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番外編 執事との恋
お母様の気持ち
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「行ってまいります。」
今日からお兄様と学園に通う。
お兄様は最終学年だから、一緒に通うのは1年だけだ。
あれから僕はすっごく頑張った。
王子教育は終わらせたし、お兄様を支えられるように、今は経理や法務の勉強をしている。
スワン様やリーフ様のように、突出したものを僕は持っていない。
1を聞いて10を知り、広くアンテナを張り巡らせて国民のために頑張れる、お兄様やお父様たちのような有能さは僕にはない。
だから、お兄様が仕事をしやすいように事務作業を補佐する。
そういう風にお役に立てたらいいんじゃないかって思って。
「行ってらっしゃいませ。ルカ様。サンドル様。」
28歳になったヤードは大人の魅力が出てきて、ますますカッコよくなった。
僕のこと、どう思ってるのかしら。
まだ、結婚していないから好きな人はいないんだと思う。
まだ、諦めなくていいんだって思うけど…。
学園に向かう馬車は、一度、バード侯爵家に向かう。
お兄様の婚約者のオディール様を迎えるためだ。
「おはよう、オディール。今日も素敵だね。」
「ありがとう、ルカ様。」
オディール様は僕たちのいとこ。
本当はこの国を継ぐはずだったスワン様の娘。プラチナブロンドに翠の眼は王族の証。
僕と同じ年なのに、すっごく頭がよくて、お兄様と通いたいからって飛び級したんだよね。
オディール様のお兄様で侯爵家の跡取りのホークアイ様は、本当はお兄様より1個下だけど、妹が飛び級するなら自分も、って飛び級しちゃった。
従兄妹はみんなしっかり者で優秀だからなぁ。
……僕はみそっかすだ。
気にしないけど。
「どうしたんですか?サンドル様。悩み事かしら。」
「いいなぁ、って思って。」
「何が、かしら。」
「婚約者と仲良くできて、いいなって。」
「…そうね。あなたはヤードとまだ許していただけていないのでしたわね。なんであんなに王妃様はお厳しいのかしら。」
「お父様に聞いたことがあるよ。お母さまは結婚前も結婚した後も、傲慢な人に迷惑をかけられたことがあるんだって。サンドルは初手を間違えたんだよ。順を追っていくべきだった。いくら好きだからって、お見合いに突入しただろう?」
「あれはもう、悪かったって思ってるよ!」
「サンドル、俺たちは王族だ。王族には権力がある。おいそれと逆らえない。ヤードはお父様の育ての親の実子で一時期兄弟として過ごしていたから、僕たちにとってもお兄さまのようだけど、伯爵令息でしかないし、執事だ。お見合いの席にお前が乱入したことで、世間的には王子の我儘でヤードが囲われているように見える、と理解するべきだ。ヤードがお前と結婚してもいいと言ったとしても、それはヤードの本意なのかどうかわかりにくい。王家に逆らえるはずがないからね。」
「……なるほどね。ただ、お厳しいだけだと思っていましたけれど。そういうことでしたのね。」
「お母さまはね、お前に最低な人間になって欲しくないんだよ。そして、周りからもそう思われてほしくないんだ。あの時はまだお前は14で、学園に入ってもいない。貴族としても一人前じゃない。他の年の近い貴族も知らなかっただろう。広い世界を知れば心変わりをすることもある。お前はそうじゃないと分かっているけどね。可能性としてある以上、もし、婚約解消にでもになってごらん?傷つくのは誰?そのときヤードはもう30だよ。」
お母様の信頼を回復しなさい。
外の世界を知った上で、ヤードを想う気持ちに一切変わりはないと、お母様に伝えることが出来れば、少しは、恋人のように接することをお母様は許してくれるんじゃないかな?
お兄様はそう、教えてくれた。
馬車は学園に到着する。
今日からお兄様と学園に通う。
お兄様は最終学年だから、一緒に通うのは1年だけだ。
あれから僕はすっごく頑張った。
王子教育は終わらせたし、お兄様を支えられるように、今は経理や法務の勉強をしている。
スワン様やリーフ様のように、突出したものを僕は持っていない。
1を聞いて10を知り、広くアンテナを張り巡らせて国民のために頑張れる、お兄様やお父様たちのような有能さは僕にはない。
だから、お兄様が仕事をしやすいように事務作業を補佐する。
そういう風にお役に立てたらいいんじゃないかって思って。
「行ってらっしゃいませ。ルカ様。サンドル様。」
28歳になったヤードは大人の魅力が出てきて、ますますカッコよくなった。
僕のこと、どう思ってるのかしら。
まだ、結婚していないから好きな人はいないんだと思う。
まだ、諦めなくていいんだって思うけど…。
学園に向かう馬車は、一度、バード侯爵家に向かう。
お兄様の婚約者のオディール様を迎えるためだ。
「おはよう、オディール。今日も素敵だね。」
「ありがとう、ルカ様。」
オディール様は僕たちのいとこ。
本当はこの国を継ぐはずだったスワン様の娘。プラチナブロンドに翠の眼は王族の証。
僕と同じ年なのに、すっごく頭がよくて、お兄様と通いたいからって飛び級したんだよね。
オディール様のお兄様で侯爵家の跡取りのホークアイ様は、本当はお兄様より1個下だけど、妹が飛び級するなら自分も、って飛び級しちゃった。
従兄妹はみんなしっかり者で優秀だからなぁ。
……僕はみそっかすだ。
気にしないけど。
「どうしたんですか?サンドル様。悩み事かしら。」
「いいなぁ、って思って。」
「何が、かしら。」
「婚約者と仲良くできて、いいなって。」
「…そうね。あなたはヤードとまだ許していただけていないのでしたわね。なんであんなに王妃様はお厳しいのかしら。」
「お父様に聞いたことがあるよ。お母さまは結婚前も結婚した後も、傲慢な人に迷惑をかけられたことがあるんだって。サンドルは初手を間違えたんだよ。順を追っていくべきだった。いくら好きだからって、お見合いに突入しただろう?」
「あれはもう、悪かったって思ってるよ!」
「サンドル、俺たちは王族だ。王族には権力がある。おいそれと逆らえない。ヤードはお父様の育ての親の実子で一時期兄弟として過ごしていたから、僕たちにとってもお兄さまのようだけど、伯爵令息でしかないし、執事だ。お見合いの席にお前が乱入したことで、世間的には王子の我儘でヤードが囲われているように見える、と理解するべきだ。ヤードがお前と結婚してもいいと言ったとしても、それはヤードの本意なのかどうかわかりにくい。王家に逆らえるはずがないからね。」
「……なるほどね。ただ、お厳しいだけだと思っていましたけれど。そういうことでしたのね。」
「お母さまはね、お前に最低な人間になって欲しくないんだよ。そして、周りからもそう思われてほしくないんだ。あの時はまだお前は14で、学園に入ってもいない。貴族としても一人前じゃない。他の年の近い貴族も知らなかっただろう。広い世界を知れば心変わりをすることもある。お前はそうじゃないと分かっているけどね。可能性としてある以上、もし、婚約解消にでもになってごらん?傷つくのは誰?そのときヤードはもう30だよ。」
お母様の信頼を回復しなさい。
外の世界を知った上で、ヤードを想う気持ちに一切変わりはないと、お母様に伝えることが出来れば、少しは、恋人のように接することをお母様は許してくれるんじゃないかな?
お兄様はそう、教えてくれた。
馬車は学園に到着する。
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