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ユリウス元王子と孤児のハル

君はそうやってハルを追い込んだんだね?

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私が睨んだからまずいと思ったのか、ミルは雰囲気を改める。


「も、申し訳ありません。いろいろあって心がささくれているようです…。ごめんなさい、お兄様。」


「ううん。僕こそ、辛いときにごめんね。僕が廃嫡なんかされたから、君だけが罰を受けて…。本当は僕だって罰を受けなければならないはずなのに。」

うーん。優しすぎる。

相手の裏表が分からないとは…。


賢くてもこれでは、貴族は無理だっただろう。

私は平民で商会の主のただのユリウスだから、問題ないな!

私がハルを守ってあげよう。



「ハル。親が罰を受けたからって、子どもまで罰を受けることはそうそうないんだよ。せいぜい、貴族じゃなくなって平民になるとかそのくらいだ。修道院に行くのは、んだよ。」


「………お兄様?そういえばこちらの方は?」


「私はユリウス。リリー商会の主で、ハルの夫になる者だ。……ハルはとっくに戸籍上は君とはかかわりはない。だが、血はつながっていることは確かだ。だから、君に会いたいというハルの希望を聞いてここに来た。君が反省をして、これからの人生慎ましく真面目に生きるというのなら、歓迎するのだが。」


「リリー商会でユリウスというと、ユリウスさまでしょうか。王子殿下でいらっしゃった。あなたも何も悪いことはしていないのだから、あなたが王になればよろしかったのに。残念がる声が今でも多いのをご存じですか?きっと、素晴らしい君主になったことでしょう。」


「はは、それは買いかぶりだ。」


私の腕の中で、ハルがおろおろしているのが分かる。


ごめんね。


君にとって大切な弟だけど、敵なんだ。



「それにしても、兄を娶るおつもりだなんて…。兄には男としての生殖能力がありません。それでこの見た目でしょう?昔から男を引き寄せて、とっかえひっかえ。素行が悪く、学園でも問題視されていたのです。だから廃嫡されましたが、あまりの素行の悪さにどこも雇ってくださるところがなかったんですよ?あなたと出会う前、どうやってしのいでいたやら…。」

「またそんな…っ!ミルは誤解してるんだよ、僕はそんなことしてないよ。」



大丈夫、分かっているから。



ぎゅっと抱きしめる。



「ミル、君はそうやって周りに吹き込んで、ハルを追い込んでいったんだね?」





悪いけど、ミル。

私には通用しないから。
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