王子様との婚約回避のために友達と形だけの結婚をしたつもりが溺愛されました

ウインター王国

人気者大作戦

かき。かきかき。


「何をやってるんだ、アレックス。」

揺り椅子でゆったりしながらアレックスは何かを描き描きしている。

首から画板を下げているのか。なるほど、それなら体に負担がかからない。


サイドテーブルにはおやつ……！？

あれおやつ？


白磁のおしゃれな皿の上に出汁用の固い昆布が置かれている。



「あ、レナード。お仕事おつかれさま！」


俺はアレックスの隣に腰掛ける。


だいぶお腹が分かるようになってきた。
身重な身で、自分に出来ることをと試行錯誤してくれて。

この間はお茶会を開いて、貴族たちの心に訴えたと聞いた。

仕事のために外で働いている夫に代わり、領地経営をしている夫人や令嬢が好感をもってくれたら、大体うまくいくものだ。

女性は噂好きで、広めてくれるものだし…。



俺は幸せ者だな。

スプリング王国から連れてきて、ここにアレックスの両親はいない。友達もいない。

俺が大事にしなきゃ。


画板の上の紙を見る。

「これは？」


「僕たちのイメージアップになるかなって。『がんばります、よろしくね』って絵を描いたんだけど、どうかな？」

ん？


もしかして、この雪だるまは人？

俺とアレックスのつもりなのか？



「デフォルメしすぎちゃったかな～。」


うん、デフォルメ。



「アレックス。やっぱり絵より直接国民に話をした方がいいと思うんだ。今度、一斉放送で国民に呼びかけないか。決定した新しい取り組みも説明したいし。スワン王子やリーフ王子たちにも出てもらって、王族の仲のいい感じも見せたいんだ。」


「あっ…。ごめんね。」


ぎっくぅ！

「いや、アレックスが考えてくれたことはすごく嬉しい！この絵は寝室に飾ろう！」


「えへ。」


ああ、守りたいこの笑顔。