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ぼろぼろの心

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どうしていいか分からない。

カルスのことを内心では好いていたはずなのに。

自分の言葉を聞かずに体を暴いた彼のことを思うと、色んな感情がぐちゃぐちゃでどうしていいか分からなかった。


カシャン………。



あんなに自分の能力を削いでいたネックレス。
どんなにしても外せなかったものが、首から外れて落ちる。


そうか。

誰かに抱かれた時に解ける呪いだったんだ。

だから、クレイも自分を抱かなかったに違いなかった。



「外れたんだね。」



「!!!」


クレイの声がして、振り返ると彼がいる。


冷たい声が響き、ベッドでまだ組み伏せるカルスとクレイの目が合った。



「………かわいそうに。君のことをベルは信じていたろうに。こんなに泣かされて。」

ベッドの頭の方に来て、クレイは冷静な様子で私の頭を撫でる。



「職を捨て、忠誠を捨て、家名も捨て。ベルを追ってくるんだから、君は本当にベルを愛しているんだろうね。だけど、間違ったね。」


「……どういうことだ。」


「まずは、ソレを閉まってくれないか。ベル立てるかい?そこが多分浴室だろう。簡易的なものだろうが、気持ち悪いだろうから、流してくるといいよ。それから、この薬を飲みなさい。緊急避妊薬だよ。」

優しい。


そっとシーツごと。私の体を見ないように抱きかかえ、風呂場に置いて、自分は外に出る。




「緊急……避妊?」



「彼は子を産める体だ。初潮もきた。望まない妊娠は避けた方がいいだろう。」

「産めないはずじゃ…。」

「過労と鍛えすぎで初潮が遅れてたんだ。こちらで医師に見せて、剣を取り上げて強制的に休養を取らせたら初潮は来たよ。あのまま貴国にいたら、本当に子が産めない体になっていただろうね。」



目の前の王子はロワに似た容姿をしているが、離し方やふるまい、表情は洗練されていて、全く印象が違う。



「いいか、カルス。私はこの国の王になる。野蛮な陛下、兄弟、この国に巣食う悪を全て倒す。だから味方が欲しい。私だって彼を愛している。初めは彼の立場や能力で助けてもらいたいと思っていただけだった。私の味方に堕ちてくれるまで、それからまあ、立場上、彼の力は制約させてもらってはいたがね。私を受け入れてくれたら解けるような設定だったから…。」

クレイはため息をついた。


「君は馬鹿だね。彼の心には常に君がいたのに。相思相愛だったのに、自分でぶち壊すようなことをして。人間って面白いものだ。」



「………なっ。」


カルスは目の前が真っ暗になった。




「私は彼を尊重した。彼の失われて傷ついた自尊心、自己肯定感を高めることを優先して、大事にしたよ。だから、彼とそういうことはしていない。していないからあのネックレスは外れていなかったのだから、信じるだろう?それと比べて、君はどうだろうね。」

そもそもあのバカが手を出していたんだ、私は今さら処女性なんて気にしていない。


彼が選ぶのはどっちかな?




「……………っ。ベル…っ。ベルさま……!団長、っ。私は、私は………っ。」






クレイの足元に崩れ落ちて。謝っても謝り足りない。


「カルス。」



ベルの声に顔をあげる。


タオルで体を拭き、便宜上シーツを頭からすっぽりかぶって現れた彼は、見上げたカルスの頬をはたいた。


「痛いか。これで、しまいにする。」


そして、ベルはくるりとクレイを見た。



「クレイ殿下。聞こえていた。私でよければ助けになろう。もとより目的は同じだったわけだ。ただ、私は結婚は………まだ考えられない。それでよければ。」



「ああ。もちろん。」


「カルス。お前は退団はゆるさん。お前も手を貸すんだ。いいな。」



「は……。」







ああ。団長が戻って来た。
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