虐げられても最強な僕。白い結婚ですが、将軍閣下に溺愛されているようです。

竜鳴躍

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陰謀の侯爵家

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「ねぇ、アクア様…。私、日陰者なんて嫌だわ…。」

「あぁ、だが……私の結婚は王命なんだ。」


街の酒場の2階。

冒険者を中心に平民でにぎわう酒場に、不釣り合いの二人。
市民の振りをしているが、どうみても仕立ての良い服を着ている若者が酒場の踊り子と逢瀬をしている。


男の名はアクア=シャワーズ。
父親が戦死し、母親も他界。若くして侯爵になった男で、国王の遠戚にあたる。

赤毛の踊り子は、胸を押しあててシナをつくり、男を潤んだ瞳で見上げた。
女の名はローズ。
この酒場の美貌の舞姫だが、彼女は『魔女』だった。


隣国との友好の証に、王女が嫁ぐ。
王女といっても、前ドラゴニア王の一人娘で、あとを継いだ弟である現・国王の娘ではないが、それでも邪険にはできない。
その相手として、唯一相手のいなかった王族が選ばれた。
その男こそアクア=シャワーズである。
アクア=シャワーズは水の魔法を得意とする侯爵家にあって、水色の髪に瞳の涼やかな美貌が麗しく、貴族の通う学園でも上位の成績を維持して卒業し、遠戚である第二王子の側近も務める男。
見目も才覚も申し分ない男だったが、女癖だけは悪かった。
『魔女』だといっても気にはならない。
この世界では『魔女』と呼ばれる女性は高い魔力に目覚めた希少な存在で、平民であっても敬われる存在。
酒場の踊り子をしている美しい彼女に心を奪われ、『魔女』だというのに両親に結婚を反対されていたが、あれよあれよと小うるさい両親はいなくなり、さぁローズを妻にするかという矢先に出たこの王命。


「あぁいやだいやだ。どうして君という存在がいるというのに、ヤモリ女なんかを娶らねばならないんだ。アレックスもフレックスもさっさと結婚しやがって………ッ。」

「アクア様、近々陛下になる方とその弟殿下を呼び捨てだなんていけないわ。」

「大体、友好の証とはいうが、その女は向こうでは要らない女じゃないか。体のいい厄介払い…。それであれだろ、大事にしなかったらしなかったでそれを理由にこちらを攻めてくるんだ!あの野蛮な竜どもめ!」


「あなた、わたし、待つわ。だから必ず迎えに来てね。」


「当り前だ、ローズ!」



その頃、陛下が病により崩御され、王太子であるアレックス=フィリップ=フォックスは国王についた。輝くようなプラチナブロンドにコバルトブルーの瞳の麗しい王は、善き魔女として名高い白銀の髪と金色の瞳のリリー妃が王妃に。
2人には王子が既に二人おり、どちらも優秀。
上の王子は15歳で、既に将来の名君の器が見て取れ、これからもこの国は安泰だと、国が沸いた。



平和を象徴するように嫁いできたドラゴニア王国の王女であるリュージュ=アリス=ドラゴニア。

夜の闇のような黒い髪に、きらきらと輝く濃い青の瞳。

肌の色は絹のように白く、なめらかで、思いがけない美妃に、アクアの喉も鳴った。


「旦那様、これからよろしくお願いしますね。」


故郷では虐げられてきた姫。
まるでローズを忘れてしまったかのように、アクアは彼女を大事にした。
リュージュは、ローズと違い清楚な美貌の女だったが、ローズのように大きな胸と細い腰を持っていた。


一年経過し、リュージュのお腹には待望の子が宿る。


「ああ、なんて今日は良い日だ!」


子が欲しいと医師に相談し、最もできやすい日にできるように行動した結果、計画通りに子どもに恵まれた。


「ありがとう、リュージュ。」

「まあ、もうあなたったら。」

「今日はお祝いにしよう。ちょっと変装して街に行ってみないか?」

「わかりましたわ。」


アクアの用意した街の女の服は、リュージュには少し大胆すぎた。
誰にも内緒でこっそり用意していたらしく、アクアが自らリュージュに着せてやる。


「恥ずかしいわ、こんな胸元の大きくあいた服…。」

彼女の大きな胸の谷間が強調された真っ赤なワンピース。
まるで酒場の女のような…。


アクアは昔、街で遊んでいた時のように、裕福な商人のような服を着ている。


「さあ、行こう。みんなには内緒だよ。」

使用人はなぜか人払いされたかのようにいない中、玄関の扉を開くと、そこには―――――。




真っ赤な髪の派手な女が緑色の清楚なワンピースを着て立っていた。





「あ、あなたは!?」



「ΔΩΘ……。」


女が妖しい言葉を紡ぐと、顔が熱くなった。

そして目の前の女の顔は、『リュージュ』の顔に変わった。

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