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消えたランスロット
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ランスロットが消えた。
学園長が消え、アーサーという教師も消えた。
どういうことだ?
「父上!あちこちの領地で採掘場の鉱石がただの石になっています!」
「陛下!」
ジュエリー王国は騒然となった。
そんなとき、カラット王国の印の入った書簡が届いた。
『大地の巫女は返していただく。』
「おのれ、おのれぇ!あの狸めぇ!」
グラスを投げつければ、破片が散り、息子の目に当たった。
「ぎゃあああ!」
「王子!」
「おのれ、そんな者どうでもいいわ!」
「どうでも!?」
「ちっ………あいつらが、あの義母たちが虐げすぎたからだ!だからランスロットは向こうに逃げたのだ!そういえば学園長はカラット王国でも教育係をやっていた!ちくしょう!あいつの手の者だったのか!」
呼び出されたローズマリーとカカオ、ミントは狼狽えた。
領地のダイヤモンドは消えていた。
しかし、幸い領民は技術がある。他の製品も。そう思ったが、領民は一人残さず消えていた。
領民思いのランスロットのために、アーサーが手引きをして第三国に逃がしたとは誰も思わない。
「お前らのせいで、大地の巫女が逃げただろうが!何もない貧しい国だった我が国に突然資源が沸いておかしいと思わなかったのか!カラット王国の王弟殿下の娘で巫女であるオリビエ王女がダンデの妻となり、祈ったからだ!」
「ひぇっ!王女!?」
彼らとともに呼び出された使用人たちも驚く。
「ああ、そうだよ!我が国の宝石は全て姫巫女が生んでいた!オリビエ王女亡き後は息子のランスロットがなあ!お前らは!我が国の!宝を虐げたんだよお!」
「ひいい!!!」
「ダンデは幼馴染みのよしみで行き場のないおまえたちを引き取っただけ!あの二人は本当に愛し合っていた。その子を虐げるなど人間のすることではないな!まあ人間ではないな!ダンデの妻になりたいがために前の旦那を毒殺したのだからな!」
ローズマリーの顔色が褪せる。
使用人も、カカオとミントも『えっ…………』と、ローズマリーを見た。
恐ろしい魔物を見るような目で。
回復術士の治療で失明を免れた王子は父の二枚舌に嫌気が刺しながらも、逆らえず陰から眺めていた。
悪だ。
どちらも悪だ。
ランスロットは娼婦でも淫乱でもなかった。
被害者だったんだ。
あのとき、襲わなくてよかった。
私もまた悪人の仲間だった。
心を入れ替えよう。
できればいつか、父を―――――
学園長が消え、アーサーという教師も消えた。
どういうことだ?
「父上!あちこちの領地で採掘場の鉱石がただの石になっています!」
「陛下!」
ジュエリー王国は騒然となった。
そんなとき、カラット王国の印の入った書簡が届いた。
『大地の巫女は返していただく。』
「おのれ、おのれぇ!あの狸めぇ!」
グラスを投げつければ、破片が散り、息子の目に当たった。
「ぎゃあああ!」
「王子!」
「おのれ、そんな者どうでもいいわ!」
「どうでも!?」
「ちっ………あいつらが、あの義母たちが虐げすぎたからだ!だからランスロットは向こうに逃げたのだ!そういえば学園長はカラット王国でも教育係をやっていた!ちくしょう!あいつの手の者だったのか!」
呼び出されたローズマリーとカカオ、ミントは狼狽えた。
領地のダイヤモンドは消えていた。
しかし、幸い領民は技術がある。他の製品も。そう思ったが、領民は一人残さず消えていた。
領民思いのランスロットのために、アーサーが手引きをして第三国に逃がしたとは誰も思わない。
「お前らのせいで、大地の巫女が逃げただろうが!何もない貧しい国だった我が国に突然資源が沸いておかしいと思わなかったのか!カラット王国の王弟殿下の娘で巫女であるオリビエ王女がダンデの妻となり、祈ったからだ!」
「ひぇっ!王女!?」
彼らとともに呼び出された使用人たちも驚く。
「ああ、そうだよ!我が国の宝石は全て姫巫女が生んでいた!オリビエ王女亡き後は息子のランスロットがなあ!お前らは!我が国の!宝を虐げたんだよお!」
「ひいい!!!」
「ダンデは幼馴染みのよしみで行き場のないおまえたちを引き取っただけ!あの二人は本当に愛し合っていた。その子を虐げるなど人間のすることではないな!まあ人間ではないな!ダンデの妻になりたいがために前の旦那を毒殺したのだからな!」
ローズマリーの顔色が褪せる。
使用人も、カカオとミントも『えっ…………』と、ローズマリーを見た。
恐ろしい魔物を見るような目で。
回復術士の治療で失明を免れた王子は父の二枚舌に嫌気が刺しながらも、逆らえず陰から眺めていた。
悪だ。
どちらも悪だ。
ランスロットは娼婦でも淫乱でもなかった。
被害者だったんだ。
あのとき、襲わなくてよかった。
私もまた悪人の仲間だった。
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できればいつか、父を―――――
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