王子様との婚約回避のために友達と形だけの結婚をしたつもりが溺愛されました

おまけ

愛する人へ

クリスマスのお祝いをみんなで。

国民に向けて、生放送で放映する。

この日のために育てたターキーのローストとケーキが全世帯に配られて、みんなで幸せな一日を迎えるのだ。


この国は識字率が高く、教育や医療が行き届き、困っている人には仕事を斡旋し生活を保障してくれる制度があって、他の国と比べたら幸せだと思う。

だけれど、人間って誰かと自分を比べたり、相対的に不幸を感じたり、優劣をつけたがる傾向があるらしくて、犯罪が全くないわけじゃない。


王族が与えられる幸せ、その言い方がまずよくないのかもとも思う。


だけど一年に何回かあるお祝いの日くらいは、笑ってほしい、そう思うのは僕のエゴだろうか。




「メリー・クリスマス！」


すっかりお爺さんお婆さんになって、皺が増えたスノー様やあられ様は、子や孫に囲まれてほほ笑む。

質の高い医療と平等な医療の機会を実現したスワン様とスワン様の愛の奴隷、リチャード様。

寒い冬の時期が長く、作物が育たず、飢えに苦しんでいた国民を作物の品種改良と温室栽培法の確率で救ったリーフ様と、リーフ様を支えたクレイ様。


そして、よりよい国づくりのために努力してきた僕のレナード。




「僕ね、この国に来て本当に良かった…。」

「うん…。」


クリフォート伯爵も、伯爵夫人も、既に執事や侍女は引退していて、今日はただの身内として傍に控える。

そして、僕の家族も。

みんな、年をとった。僕ももっと親孝行しなくっちゃ。



ツリーに灯りがともってキラキラと輝いて、眩い。




「そういえば、サンドルがサマー王国のジャグジーを気に入って、中庭のガゼボを増築したんだが…。」

「うん、知っているよ、まだ完成したところは見てないけれど。」

「ヤードが肌を人に見せることを嫌って、ジャグジーを壁で囲って、完全に室内にしたんだ。」

「そうだね、こっちは寒いし。屋外はちょっとね。」

「………結構広い浴室に、ボタンで泡が出たり色とりどりの照明で浴槽が光ったり、浴槽でジャグジーを楽しみながらテレビが見られたりする仕様になったらしい。」


「それって、僕たちも使っていいのかな？」

「もちろん。ヤードに完成した浴室を見せてもらったが、なんて言っていいのかな……、なぜかとてもエッチな気分になれそうだった。」


「ふふふ。じゃあ、今夜だね。実はクリスマスプレゼントがあるんだ！」

レアチーズケーキ！


楽しみだ、と耳元でレナードは甘く囁いて、僕たちは指を絡めて手を繋いでキスをした。


まさかそれが全世帯に放映されているとは思ってなかったんだけどね！



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とりあえずend