79 / 113
番外編 執事との恋
お母様の気持ち
しおりを挟む
「行ってまいります。」
今日からお兄様と学園に通う。
お兄様は最終学年だから、一緒に通うのは1年だけだ。
あれから僕はすっごく頑張った。
王子教育は終わらせたし、お兄様を支えられるように、今は経理や法務の勉強をしている。
スワン様やリーフ様のように、突出したものを僕は持っていない。
1を聞いて10を知り、広くアンテナを張り巡らせて国民のために頑張れる、お兄様やお父様たちのような有能さは僕にはない。
だから、お兄様が仕事をしやすいように事務作業を補佐する。
そういう風にお役に立てたらいいんじゃないかって思って。
「行ってらっしゃいませ。ルカ様。サンドル様。」
28歳になったヤードは大人の魅力が出てきて、ますますカッコよくなった。
僕のこと、どう思ってるのかしら。
まだ、結婚していないから好きな人はいないんだと思う。
まだ、諦めなくていいんだって思うけど…。
学園に向かう馬車は、一度、バード侯爵家に向かう。
お兄様の婚約者のオディール様を迎えるためだ。
「おはよう、オディール。今日も素敵だね。」
「ありがとう、ルカ様。」
オディール様は僕たちのいとこ。
本当はこの国を継ぐはずだったスワン様の娘。プラチナブロンドに翠の眼は王族の証。
僕と同じ年なのに、すっごく頭がよくて、お兄様と通いたいからって飛び級したんだよね。
オディール様のお兄様で侯爵家の跡取りのホークアイ様は、本当はお兄様より1個下だけど、妹が飛び級するなら自分も、って飛び級しちゃった。
従兄妹はみんなしっかり者で優秀だからなぁ。
……僕はみそっかすだ。
気にしないけど。
「どうしたんですか?サンドル様。悩み事かしら。」
「いいなぁ、って思って。」
「何が、かしら。」
「婚約者と仲良くできて、いいなって。」
「…そうね。あなたはヤードとまだ許していただけていないのでしたわね。なんであんなに王妃様はお厳しいのかしら。」
「お父様に聞いたことがあるよ。お母さまは結婚前も結婚した後も、傲慢な人に迷惑をかけられたことがあるんだって。サンドルは初手を間違えたんだよ。順を追っていくべきだった。いくら好きだからって、お見合いに突入しただろう?」
「あれはもう、悪かったって思ってるよ!」
「サンドル、俺たちは王族だ。王族には権力がある。おいそれと逆らえない。ヤードはお父様の育ての親の実子で一時期兄弟として過ごしていたから、僕たちにとってもお兄さまのようだけど、伯爵令息でしかないし、執事だ。お見合いの席にお前が乱入したことで、世間的には王子の我儘でヤードが囲われているように見える、と理解するべきだ。ヤードがお前と結婚してもいいと言ったとしても、それはヤードの本意なのかどうかわかりにくい。王家に逆らえるはずがないからね。」
「……なるほどね。ただ、お厳しいだけだと思っていましたけれど。そういうことでしたのね。」
「お母さまはね、お前に最低な人間になって欲しくないんだよ。そして、周りからもそう思われてほしくないんだ。あの時はまだお前は14で、学園に入ってもいない。貴族としても一人前じゃない。他の年の近い貴族も知らなかっただろう。広い世界を知れば心変わりをすることもある。お前はそうじゃないと分かっているけどね。可能性としてある以上、もし、婚約解消にでもになってごらん?傷つくのは誰?そのときヤードはもう30だよ。」
お母様の信頼を回復しなさい。
外の世界を知った上で、ヤードを想う気持ちに一切変わりはないと、お母様に伝えることが出来れば、少しは、恋人のように接することをお母様は許してくれるんじゃないかな?
