大型犬系部下はツン猫系隊長の虜。~陰謀で殺されかけた王子は、復讐を為して愛する部下の腕の中で眠る。~

竜鳴躍

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ユリウス元王子と孤児のハル

おうじさま?

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皆が帰った夜更け。


もう夜遅いから、私は翌朝、自分のことをハルに伝えることにした。



君のお父様を使って悪いことをしていたのは、私のお父様だったんだよ。




そう言ったら君はどう思うだろうか。




悶々として寝られなかった。







翌朝はいい天気で、窓を開けると少し冴えた冷たい空気が入ってくる。

もう、季節は夏を過ぎ、秋だ。


簡単に具沢山のポトフを作り、ハルの身支度を待つ。



「ハル。私が誰なのか、今日は君に話したいと思う。」

「え?」


「私は、ユリウス=ティス=ブルーローズ。君は事件の時は廃嫡されていたからしらないかもしれないが、これまでこの国の陛下だという顔をしていた私の父は、双子の兄で本当の陛下だったグレイス=ティス=ブルーローズ陛下を毒殺して成り替わった弟のグリム=ティス=ブルーローズだった。私は、妃のルビー妃との間に生まれた王子だ。」


「………おうじ、さま?」


確か僕が街をさまよっている間にこの国は王制でなくなって、貴族の合議制になったというのは聞いているけれど。
ユリウスさまは、やっぱり高貴な方だったんだ…。

「私の両親は罪人だ。私は罪人の子だよ。だから、自分から王子をやめたんだ。今は平民のユリウスさ。」

「ご両親は………。」


「父は処刑。母は隣国の王室に送り返され、向こうで幽閉されている。主犯は母だ。隣国には賠償金が請求されている。私は何も悪くないから、二人を切り捨てた。自分の親だけど、大嫌いだったんだ。」

君と違って、私はなんて醜いんだろうね。


「そして、君に酷いことをしたベリー男爵家だけど……。男爵と夫人は、グリムとルビーの手下だった。彼らが成り代わった後、貴族社会で優遇される見返りに陛下に毒を盛ったのだ。他にも邪魔者を暗殺する仕事をしていた。だから、彼らは処刑された。」

ショックで涙を流すハル。

頭を撫でたいが、触れてもいいだろうか。


「弟は!?」

「弟は修道院に行ったよ。」


よかった、と胸をなで下ろしている。

君を蔑み、追い出した弟でも、君は心配できるんだな。


「ベリー男爵家は取り潰された。私の両親のせいだ。申し訳ない。」

頭を下げ、椅子を立ち、ハルの前に片膝をつく。


「私は、こんな男だ。だけど、どうしようもなく君に惹かれている。ハル、こんな私でもいいのなら、どうか………」



私と結婚してくれないだろうか。







カーテンが揺れ、優しい風がふく。



背中に小さな腕が回る。



「ぼくも、ユリウス様が、好きです。」
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