虐げられても最強な僕。白い結婚ですが、将軍閣下に溺愛されているようです。

竜鳴躍

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今は亡き母

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リュージュお母様は言った。

その時お母様は、寝床にふせることが多くなっていた。


「………貴方にドラゴニア王国の一子相伝の戦闘術を………伝授するわ…………。手を……。」

「……はい。」


痩せて、弱弱しい。骨と皮のような手。

まるでお婆さんになってしまったかのように、年齢よりもやつれて…。

迫る死の匂いを追い払いたくても、どうすることもできない。


折れそうな手を包むように握ると、何かが自分の中に入ってくることを感じた。



「頭に……。」

「それはね、ご先祖様から受け継いだ戦い方の知識なの。……ドラゴニアの王家は竜の化身。権能は剣。竜の爪や牙のように無数の剣を操って、跳びながら舞うように戦うの。……完全に戦いに特化した力よ。こんなふうに受け継ぐから、代々一人にしか渡せないの。」


「お母様…。こんな力があるのだったらどうして……!」

「力を受け継いでも、受け皿がそれに適していなければ使えない……。私には使えなかった……。そういう代もある。だけど、その次と渡していける……。」


お母様しか産まれなかったために、先代のドラゴニア王は死の間際にお母さまに力を託した。
弟や他の者に気付かれないように。


「ねえ、……ティア。力は大事に……受け継いでね……。」


「はい……。」

「………もしあなたが使えたら……、ふふ、たぶん使えそうな気がするけれど…。絶対にドラゴニアの王族に存在をばれてはだめよ?……私は女だったから見逃された…。でも貴方は男の子…だから、あの手この手で…あなたを殺そうとするでしょう…。」


「お母様……!」


「お母様……臆病でごめんね……。でも、貴方には……ささやかでいいから……平穏で……いてほしい…。」

「お母様!しっかりして!!お母様!」





それからすぐにお母さまは儚くなった。
酒場のおばさんのお墓の隣に、名前は書かずに埋葬してもらった。

あの時、僕はお母様に『約束する』って言えなかった。


お母様と違って、僕は好戦的だから。
きっといつかこうなると予感していたのかもしれない。

冒険者でもこの力を使っていたけど、ソロだったから人に気付かれることはなかった。

この力を使えば、お母様の振りをした魔女を倒すこともできると思ったけど、それをすると僕はお尋ね者になりそうだなって思ったから、我慢することはできた。

でも、僕の大事な人が困っているときに、この力を出し惜しみすることなんて、僕にはできない。


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