お兄様はそう、教えてくれた。
馬車は学園に到着する。
今日からお兄様と学園に通う。
お兄様は最終学年だから、一緒に通うのは1年だけだ。
あれから僕はすっごく頑張った。
王子教育は終わらせたし、お兄様を支えられるように、今は経理や法務の勉強をしている。
スワン様やリーフ様のように、突出したものを僕は持っていない。
1を聞いて10を知り、広くアンテナを張り巡らせて国民のために頑張れる、お兄様やお父様たちのような有能さは僕にはない。
だから、お兄様が仕事をしやすいように事務作業を補佐する。
そういう風にお役に立てたらいいんじゃないかって思って。
「行ってらっしゃいませ。ルカ様。サンドル様。」
28歳になったヤードは大人の魅力が出てきて、ますますカッコよくなった。
僕のこと、どう思ってるのかしら。
まだ、結婚していないから好きな人はいないんだと思う。
まだ、諦めなくていいんだって思うけど…。
学園に向かう馬車は、一度、バード侯爵家に向かう。
お兄様の婚約者のオディール様を迎えるためだ。
「おはよう、オディール。今日も素敵だね。」
「ありがとう、ルカ様。」
オディール様は僕たちのいとこ。
本当はこの国を継ぐはずだったスワン様の娘。プラチナブロンドに翠の眼は王族の証。
僕と同じ年なのに、すっごく頭がよくて、お兄様と通いたいからって飛び級したんだよね。
オディール様のお兄様で侯爵家の跡取りのホークアイ様は、本当はお兄様より1個下だけど、妹が飛び級するなら自分も、って飛び級しちゃった。
従兄妹はみんなしっかり者で優秀だからなぁ。
……僕はみそっかすだ。
気にしないけど。
「どうしたんですか?サンドル様。悩み事かしら。」
「いいなぁ、って思って。」
「何が、かしら。」
「婚約者と仲良くできて、いいなって。」
「…そうね。あなたはヤードとまだ許していただけていないのでしたわね。なんであんなに王妃様はお厳しいのかしら。」
「お父様に聞いたことがあるよ。お母さまは結婚前も結婚した後も、傲慢な人に迷惑をかけられたことがあるんだって。サンドルは初手を間違えたんだよ。順を追っていくべきだった。いくら好きだからって、お見合いに突入しただろう?」
「あれはもう、悪かったって思ってるよ!」
「サンドル、俺たちは王族だ。王族には権力がある。おいそれと逆らえない。ヤードはお父様の育ての親の実子で一時期兄弟として過ごしていたから、僕たちにとってもお兄さまのようだけど、伯爵令息でしかないし、執事だ。お見合いの席にお前が乱入したことで、世間的には王子の我儘でヤードが囲われているように見える、と理解するべきだ。ヤードがお前と結婚してもいいと言ったとしても、それはヤードの本意なのかどうかわかりにくい。王家に逆らえるはずがないからね。」
「……なるほどね。ただ、お厳しいだけだと思っていましたけれど。そういうことでしたのね。」
「お母さまはね、お前に最低な人間になって欲しくないんだよ。そして、周りからもそう思われてほしくないんだ。あの時はまだお前は14で、学園に入ってもいない。貴族としても一人前じゃない。他の年の近い貴族も知らなかっただろう。広い世界を知れば心変わりをすることもある。お前はそうじゃないと分かっているけどね。可能性としてある以上、もし、婚約解消にでもになってごらん?傷つくのは誰?そのときヤードはもう30だよ。」
お母様の信頼を回復しなさい。
外の世界を知った上で、ヤードを想う気持ちに一切変わりはないと、お母様に伝えることが出来れば、少しは、恋人のように接することをお母様は許してくれるんじゃないかな?
お兄様はそう、教えてくれた。
馬車は学園に到着する。
20
お気に入りに追加
2,666
あなたにおすすめの小説
溺愛オメガバース
暁 紅蓮
BL
Ωである呉羽皐月(クレハサツキ)とαである新垣翔(アラガキショウ)の運命の番の出会い物語。
高校1年入学式の時に運命の番である翔と目が合い、発情してしまう。それから番となり、αである翔はΩの皐月を溺愛していく。
最強で美人なお飾り嫁(♂)は無自覚に無双する
竜鳴躍
BL
ミリオン=フィッシュ(旧姓:バード)はフィッシュ伯爵家のお飾り嫁で、オメガだけど冴えない男の子。と、いうことになっている。だが実家の義母さえ知らない。夫も知らない。彼が陛下から信頼も厚い美貌の勇者であることを。
幼い頃に死別した両親。乗っ取られた家。幼馴染の王子様と彼を狙う従妹。
白い結婚で離縁を狙いながら、実は転生者の主人公は今日も勇者稼業で自分のお財布を豊かにしています。
義兄に愛人契約を強要する悪役オメガですが、主人公が現れたら潔く身を引きます!
