王子様との婚約回避のために友達と形だけの結婚をしたつもりが溺愛されました

逃がした魚は大きい

ナードと一緒に馬車で学園に行くと、みんなが僕をじろじろ見てる！

やっぱり僕の顔が悪いからかなあ。

思ったよりマシだったけど、やっぱり真っ青な目は気持ち悪いのかも。


「気にするな。俺だけを見てるといいよ。まあ、あれはアレックスが美人すぎてびっくりしてるんだと思うけどね。」

「え～。」

「すぐに慣れるさ。気になるんだったら、目をつぶってて？」

はい。


きゅって目をつぶったら、ふわって体が浮いた。

次に目を開けたら、自分の教室の自分の席だった。


きょろきょろクラスメイトを見たら、みんな僕に注目してたよ～。
恥ずかしいなぁ。



「ねえ、そこはコンフォート公爵令息の席だと思うのですが…。クリフォート伯爵令息はコンフォート公爵令息の友人ですよね……。あの、もしかして、なんですけど。コンフォート公爵令息ですか？」

学級委員長のセージ侯爵令息が確認してきた。
ぱっつん前髪のまじめっ子だから。
えらいよね。そりゃそうだ。僕、今まで顔を隠してたんだもん。

「はい！あなた方がコンフォート公爵令息と言う者は僕で当たっています！でも「どういうことだ！ブスの分際で王命を断るなんてッ、身の程知らずが！！！俺が叱られたじゃないかッ！」」

ガラッと扉を開けて、取り巻き（女性）を引き連れながら現れるグレイシャス王子。


僕の顔を見るなり、固まって。

相当怒ってるんだろうね、真っ赤になっている。



「あー。」

ナードがこほんと咳払いした。

「アレックスは、グレイシャス王子にこのように不細工だと幼少期より罵られてきた。だから、自分は醜いと思い込んで、今まで前髪で顔を隠していたんだ。」


『えっ。あれを？醜い？？』

『グレイシャス王子は自分より美しいものだから嫉妬でもしていたんじゃないかしら。』

がやがやと聞こえてくる。

取り巻きのご令嬢たちも僕を見て睨んでいる人と赤くなってる人がいる？

「ナード。もしかして僕って本当は美人だったの？」

「そうだよ。だから言ったじゃない。グレイシャス王子は美醜が逆転している感覚の持ち主らしいね。」

そうなんだ。よかった～！カッコいいナードに釣り合わないんじゃないかって心配してたんだ！


「…………おおおおおおおおおお。」

グレイシャス王子は周りの音が聞こえない様子で震えている。

やだなぁ、暴力は振るわれたくないなぁ。
精霊さんがオートで守ってくれるから、酷いカウンターになるんだよね。
僕悪くないのに、加害者になりたくないなぁ。



「どうして！王命を！断ったんだっ！！！」

「断ったんじゃなくって、受けられなかったんです。王命が来た時には僕はもうアレックス＝コンフォートじゃなくって、アレックス＝クリフォートだったの！僕はナードと結婚したんだよ！人妻だからお嫁には行けないでしょ？」

「そう。俺たちラブラブだから。」

ナードと２人で手でハートを作る。


「こんな伯爵令息のどこがいいんだ！格下だし、そばかすがみっともないじゃないか！」

「ナードはカッコイイし、僕にとっては世界一素敵な旦那様です！それに、殿下は僕の顔が嫌いだったでしょ！お飾りにするっておっしゃってたじゃないですか！そんな縁談潰れた方が、殿下だって満足だったでしょう？だから先に結婚したんですよ！陛下だって承諾したんですから！うっかり忘れてたみたいですけど！」



「なぁぁああああああああああああ！！！」

頭を抱えて叫ぶ殿下。


そこへ教師が入って来た。

「グレイシャス王子、王子殿下といえど授業は自分の教室で受けていただかなくては困りますな。そこの令嬢たちも。ご両親に報告しますね。」



嵐は去った。




なんかスッとしちゃった。

ナードも自分の教室じゃなかったけど、殿下に妻が絡まれてたんで助けてました！と言ったらしいよ。