今ではもう、別の守るべき者ができた身だ。
優先順位が違うのだ…。
「エドワードの妻も男性だったな。二人に子ができるよう、落ち着いたら祝福しに行こうか。」
「あぁ!」
ああ、こんなふうに笑ってくれる日が来るなんて。
18年前のあの日―――――――――
「王弟の反乱!!??なんてことだ、ダグラスは!!!ジョンもイースターも何をやってるんだ!側近だろうっ!!?」
「それが、側近家族も、婚約者のご家族も、皆さん拘束されて、今……城に……!」
「なんでそうなった!近衛騎士は何をしてるんだ!」
「城の中の人間も、貴族の大半…というか国民も…。何故か狂ったように王弟を支持しているのです!」
「『魔女』か…!!?あの王弟妃、嫌な女だと思ったら…!」
いくらダグラスでも、これでは無理だ…!
「救いに行く…!」
「おやめください!フェニックス殿下!そんなことよりこの国を出ましょう!」
「いやだ、ダグラスたちを救うんだ…!私が行けば魔女に対抗できるかもしれないじゃないか!」
「あなたはファイアーバード王国の王太子殿下です。御身と我が国を第一に考えなさいませ!」
「私がいなければいないで、他の者がいるだろう!」
「何を仰いますか!私どもは貴方を望んでいるのです!」
ああ、ダグラス。
君を一目見たときから、私の心は君に囚われていたのに。
君はいつもみんなの中心で。
リーダーシップのある正しい王太子様で。
その婚約者も綺麗な人で、優しくて、非の打ち所がなくて、二人は素晴らしい婚約者同士で。
だからそっと、恋心に蓋をして。
留学生として皆によくしてもらって。
友達の中に入れてもらって。
ああ。
ああ…!
せめて城の近くにいって様子を窺うことをようやく許してもらい、そこで、乱雑に捨て置かれた遺体を目の当たりにした。
陛下と王妃は、無残にも肉体が原型を留めていなかった。
相当強い憎しみで、子どもたちに見せしめのように殺されたのだろう。
「………あ。あぁあ……っ。」
そしてダグラスは………
心臓を剣で一突き。
自害したのだと分かる、損傷はそれほどない。
ただ、衣服が乱れ、下半身は何も穿いておらず、嫌なにおいがして…。
ダグラスの身に何が起きてこうなったか、すぐ分かってしまった。
思わず彼を抱き上げ、マントで包んで、闇夜に隠れた。
ダグラス。
愛しいダグラス。
救えなかった。
その想いが、私にフェニックスの聖獣の力を目覚めさせ、ダグラスを蘇生させた。
私はどんなにうれしかっただろう!
例え記憶を失っていても。
表情が希薄で半死人のようでも。
生きてくれる。
生まれ直した雛のように、毎日愛を囁いて。
体が癒えて、心が癒えて、完全に元通りとはいかなくても、私の仕事の補佐ができるほどになって。
そして、私の気持ちに応えてくれたのだから………。
「エドワード……。無事に王位を獲れよ。もう一人の魔女に負けるな。」
我ながら自分勝手な願いだなと思いながら、フェニックスはダグラスの髪にキスをした。
息子を膝に抱きながら、窓の外を見るダグラス。
剣や学問や、身に着けたそれを忘れることはなかったが、家族の記憶、婚約者との思い出を全て忘れてしまったダグラスは、私と一緒に学園に通った記憶もないのだろう。
「心配なら変装して、二人で見に行こうか。」
「………。」
「そうだな、エドワードがいるしな。」
膝の上の幼い息子は、母親の腕の中で丸くなって眠っている。
私たちは、今ではもう、別の守るべき者ができた身だ。
優先順位が違うのだ…。
「エドワードの妻も男性だったな。二人に子ができるよう、落ち着いたら祝福しに行こうか。」
「あぁ!」
ああ、こんなふうに笑ってくれる日が来るなんて。
18年前のあの日―――――――――
「王弟の反乱!!??なんてことだ、ダグラスは!!!ジョンもイースターも何をやってるんだ!側近だろうっ!!?」
「それが、側近家族も、婚約者のご家族も、皆さん拘束されて、今……城に……!」
「なんでそうなった!近衛騎士は何をしてるんだ!」
「城の中の人間も、貴族の大半…というか国民も…。何故か狂ったように王弟を支持しているのです!」
「『魔女』か…!!?あの王弟妃、嫌な女だと思ったら…!」
いくらダグラスでも、これでは無理だ…!
「救いに行く…!」
「おやめください!フェニックス殿下!そんなことよりこの国を出ましょう!」
「いやだ、ダグラスたちを救うんだ…!私が行けば魔女に対抗できるかもしれないじゃないか!」
「あなたはファイアーバード王国の王太子殿下です。御身と我が国を第一に考えなさいませ!」
「私がいなければいないで、他の者がいるだろう!」
「何を仰いますか!私どもは貴方を望んでいるのです!」
ああ、ダグラス。
君を一目見たときから、私の心は君に囚われていたのに。
君はいつもみんなの中心で。
リーダーシップのある正しい王太子様で。
その婚約者も綺麗な人で、優しくて、非の打ち所がなくて、二人は素晴らしい婚約者同士で。
だからそっと、恋心に蓋をして。
留学生として皆によくしてもらって。
友達の中に入れてもらって。
ああ。
ああ…!
せめて城の近くにいって様子を窺うことをようやく許してもらい、そこで、乱雑に捨て置かれた遺体を目の当たりにした。
陛下と王妃は、無残にも肉体が原型を留めていなかった。
相当強い憎しみで、子どもたちに見せしめのように殺されたのだろう。
「………あ。あぁあ……っ。」
そしてダグラスは………
心臓を剣で一突き。
自害したのだと分かる、損傷はそれほどない。
ただ、衣服が乱れ、下半身は何も穿いておらず、嫌なにおいがして…。
ダグラスの身に何が起きてこうなったか、すぐ分かってしまった。
思わず彼を抱き上げ、マントで包んで、闇夜に隠れた。
ダグラス。
愛しいダグラス。
救えなかった。
その想いが、私にフェニックスの聖獣の力を目覚めさせ、ダグラスを蘇生させた。
私はどんなにうれしかっただろう!
例え記憶を失っていても。
表情が希薄で半死人のようでも。
生きてくれる。
生まれ直した雛のように、毎日愛を囁いて。
体が癒えて、心が癒えて、完全に元通りとはいかなくても、私の仕事の補佐ができるほどになって。
そして、私の気持ちに応えてくれたのだから………。
「エドワード……。無事に王位を獲れよ。もう一人の魔女に負けるな。」
我ながら自分勝手な願いだなと思いながら、フェニックスはダグラスの髪にキスをした。
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