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アイリの実家
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「おはよう。みなさま。」
「おはようございます、サザンドラ様。」
サザンドラが学園に登校すると、学生たちはキラキラした目でサザンドラを見つめた。
サザンドラの後ろには、いつもの黒髪の侍女。
しかし、以前と違うのは、彼女の隣にはグレイシャス王子がいたことだった。
この国の次の王。
しかも近いうちにはグレイシャス王子が王に即位してしまう。
次第に薄くなる精霊の加護。
この国がこれから、加護が完全になくなるまでに体制を整えられるのか。
これからもやっていけるのかは、全てサザンドラにかかっている。
美しく聡明な次期王妃に、皆期待している。
面白くないのは王子だった。
「……お前生意気だ。あの視線は私のものだったのに。いいか、あくまでもお前は妃。私が王だ。お前は私のために働くんだ。そこを弁えてくれないと困る。」
全く、本性を隠していたとは。
ちょっと可愛いところもあるかと思っていたのに!
そうぶつぶつ呟く顔だけ王子のことなど、誰も気にしない。
「エスコートありがとうございます。それでは、また。放課後に。」
悪態をついて背を向けるその姿に、サザンドラは呟く。
「あなたはこういうのでしょうね。『お前などお飾りだ。情けなどあると思うな。』と。結構ですよ?私はこの国を救いたいだけですから。あなたでは、他の国と交渉できないでしょう。愛し子を虐げた本人なのですからね。」
「………愛し子愛し子と。そう大したものか?精霊は常に周りに浮かんでいるが、それであいつが何かできるわけでなし、この国を豊かにするようにあの精霊やあいつが何かできるわけでもない。」
「愛し子はそれだけでいいのですよ。どうもスプリング王国の王族の方はずれていますよね。あの魂があったから、精霊の王様はこの国に加護を与えていたのです。愛し子本人に精霊をつけているのは、精霊の王さまへの橋渡し、スプリング王国の監視だったのですよ。愛し子に何かを期待する方がおかしいのですわ。」
愛し子本人に国を守る加護がついていると思い込んでいた。
その図星をつかれて、グレイシャスは怒りのまま振り返った。
―――――そこにあるのは、悪女のような淑女の笑顔。
「私は貴方の愛など要りませんわ。どうぞ、側妃を娶ったらよろしいわ。貴方がたとえ顔だけでも、ベータやオメガに劣る能力しかない第二の性に驕ったアルファのなれの果てだとしても、貴方を本当に愛してくれた女性はおりますでしょう。アレックスの美貌と比べてあなたが捨てた女性たち。貴方の『真実』を知ってもなお、貴方を愛する彼女こそ大事にせねばならないと思いますわ。」
サザンドラはちらっと柱の影にいるマリリンを見る。
彼女ならばたとえ彼が子を与えることができなくても変わらず愛してくれるでしょう。
自分が本当に愛する侍女……レイナ=フラワーは、この国の男爵家の次女だ。
ハニーブロンドと菫色の瞳を持つ愛らしい彼女は、年の離れた姉のせいで両親を失い、人買いに売られて流れ着いたサマー王国で私が拾った。
優秀な彼女は、これからどん底に沈む愚かな『甥』のために救いを探してきてくれた。
マリリン=アクア伯爵令嬢。
彼が遊んだ令嬢たちの中で、妃の立場よりも本当に彼の『妻』になりたいと、彼を想ってくれていたのは彼女だけだったらしい。
私はレイナ=フラワー。
アイリ=フラワーの年の離れた妹。
地味だブスだと私のことを馬鹿にしていた姉は、要領がよく、頭が回り、自分の目的のためなら親も妹も捨てられる女だった。
男爵令嬢だと側妃にも上がれないから。
確かにうちは貧乏だったけど、実直に領地を経営していた。
目だった産業もなく、貧しくて令嬢らしい生活ができなくても、借金だけはなかった。
姉は伯爵以上の家に養女に行きたがった。
なのに、両親が許さなかった。
姉がどんな女なのか分かっていたからだろう。
だから、姉は屋敷に火をつけた。
あの碌でもない伯爵の養女になるために…。
運よくサマー王国で人身売買組織が摘発され、私は売られる前にサザンドラ様のものになった。
もうすぐあの陛下は亡くなる。
姉を拒絶するようになったあの方は、きっと姉が処分してしまうだろう。
助けてやる義理はないし、助けたところで長くないのは変わらない。
そう思うのは、私が壊れているからだろうか。
2人で話をした。
陛下が亡くなるのなら、グレイシャスの種がないのを話するのは、結婚後。
陛下が亡くなって1年後…。
少なくとも半年以上過ぎてからがいい。
そうなれば、お姉さまはグレイシャスに子が出来ないからって次の子を準備するのは無理よね。
他に相手を見繕ったとしても、陛下の子だとは言いはれないでしょう?
お姉さまは誰も愛していない。
あなたは、立場に執着してばかり。
そんなにフラワー家は嫌だった?
