王子様との婚約回避のために友達と形だけの結婚をしたつもりが溺愛されました

竜鳴躍

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僕の旦那様…

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皆にこんなに良くしてもらっていいのだろうか。

なんだかこそばゆい。

夕餉の時間は楽しい時間だった。


「城のシェフが腕によりをかけて作ったお料理。どれもおいしいですわよ。」

あられ様がコロコロと笑う。

昔は冬の寒さ故、碌に食べ物もなかった。
そんなウインター王国だけど、今では科学の力で穀物も栽培できるし、短い夏の間に作って備蓄することもできる。

芋や玉ねぎ。キャベツはわざと雪に埋めるのだという。



お野菜のポタージュは甘くておいしくて、魚介類が本当に新鮮でおいしい。


「さてナード。我が国はどうだね。」


「……素晴らしいです。まだ実際に市井を見られていないので何とも言えませんが、ちょっとエネルギーの確保が心配になりますね。それからどうにも土地が広すぎるのでいざという時……。拠点が心配かも。」

陛下はナードの言葉に満足したみたい。


「さすがだね、ナード君は。確かにエネルギー不足は深刻な課題なんだ。」


「僕たちもね、婚約者がいるんだ。僕たちを守ってくれる近衛騎士なんだよ。とっても優しいの。こっちにいる間に恋愛のお話も出来たら嬉しいな。」

後で立っているイケメンのお兄さんたちが恥ずかしそうにした。

あの人たちかな。


「スワン殿下!こちらこそっ。」


近衛騎士との恋かぁ。

陛下も王妃様も、息子たちの恋を応援してるんだね。

どっちかが王を継ぐんだろうから、近衛騎士の人が王配になるのかな。







「いよいよ温泉っ。温泉っ。」

部屋に戻り、半露天風呂へ向かう。

メリーとリリーが夜着を準備していてくれる間に、僕たちはお風呂。


「温泉すき?」


「うん。それに、ナードが一緒に入ってくれるから嬉しい。」


「………。」


「どうして、いつも朝は身支度一人で先に済ませちゃってるし、お風呂も一緒に入ってくれないの?って思ってた。」


「ごめん。」


ナード?

なんか変だよ。





ナードはお湯を汲むと、顔を洗った。

そして、顔をあげた。

そばかすがない。

どうゆうこと?


その顔は……。



「ずっと、黙っていてごめん。この髪の色も染めているんだ。本当の色は、プラチナブロンドで……。俺は、レナード=グロリアス=スプリング。先の王妃レイチェル妃の子。」



うそ。


「ナードは……クリフォート伯爵家の…。」


「蒸気機関車の事故に見せかけて母とお腹にいた弟か妹が殺された。侍女や騎士の人たちも犠牲になった。だけど、俺だけは……生きていた。母が……みんなが……………俺を守ってくれた…から。今の母は、俺を死んだことにして自分の息子にして俺を守った。アレックスのお父様が俺の戸籍を偽造してくれた…。」


お父様は知ってたの?



「うっ……。うわぁあ。わぁあぁあああああん!」

ナードは、いやレナードは申し訳なさそうにして。


泣く僕を抱きしめた。



どうしてかわからない。

僕は涙が止まらない。


化粧で顔を変えてたから、いつも先に身支度してたんだ。
お風呂を一緒にしなかったのも。

8年。

そのくらいだと思う。

僕がナードに会ったあの時が、ナードとしての人生の始まりだというのなら。



僕の初恋はレナード。

次の恋はたぶんナード。


レナードが生きていて嬉しかったのか、ナードがいなくなって悲しいのか。

僕にはわからない。


容易に想像できてしまう彼の辛さに、胸が苦しい。




騙されて悲しいのかもしれない。

嘘つき!って罵りたいのかもしれない。


だけど、色んな感情がいっぺんに押し寄せて、たぶんそれが涙になっているんだ。
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