王子様との婚約回避のために友達と形だけの結婚をしたつもりが溺愛されました

竜鳴躍

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番外編 執事との恋

忘れ物

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「あっ。」


王子達の部屋を整えていると、サンドル王子の部屋から大事なものが出てきた。

これは入学式で使うものだろう。

王子なりに懸命に考えたものだ。


新入生代表のあいさつ。

天才でなくても、頑張って頑張って、1位の成績でサンドルは入学した。

明け方まで、毎日勉強をしていた。

そうやって、勝ち得た晴れの舞台。



「お父様、僕、忘れ物を届けてまいります。」

ヤードは父であり、執事の教育係であるクリフォート伯爵に断って、学園に向かった。

幸い、ヤードはこの国の貴族として学園に通ったので、土地勘はある。



馬車を止めて、学園につくと、じろじろと不躾な視線を感じる。


<ヤード=クリフォート様よ。お姉さまたちが素敵な方だって仰ってたけど本当ね。>

<わがままでバカな第二王子が執着して離さないんでしょう?>

<第二王子の愛人らしいよ…。>

<なんでも第二王子が欲しがって縁談を阻まれているとか。最悪なオメガね。おかわいそうに。>

<そんなのが今日の代表挨拶だろう?きっと我儘を言ったんだよ。>



聞こえてくる声に眉を顰める。



王子はそんなんじゃない。

知ったような口を利くな!


叫びたいが、今はそれどころじゃない。


サンドル殿下を探して、あいさつ文を渡さなくては。

あんな学生がいるのだ。

きっと心細い思いをされているだろう。
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