大型犬系部下はツン猫系隊長の虜。～陰謀で殺されかけた王子は、復讐を為して愛する部下の腕の中で眠る。～

ユリウス元王子と孤児のハル

なんのことでしょう？

「ミル。君がそうやって周りに吹き込んで、ハルを孤立させ、廃嫡に追い込んだんだ。貴族社会で信用問題になるほどの子を置いておくわけにはいかないと男爵は考えたんだろう。だってそうだろう？子がなせないくらい、なんとでもなるものな。遠縁から養子にもらうもよし、お前の子を後継にもらうもできるわけだから。ハルは計算も得意で、領地を経営する能力はある。後継に問題はない。」

えっ。


と、ハルはミルを見た。


「ミルはぼくが嫌いだったの………？」



ミルは下唇をかんだ。


「大嫌いだ。野垂れ死ぬか、男相手の娼夫にでも堕ちていればうれしかったのに。」

一つしか違わないから、いつも比べられた。

小さい頃から見目がよく利発な兄。

ぼくは見た目があまりよくないし、女の子にもモテない。

勉強も領地経営も、兄には勝てない。

唯一勝てる武芸を磨き、しかしそれは兄の下で使えと親は言う。

兄には裏家業は無理だから、俺に引き継げと。

最悪何かあっても、当主が何も知らず無関係なら、家は無事だからと。

それは、俺は捨て駒だということだ。



「分かっただろう、ハル。」

「ごめんね、ミル。もう会いに来ないから。」


ハルを慰めながら店に戻った。

…………ミルも親の犠牲かもしれない。

だからといって、受け入れるわけにはいかない。



幸せなハルを見せたことは、ミルのしたことへの仕返しに、十分なった。




私は商会で作るオリジナルブランドの生産を各修道院に任せることにした。

修道院で受け入れた孤児たちにも、就労訓練を兼ねて担ってもらう。

織物や家具、小物、アクセサリー。

手に職あれば、働き先はいくらでもある。


そしてこの事業に一切ミルを関わらせることのないよう、院長に約束させた。