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ユリウス元王子と孤児のハル

やせっぽちのハル

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「ありがとうございます。またお越し下さい。」

王都の片隅には、庶民から貴族まで幅広い客層で賑わう商会がある。

互いに衝突が起きないよう、主に貴族側のために、訪問販売も行う配慮もされていて、ますます賑わうリリー商会には目利きでセンスの良い主がおり、しかも最近は店に出るようになった。

金髪碧眼で背の高い、華やかで物腰が洗練された若い男はあっという間に人気になった。

元王子様に似ているが、分かっていても言わないのが、この国のルールだ。



「はあ、順風満帆。アレックスたちの婚礼衣装もうちで用意させてくれないもんかなあ。」

アレックスの魅力は充分私が知っているんだから。
誰よりも輝かせてあげられる。


「店長、お先に失礼します。」

ドアが開くと、雨がざあざあ打ち込んでくる。

「今夜は酷い雨だから、気をつけてね。また明日。」


店員を送り出し、戸締まりを始めた。



ガタっ。




店の脇から何か音がする。


何だろう。

戸締まりをしてレインコートを羽織り、ランプを手に音の方を見れば、何か布切れの山が壁にもたれている。


「だれだ?」


「!ごめんなさいっ!」

山は驚いて走り去ろうとする。

まだ子ども?

靴が濡れるのを厭わずに、思わず濡れた腕を捕まえれば、折れそうに細い。

浮浪児だろう。

「待ちなさい。怒っているわけじゃない。そんなところにいないで、中に入って。」

「で、でも。僕はこんなに汚いし。」

「こんなに体を冷やして。なら、なおのことお風呂に入らないとね?」


遠慮がちに招いた子どもは、店内に入ればキョロキョロするでもなく大人しく、お風呂に連れて行ってやる。

着ていた服はもう着られないから処分して、商品の服を着せることにした。



痩せた体は骨が出て痛々しい。

綺麗に汚れを落とせば、ミルクティー色の綺麗な髪、オレンジ色の瞳の、肉がつけば可愛らしいだろう男の子になった。


「君は元は裕福な平民か貴族の子どもじゃない?なんでこんなことに。」

汚れてボロボロの服は、元は質の良いものだった。隠すように服の内側にあったエメラルドのブローチを、彼に渡す。


男の子は泣き出した。




「ぼくは、ハル。ベリー男爵の長男でした。」


彼の体には欠陥があり、子をなせないことが分かり、廃嫡されたのだという。


「ハル。ここで働かないかい?」


私はなるべく優しく微笑んだ。


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