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ヨハネとクルーズ訝しむ

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赤味の強い栗毛を短く刈り上げたヨハネ=モーリス伯爵令息と薄茶の髪を襟足で括ったクルーズ=マリーン伯爵令息は、貴族の令息らしく鍛えたバランスのいい体躯を活かして見事に騎士服のコスプレを着こなしている。

2人のクラスは、ロイヤルアフタヌーンティーごっこをしている。

ホストの女生徒は夜会のドレスでめかしこんで、お客様をもてなすのだ。



女生徒の一人がなかなか帰ってこない。

メロディ=ミューズ子爵令嬢だ。


ローズ、いやニーノを見る前ならすごくかわいい子だと思っていたけれど、よく見たらただ可愛いだけの子だと思う。

可愛いとうぬぼれている節があり、やっぱりさっぱりした性格のベリーサの方が素敵だと二人は思う。


男は見た目で騙されやすい。

最終的には家同士のつり合いや打算で婚約が成立し、その後で互いに歩み寄り、尊敬できるところや素敵だと思うところを見つけて、だんだんと愛が深まっていくのだと思う。

でも、その前にはやっぱり、なんだかんだと親たちも子どもの性格や嗜好が分かっていて、『合う』であろう人を選んでくれているのか、どうしても合わなくて仮面夫婦になる人たちの方が少ないように思う。


王弟殿下の夜会に集められたメンバーは、どちらかといえば気が合う人間を見繕って、それから親が相手の素性を調べ上げ、認められたら当主同士で話し合い、婚約しようという手順をとりたい家だったから、この年になっても珍しく相手のいない者たちだった。

その中で、ベリーサに会えたのは幸運だったと思う。


ベリーサの友人のマーマレイドもそうだが、二人とも美人であるがきつめの顔立ちをしていて、第一印象で損をしていた。




「お。」


ぱたぱたと現れるピンク頭が見えて、二人は『来たな。』と思った。



なんだあれ………。


ド派手な赤いドレス。

こてこてにリボンやアクセサリーをつけすぎて、みっともない。


「おまたせ!」



みんな、お前が主役ではないと言いたいのを飲み込んでいる顔をしている。




本物の美を見て、魔法が解けたようにメロディをちやほやする人間は減った。

いまだにちやほやするのは、パーティに呼ばれなかった下位貴族の令息くらいなものだ。

元から令嬢には遠巻きにされていたから…。



「そろそろ始まるぞ。みんな持ち場につこう。」



「うふふ。きっと、お客様は私を取り合うわね。他の方は暇になっちゃったらごめんなさいね~。」

どういう自信だ。

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