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ケイトリンにとっての一番の罰

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「うぅぅぅぅ…………。」


帰国する頃までには、ロゼッタ王国でアンドリューとの離縁の手続きが完了し、国内外にエクセレント王国でケイトリンが行った行為が知れ渡っていた。

しかも、諸外国にもこれまでの所業から一切合切が知れ渡り、『男爵家出身のシンデレラ』『庶民に近い親しみやすい妃』としての名声は地に堕ち、実家もケイトリンと縁を切って爵位を捨て、逃げるように他国へ行ったという。

その国では平民だが、実業家としての経験や実績まで失うわけではない。
名前を変えて、一からの再スタートだが、贅沢をするような習慣もないから問題がないようだ。


貴族なのに贅沢を許さない家に生まれ、着飾って欲しいものを欲しいだけ手に入れ、ちやほやされたかったケイトリンは、実家が大嫌いだった。
実家が経営する商会に来て、ケイトリンが欲しかった商品は高位貴族の令嬢たちが買っていく。
仕入れた商品や完成したドレスをケイトリンが欲しがっても、両親も兄も絶対にケイトリンには与えてくれなかった。
分相応、分相応……。
親の躾や令嬢としての教育は右の耳から左の耳で、自分を不幸にするための呪いのように感じていた。


エクセレント王国に向かう時は王太子妃で丁重に扱われて綺麗な馬車で移動したのに。

帰国するときは希代の悪女、王太子や王太子の妃候補だった者たちを陥れ、罪人を国に引き入れ、不法な媚薬を入手し使って他国の王族と婚約者を貶めようとした罪人として………粗末な馬車でロゼッタ王国から迎えに来た騎士たちに連行される。


前の馬車は来るときに使った綺麗な馬車。
その中には、アンドリューとラナ、トーマスが乗っている。


「…………うぅ…っ。」


ケイトリンは涙が止まらない。


馬車には石がぶつかる音。

国民の怒号が聞こえる。



一番つらかったのは、可愛がっていた娘に冷たい視線を向けられたことだ。



「アナタの言うことはみんな嘘ばっかり。アナタを信じていたばかりに、私は学ぶ機会を失ってこんな女になってしまった。お父様の言うことを聞いていれば、きっと私はそれなりの結婚をしていたでしょうし、陛下だって私まで子を産めないようにはしなかったはずだわ!こんな私とトーマスはお似合いでしょう?トーマスはこれから、いない者として私の夫になるのよ。トーマスは男が好きだったくらいだもの、子どもができなくても平気よね!私、ずっと塔の中で暮らすわ!アンドリューお父様が、私たちのためにどこにも行けなくても生涯楽しく過ごせるようにしてくださるのよ!私は、お母様のことがショックで心を病んでしまったことになるのですって!」

くったりして諦めの顔をしているトーマスの腕を掴んで離さない娘に、そう言い捨てられた。


私のせい………。

私のせいで、アンドリューは王になれない。病気になって、早死にしてしまう。

私のせいで、娘も石女にされてしまった。

私のせいで、生涯幽閉になる。



王子を無理やり捕まえて、妃になって。
可愛い娘。
国民の称賛。
シンデレラと称えられ、きらきらした未来。


そんなものはなかった。

人を呪わば穴二つ。


『分不相応』を望んだ私は、その時点で破滅することが決まっていたのだ。
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