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ウインター王国
後始末と溺愛と
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出来る男のレナードは王太子として、決して感情に流されることなく、だが、迅速に行動した。
いつもどこか情けなくて、自分の大切なアレックスを守り切れていない。
そういう思いがあった。
今度こそ。
「秋月の氷河氷柱皇帝。ウインター王国次期王位継承者であるアレックスです。この度はそちらの吹雪と雹太があなたの使者と偽って不法入国の上、退去を命じたところ、シノビの技で私の姿に化けて城に忍び込み、勝手に好意を持った私の妻を攫いました。妻は精霊の愛し子。攫われた時、精霊は鳥籠に閉じ込められておりましたよ。秋月国はウインター王国と精霊の王を相手に戦を起こされるおつもりかな?」
アレックスの下へ向かう精霊を追って早馬に乗りながら、秋月国の皇帝とやり取りを行う。
黒髪の若々しい美丈夫は女好きで周りに美しい女性を侍らしていた。
(こいつの好色をあいつらは似たんじゃないか…!)
「氷河雹太は私のフェロモンと似せた香を持っていたようです。それで私の妻を奪うつもりらしい。貴方も愛妻家と伺っておりますよ。多くの妻を娶っているが、多くは戦争で行き場を亡くした未亡人や娘でしょう。番持ちの女を娶ったと聞けば人聞きが悪いが、相手に暴力で無理やり番にされていた娘を引き取ったのだそうですね。おそらく皇帝は愛が多く、精力も強いのは間違いないでしょうが、ええ。そこは理解いたしますよ。国が違えば文化も違う、価値観も違うでしょうから。ですが、その行為と今回の雹太の行為とは全く違う。なのに、本人は同じだと思っている。雹太の姉もそうだ。何が悪いのか分かっていない。もし、妻を無事に取り返して捕えたとして、アレは自分は悪くないと主張するでしょうね。『父である皇帝だって好きな女を娶っているのになぜだめなのか。番から奪い取ったのは同じなのに。』と。」
「分かった。」
皇帝はポンと扇子を膝でたたいた。
「秋月に氷河の姓で吹雪と雹太という者はいない。勝手に国外に出て、勝手に皇帝の使者を装い、他国の城に不法侵入した上、かようなことをする大罪人は、我が国と無関係。好きに処分されて結構。」
「承知した。そのように致します。」
その知らせを聞いて、あられは地下牢の吹雪を始末し、レナードは雹太を撃った。
王族は非情にならなければならない時もある。
ゆくゆくは王妃として、アレックスもそうならなければならないのだろう。
だが、今だけは。事の顛末について詳細に触れる必要はないと考えている。
「レナード!アレックス!!」
「お父様!お母様!心配かけてごめんなさい…。ルカは元気?みんなが守ってくれていたんでしょう?」
レナードに抱っこされたままお城につくと、みんなが泣きそうな顔をして待っていてくれた。
「二人とも!私は移住する!どうせたいして領地のない伯爵だ!領地は国に返還するっ!」
クリフォート伯爵も顔がびしょびしょ。
クールな執事長が台無し。
「私もお城でナニーくらいするわっ!だって王妃様とレナード様付きだったのよ!」
何でも、この国でもそっくりそのまま仕事がもらえるらしい…。
さすがに執事長ではないけど。
あられ様が領地も用意してくださった。
「アレックス。私も隠居を決めたよ。ルビーに譲る。」
うふふ。
2人のおじいさまは『ルカたんの面倒を見るのは私だ』と喧嘩になっちゃった。
怖いこともあったけど、ここに帰ってこられてよかった。
いつもどこか情けなくて、自分の大切なアレックスを守り切れていない。
そういう思いがあった。
今度こそ。
「秋月の氷河氷柱皇帝。ウインター王国次期王位継承者であるアレックスです。この度はそちらの吹雪と雹太があなたの使者と偽って不法入国の上、退去を命じたところ、シノビの技で私の姿に化けて城に忍び込み、勝手に好意を持った私の妻を攫いました。妻は精霊の愛し子。攫われた時、精霊は鳥籠に閉じ込められておりましたよ。秋月国はウインター王国と精霊の王を相手に戦を起こされるおつもりかな?」
アレックスの下へ向かう精霊を追って早馬に乗りながら、秋月国の皇帝とやり取りを行う。
黒髪の若々しい美丈夫は女好きで周りに美しい女性を侍らしていた。
(こいつの好色をあいつらは似たんじゃないか…!)
「氷河雹太は私のフェロモンと似せた香を持っていたようです。それで私の妻を奪うつもりらしい。貴方も愛妻家と伺っておりますよ。多くの妻を娶っているが、多くは戦争で行き場を亡くした未亡人や娘でしょう。番持ちの女を娶ったと聞けば人聞きが悪いが、相手に暴力で無理やり番にされていた娘を引き取ったのだそうですね。おそらく皇帝は愛が多く、精力も強いのは間違いないでしょうが、ええ。そこは理解いたしますよ。国が違えば文化も違う、価値観も違うでしょうから。ですが、その行為と今回の雹太の行為とは全く違う。なのに、本人は同じだと思っている。雹太の姉もそうだ。何が悪いのか分かっていない。もし、妻を無事に取り返して捕えたとして、アレは自分は悪くないと主張するでしょうね。『父である皇帝だって好きな女を娶っているのになぜだめなのか。番から奪い取ったのは同じなのに。』と。」
「分かった。」
皇帝はポンと扇子を膝でたたいた。
「秋月に氷河の姓で吹雪と雹太という者はいない。勝手に国外に出て、勝手に皇帝の使者を装い、他国の城に不法侵入した上、かようなことをする大罪人は、我が国と無関係。好きに処分されて結構。」
「承知した。そのように致します。」
その知らせを聞いて、あられは地下牢の吹雪を始末し、レナードは雹太を撃った。
王族は非情にならなければならない時もある。
ゆくゆくは王妃として、アレックスもそうならなければならないのだろう。
だが、今だけは。事の顛末について詳細に触れる必要はないと考えている。
「レナード!アレックス!!」
「お父様!お母様!心配かけてごめんなさい…。ルカは元気?みんなが守ってくれていたんでしょう?」
レナードに抱っこされたままお城につくと、みんなが泣きそうな顔をして待っていてくれた。
「二人とも!私は移住する!どうせたいして領地のない伯爵だ!領地は国に返還するっ!」
クリフォート伯爵も顔がびしょびしょ。
クールな執事長が台無し。
「私もお城でナニーくらいするわっ!だって王妃様とレナード様付きだったのよ!」
何でも、この国でもそっくりそのまま仕事がもらえるらしい…。
さすがに執事長ではないけど。
あられ様が領地も用意してくださった。
「アレックス。私も隠居を決めたよ。ルビーに譲る。」
うふふ。
2人のおじいさまは『ルカたんの面倒を見るのは私だ』と喧嘩になっちゃった。
怖いこともあったけど、ここに帰ってこられてよかった。
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