17 / 44
今は亡き母
しおりを挟む
リュージュお母様は言った。
その時お母様は、寝床にふせることが多くなっていた。
「………貴方にドラゴニア王国の一子相伝の戦闘術を………伝授するわ…………。手を……。」
「……はい。」
痩せて、弱弱しい。骨と皮のような手。
まるでお婆さんになってしまったかのように、年齢よりもやつれて…。
迫る死の匂いを追い払いたくても、どうすることもできない。
折れそうな手を包むように握ると、何かが自分の中に入ってくることを感じた。
「頭に……。」
「それはね、ご先祖様から受け継いだ戦い方の知識なの。……ドラゴニアの王家は竜の化身。権能は剣。竜の爪や牙のように無数の剣を操って、跳びながら舞うように戦うの。……完全に戦いに特化した力よ。こんなふうに受け継ぐから、代々一人にしか渡せないの。」
「お母様…。こんな力があるのだったらどうして……!」
「力を受け継いでも、受け皿がそれに適していなければ使えない……。私には使えなかった……。そういう代もある。だけど、その次と渡していける……。」
お母様しか産まれなかったために、先代のドラゴニア王は死の間際にお母さまに力を託した。
弟や他の者に気付かれないように。
「ねえ、……ティア。力は大事に……受け継いでね……。」
「はい……。」
「………もしあなたが使えたら……、ふふ、たぶん使えそうな気がするけれど…。絶対にドラゴニアの王族に存在をばれてはだめよ?……私は女だったから見逃された…。でも貴方は男の子…だから、あの手この手で…あなたを殺そうとするでしょう…。」
「お母様……!」
「お母様……臆病でごめんね……。でも、貴方には……ささやかでいいから……平穏で……いてほしい…。」
「お母様!しっかりして!!お母様!」
それからすぐにお母さまは儚くなった。
酒場のおばさんのお墓の隣に、名前は書かずに埋葬してもらった。
あの時、僕はお母様に『約束する』って言えなかった。
お母様と違って、僕は好戦的だから。
きっといつかこうなると予感していたのかもしれない。
冒険者でもこの力を使っていたけど、ソロだったから人に気付かれることはなかった。
この力を使えば、お母様の振りをした魔女を倒すこともできると思ったけど、それをすると僕はお尋ね者になりそうだなって思ったから、我慢することはできた。
でも、僕の大事な人が困っているときに、この力を出し惜しみすることなんて、僕にはできない。
その時お母様は、寝床にふせることが多くなっていた。
「………貴方にドラゴニア王国の一子相伝の戦闘術を………伝授するわ…………。手を……。」
「……はい。」
痩せて、弱弱しい。骨と皮のような手。
まるでお婆さんになってしまったかのように、年齢よりもやつれて…。
迫る死の匂いを追い払いたくても、どうすることもできない。
折れそうな手を包むように握ると、何かが自分の中に入ってくることを感じた。
「頭に……。」
「それはね、ご先祖様から受け継いだ戦い方の知識なの。……ドラゴニアの王家は竜の化身。権能は剣。竜の爪や牙のように無数の剣を操って、跳びながら舞うように戦うの。……完全に戦いに特化した力よ。こんなふうに受け継ぐから、代々一人にしか渡せないの。」
「お母様…。こんな力があるのだったらどうして……!」
「力を受け継いでも、受け皿がそれに適していなければ使えない……。私には使えなかった……。そういう代もある。だけど、その次と渡していける……。」
お母様しか産まれなかったために、先代のドラゴニア王は死の間際にお母さまに力を託した。
弟や他の者に気付かれないように。
「ねえ、……ティア。力は大事に……受け継いでね……。」
「はい……。」
「………もしあなたが使えたら……、ふふ、たぶん使えそうな気がするけれど…。絶対にドラゴニアの王族に存在をばれてはだめよ?……私は女だったから見逃された…。でも貴方は男の子…だから、あの手この手で…あなたを殺そうとするでしょう…。」
「お母様……!」
「お母様……臆病でごめんね……。でも、貴方には……ささやかでいいから……平穏で……いてほしい…。」
「お母様!しっかりして!!お母様!」
それからすぐにお母さまは儚くなった。
酒場のおばさんのお墓の隣に、名前は書かずに埋葬してもらった。
あの時、僕はお母様に『約束する』って言えなかった。
お母様と違って、僕は好戦的だから。
きっといつかこうなると予感していたのかもしれない。
冒険者でもこの力を使っていたけど、ソロだったから人に気付かれることはなかった。
この力を使えば、お母様の振りをした魔女を倒すこともできると思ったけど、それをすると僕はお尋ね者になりそうだなって思ったから、我慢することはできた。
でも、僕の大事な人が困っているときに、この力を出し惜しみすることなんて、僕にはできない。
1,040
お気に入りに追加
1,463
あなたにおすすめの小説
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
緑宝は優しさに包まれる〜癒しの王太子様が醜い僕を溺愛してきます〜
天宮叶
BL
幼い頃はその美貌で誰からも愛されていた主人公は、顔半分に大きな傷をおってしまう。それから彼の人生は逆転した。愛してくれていた親からは虐げられ、人の目が気になり外に出ることが怖くなった。そんな時、王太子様が婚約者候補を探しているため年齢の合う者は王宮まで来るようにという御触書が全貴族の元へと送られてきた。主人公の双子の妹もその対象だったが行きたくないと駄々をこね……
※本編完結済みです
※ハピエン確定していますので安心してお読みください✨
※途中辛い場面など多々あります
※NL表現が含まれます
※ストーリー重視&シリアス展開が序盤続きます
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

BLゲームのモブに転生したので壁になろうと思います
雪
BL
前世の記憶を持ったまま異世界に転生!
しかも転生先が前世で死ぬ直前に買ったBLゲームの世界で....!?
モブだったので安心して壁になろうとしたのだが....?
ゆっくり更新です。

究極の雨男で疎まれていた俺ですが異世界では熱烈歓迎を受けています
まつぼっくり
BL
ずっとこの可笑しな体質が嫌だった。でも、いつかこの体質で救える命もあるんじゃないかと思っていた。
シリアスそうでシリアスではない
攻 異世界の虎さん✕ 受 究極の雨男
ムーンさんからの転載です
平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます
ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜
名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。
愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に…
「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」
美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。
🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶
応援していただいたみなさまのおかげです。
本当にありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる