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番外編 執事との恋
成長
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講堂へ向かうと、サンドル様は壇上へ向かうところだった。
間に合わなかった。
冷ややかな視線がサンドル様と僕を見る。
隠しているようで、まだ未熟な貴族の卵たちは隠しきれていない。
サンドル様も感じているだろうに、気にしていないような顔をして、背筋を伸ばし、まっすぐ前を向いて階段を上がる。
舞台の中央、演台の前に立ち、潤んだ瞳は真っすぐと前をみる。
その美しさに会場がしんと静まった。
「僕たちは、これから大人の貴族の仲間入りを果たし、やがて、この学園で培った縁や経験をもとに、領民のため、あるいは国民のため。国の発展のために貢献できる、そんな人財になることを目指します。
勉強だけなら、家庭教師をつけたり、図書館で学んだり、ご両親から。いくらでも学ぶ方法はある。だが、学園という貴族社会の縮図の中でしか、貴族としての振る舞い方、関係の構築の仕方は学べません。未熟な僕たちですが、3年間という短い期間、精いっぱい邁進してまいりますので、これからよろしくお願いいたします。」
サンドルは一礼し、そして、僕を見て。
また、マイクを上げた。
「ご存じの方も多いでしょう。僕は兄のように優秀な王子ではない。とても大好きな人がいて、子どもだった僕は、とても迷惑をかけました。失敗があって、今の僕があると思っています。僕が言うのもなんですが、失敗は成功の基だと思います。これから、大なり小なり僕たちは失敗もするでしょう。それが成長の礎になれるよう、容赦なく、先生方にはご指導方お願いいたしますね。」
<あれ…?>
<聞いていた感じとは違う?>
立派です。
サンドル王子。
…えっ?
僕は壇上に一気に駆け上がった。
演台の側で意識を失ったサンドルを抱きとめるために。
間に合わなかった。
冷ややかな視線がサンドル様と僕を見る。
隠しているようで、まだ未熟な貴族の卵たちは隠しきれていない。
サンドル様も感じているだろうに、気にしていないような顔をして、背筋を伸ばし、まっすぐ前を向いて階段を上がる。
舞台の中央、演台の前に立ち、潤んだ瞳は真っすぐと前をみる。
その美しさに会場がしんと静まった。
「僕たちは、これから大人の貴族の仲間入りを果たし、やがて、この学園で培った縁や経験をもとに、領民のため、あるいは国民のため。国の発展のために貢献できる、そんな人財になることを目指します。
勉強だけなら、家庭教師をつけたり、図書館で学んだり、ご両親から。いくらでも学ぶ方法はある。だが、学園という貴族社会の縮図の中でしか、貴族としての振る舞い方、関係の構築の仕方は学べません。未熟な僕たちですが、3年間という短い期間、精いっぱい邁進してまいりますので、これからよろしくお願いいたします。」
サンドルは一礼し、そして、僕を見て。
また、マイクを上げた。
「ご存じの方も多いでしょう。僕は兄のように優秀な王子ではない。とても大好きな人がいて、子どもだった僕は、とても迷惑をかけました。失敗があって、今の僕があると思っています。僕が言うのもなんですが、失敗は成功の基だと思います。これから、大なり小なり僕たちは失敗もするでしょう。それが成長の礎になれるよう、容赦なく、先生方にはご指導方お願いいたしますね。」
<あれ…?>
<聞いていた感じとは違う?>
立派です。
サンドル王子。
…えっ?
僕は壇上に一気に駆け上がった。
演台の側で意識を失ったサンドルを抱きとめるために。
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