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トーマスは返り討ちにしました

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「…………お前のような女の嘘に騙され、正しい者を排してしまった私の罪。その責任としてずっとずっと、お前のしりぬぐいをしてきた。娘はもう、手の施しようもない。出来が悪いのは否めない。だが、それでも、王族として最低限の常識とマナーくらいは身に着けてほしかった。そのために私が何度口を出したか。だが、そのたびにお前が甘やかして、私の言うことをちっとも真面目にとりあってくれなかった。よそ様の国を巻き込んで本当に申し訳ございません…。」


アンドリューは、ふらつく体を押して、ケイトリンの頭を押さえると、地べたに這いつくばらせた。


「なによっ!やめて!痛いわ!家庭内暴力よ!!!!」


ケイトリンの声はアンドリューには届かない。というか、無視をして続ける。


「……だが、お前のような毒女を排するためには。弟のために、キレイな国にしておくためには。情けないが手を借りる他なかった…………。お前は、『気さくな王太子妃』『庶民に近い妃』として国内外で何故か人気があるからな…。お前の本性を知る者たちを外に増やし、外交でお前がやらかすこと……、それを明るみにすることが、大事だった。人気取りのショーばかりで公務に出たがらないお前は、ぼろを出すようなところへは初めから行かない。私たちの言い分だけでは、こちらが不利。国際社会から正しく善悪を判断してもらうためにも、この外遊はもってこいだったんだよ、ケイトリン。」


「なんで……っ。あなたは私を愛して……!」


「愛してなんかいるわけないだろう!お前など、カトレアの1億分の1も愛していないわ!………私はお前の嘘を信じてしまった段階で、一時でもお前に気を許した段階で、陛下から見捨てられたんだ。お前と結婚し、お前の不始末を面倒見ながら、いずれ即位する弟のために仮初の王太子を務め、お前がぼろを出すように仕向けるのが私への罰だった。………本当は子など要らなかったのに。お前とはそういうことをするつもりもなかった。お前が媚薬を盛って私を襲わなければ…。」


「………あなた、何を言っているの…!?あなたは王太子で私はその妃。一人娘のラナは、いずれ女王になるのでしょう??!!」


「陛下はお前の血筋を王にするつもりはほとほとない。私も同意だ。国が滅びる。だから、ラナは仕方がないとして、これ以上子が出来ぬよう、お前には不妊になる薬が与えられた。だから、その後はできなかったんだよ。そして、ラナにも同じ薬が投与されている。あの子は生涯自分の子を抱くことはできないだろう。」




「なっ…!なんですって!!!!」



「カトレア、君に会えて本当に良かった。公爵、カトレアを幸せにしてくれてありがとう。さあ、この女は祖国に連れ帰ります。私もこれも、きっとすぐに儚くなるでしょう。まあ、私の方は普通に病気ですけどね。」


「きぃぃぃぃ!トーマスっ!とーますぅ!!!トーマス、出てくるのよ!貴方は私に恩義があるでしょ!私を助けなさいよ!!!」


アンドリューに頭を押さえつけられながら、ケイトリンが叫ぶ。







「トーマスは、返り討ちにしましたよ。」

年齢より若々しくて素敵な宰相。

若さと美貌を保つ憎々しいカトレア。


夫によく似た麗しい長男。

輝くように美しい次男と長女。


そして、彼らを愛する美しい二人の王子と王弟殿下。


彼らがエクセレント陛下と同じ高所に立ち、自分を見下ろしている。


自分が望んだものが、そこにある。



「今、あなたのお嬢さんと同じ部屋にいますよ。そういえばわかりますかね……。貴方のお嬢さんは生涯幽閉になるそうですよ。トーマスはかなり年上ですが、騎士だけあって体力はありますし、変態ですけど見た目は悪くありませんから、きっとお嬢さんは執着するでしょう。他に相手をしてくれそうな殿方もおりませんし。そして、トーマスにとってはちっとも好みじゃないでしょうが、執着されたら死ぬまで逃がしてもらえないでしょう。こちらとしても、ハッピーです。」


カント王子が冷徹に笑った。


「よかったですね。お気に入りの騎士だったのでしょう?」




「………そんな、いや、いやあぁああああああああああ!!!!!!!」

ケイトリンは泣き叫び、暴れ、化粧はとれて目から黒い涙を流し、ドレスは破裂して、見るも無残な結末となった。






「すっきりした?お母様。」

イーノが浮かない顔の母親に話しかける。


「…ずっとやり返したいと思っていたけど。後味は悪いものね。」

「君は優しいな。大丈夫だ、アンドリューは離縁できるだろう。長くは生きられないかもしれないが、落ち着いた余生を過ごせるはずだ。」

宰相は愛しの妻の体を寄せた。

そして、そんな両親を見ているニーノは…………。







「ぶるーの!つかれた!だっこ!」


まだ酔っ払いだった。
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