グレイシャスもそっくりね。
「おはようございます、サザンドラ様。」
サザンドラが学園に登校すると、学生たちはキラキラした目でサザンドラを見つめた。
サザンドラの後ろには、いつもの黒髪の侍女。
しかし、以前と違うのは、彼女の隣にはグレイシャス王子がいたことだった。
この国の次の王。
しかも近いうちにはグレイシャス王子が王に即位してしまう。
次第に薄くなる精霊の加護。
この国がこれから、加護が完全になくなるまでに体制を整えられるのか。
これからもやっていけるのかは、全てサザンドラにかかっている。
美しく聡明な次期王妃に、皆期待している。
面白くないのは王子だった。
「……お前生意気だ。あの視線は私のものだったのに。いいか、あくまでもお前は妃。私が王だ。お前は私のために働くんだ。そこを弁えてくれないと困る。」
全く、本性を隠していたとは。
ちょっと可愛いところもあるかと思っていたのに!
そうぶつぶつ呟く顔だけ王子のことなど、誰も気にしない。
「エスコートありがとうございます。それでは、また。放課後に。」
悪態をついて背を向けるその姿に、サザンドラは呟く。
「あなたはこういうのでしょうね。『お前などお飾りだ。情けなどあると思うな。』と。結構ですよ?私はこの国を救いたいだけですから。あなたでは、他の国と交渉できないでしょう。愛し子を虐げた本人なのですからね。」
「………愛し子愛し子と。そう大したものか?精霊は常に周りに浮かんでいるが、それであいつが何かできるわけでなし、この国を豊かにするようにあの精霊やあいつが何かできるわけでもない。」
「愛し子はそれだけでいいのですよ。どうもスプリング王国の王族の方はずれていますよね。あの魂があったから、精霊の王様はこの国に加護を与えていたのです。愛し子本人に精霊をつけているのは、精霊の王さまへの橋渡し、スプリング王国の監視だったのですよ。愛し子に何かを期待する方がおかしいのですわ。」
愛し子本人に国を守る加護がついていると思い込んでいた。
その図星をつかれて、グレイシャスは怒りのまま振り返った。
―――――そこにあるのは、悪女のような淑女の笑顔。
「私は貴方の愛など要りませんわ。どうぞ、側妃を娶ったらよろしいわ。貴方がたとえ顔だけでも、ベータやオメガに劣る能力しかない第二の性に驕ったアルファのなれの果てだとしても、貴方を本当に愛してくれた女性はおりますでしょう。アレックスの美貌と比べてあなたが捨てた女性たち。貴方の『真実』を知ってもなお、貴方を愛する彼女こそ大事にせねばならないと思いますわ。」
サザンドラはちらっと柱の影にいるマリリンを見る。
彼女ならばたとえ彼が子を与えることができなくても変わらず愛してくれるでしょう。
自分が本当に愛する侍女……レイナ=フラワーは、この国の男爵家の次女だ。
ハニーブロンドと菫色の瞳を持つ愛らしい彼女は、年の離れた姉のせいで両親を失い、人買いに売られて流れ着いたサマー王国で私が拾った。
優秀な彼女は、これからどん底に沈む愚かな『甥』のために救いを探してきてくれた。
マリリン=アクア伯爵令嬢。
彼が遊んだ令嬢たちの中で、妃の立場よりも本当に彼の『妻』になりたいと、彼を想ってくれていたのは彼女だけだったらしい。
私はレイナ=フラワー。
アイリ=フラワーの年の離れた妹。
地味だブスだと私のことを馬鹿にしていた姉は、要領がよく、頭が回り、自分の目的のためなら親も妹も捨てられる女だった。
男爵令嬢だと側妃にも上がれないから。
確かにうちは貧乏だったけど、実直に領地を経営していた。
目だった産業もなく、貧しくて令嬢らしい生活ができなくても、借金だけはなかった。
姉は伯爵以上の家に養女に行きたがった。
なのに、両親が許さなかった。
姉がどんな女なのか分かっていたからだろう。
だから、姉は屋敷に火をつけた。
あの碌でもない伯爵の養女になるために…。
運よくサマー王国で人身売買組織が摘発され、私は売られる前にサザンドラ様のものになった。
もうすぐあの陛下は亡くなる。
姉を拒絶するようになったあの方は、きっと姉が処分してしまうだろう。
助けてやる義理はないし、助けたところで長くないのは変わらない。
そう思うのは、私が壊れているからだろうか。
2人で話をした。
陛下が亡くなるのなら、グレイシャスの種がないのを話するのは、結婚後。
陛下が亡くなって1年後…。
少なくとも半年以上過ぎてからがいい。
そうなれば、お姉さまはグレイシャスに子が出来ないからって次の子を準備するのは無理よね。
他に相手を見繕ったとしても、陛下の子だとは言いはれないでしょう?
お姉さまは誰も愛していない。
あなたは、立場に執着してばかり。
そんなにフラワー家は嫌だった?
グレイシャスもそっくりね。
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