月歌(ツキウタ)
BL
おそらく、ここはBLゲームの世界。義兄は攻略対象者だ。そして、僕は義兄に愛人関係を強要する悪役モブ。いや、不味いでしょ。この関係は明らかにヤバい。僕はゲーム主人公が登場したら、兄上から潔く身を引きます!だから、主人公さん、早く来て!
☆オメガバース(独自設定あり過ぎ)
☆男性妊娠あり
☆表紙絵
AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。
王の運命は後宮で王妃候補の護衛をしていました。
カヅキハルカ
BL
騎士候補生内での事件により、苦労して切り開いてきた初のΩの騎士という道を閉ざされてしまったエヴァン。
王妃候補が後宮に上がるのをきっかけに、後宮の護衛を任じられる事になった。
三人の王妃候補達は皆同じΩという事もあるのかエヴァンと気軽に接してくれ、護衛であるはずなのに何故か定例お茶会に毎回招待されてしまう日々が続いていた。
ある日、王が長い間運命を探しているという話が出て────。
王(α)×後宮護衛官(Ω)
ファンタジー世界のオメガバース。
最後までお付き合い下さると嬉しいです。
お気に入り・感想等頂けましたら、今後の励みになります。
よろしくお願い致します。
愛しいアルファが擬態をやめたら。
フジミサヤ
BL
「樹を傷物にしたの俺だし。責任とらせて」
「その言い方ヤメロ」
黒川樹の幼馴染みである九條蓮は、『運命の番』に憧れるハイスペック完璧人間のアルファである。蓮の元恋人が原因の事故で、樹は蓮に項を噛まれてしまう。樹は「番になっていないので責任をとる必要はない」と告げるが蓮は納得しない。しかし、樹は蓮に伝えていない秘密を抱えていた。
◇同級生の幼馴染みがお互いの本性曝すまでの話です。小学生→中学生→高校生→大学生までサクサク進みます。ハッピーエンド。
◇オメガバースの設定を一応借りてますが、あまりそれっぽい描写はありません。ムーンライトノベルズにも投稿しています。
上位種アルファと高値のオメガ
riiko
BL
大学で『高嶺のオメガ』とひそかに噂される美人で有名な男オメガの由香里。実際は生まれた時から金で婚約が決まった『高値のオメガ』であった。
18歳になり婚約相手と会うが、どうしても受け入れられない由香里はせめて結婚前に処女を失う決意をする。
だけどことごとくアルファは由香里の強すぎるフェロモンの前に気を失ってしまう。そんな時、強いアルファ性の先輩の噂を聞く。彼なら強すぎるフェロモンに耐えられるかもしれない!?
高嶺のオメガと噂される美人オメガが運命に出会い、全てを諦めていた人生が今変わりだす。
ヤンデレ上位種アルファ×美しすぎる高嶺のオメガ
性描写が入るシーンは
※マークをタイトルにつけます、ご注意くださいませ。
お話、お楽しみいただけたら幸いです。
運命を知っているオメガ
riiko
BL
初めてのヒートで運命の番を知ってしまった正樹。相手は気が付かないどころか、オメガ嫌いで有名なアルファだった。
自分だけが運命の相手を知っている。
オメガ嫌いのアルファに、自分が運命の番だとバレたら大変なことになる!? 幻滅されたくないけど近くにいたい。
運命を悟られないために、斜め上の努力をする鈍感オメガの物語。
オメガ嫌い御曹司α×ベータとして育った平凡Ω
『運命を知っているアルファ』というアルファ側のお話もあります、アルファ側の思考を見たい時はそちらも合わせてお楽しみくださいませ。
どちらかを先に読むことでお話は全てネタバレになりますので、先にお好みの視点(オメガ側orアルファ側)をお選びくださいませ。片方だけでも物語は分かるようになっております。
性描写が入るシーンは
※マークをタイトルにつけます、ご注意くださいませ。
物語、お楽しみいただけたら幸いです。
コメント欄ネタバレ全解除につき、物語の展開を知りたくない方はご注意くださいませ。
表紙のイラストはデビュー同期の「派遣Ωは社長の抱き枕~エリートαを寝かしつけるお仕事~」著者grottaさんに描いていただきました!
初夜の翌朝失踪する受けの話
春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…?
タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。
歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる