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微睡むあなた
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「隊長~。この決裁…
ノックをして部屋に入ると、机の上に頬を乗せて、隊長が眠っている。
「おやおや。会議の帰りが昨日の夜遅くでしたからね。」
後からステンシル先輩が入ってくる。
スラリとした長身で、銀髪碧眼だけど、目が細い。
ミステリアスな美形だなぁと思う。
この先輩も、騎士になるようなタイプには見えないんだよなぁ。
「会議って、王都での?往復だけでも時間かかりますもんね。疲れますよね~。」
「いや、この人の場合はそれだけじゃないですよ。まあ、気苦労も何かと多い方なんです。ウルフ君、隊長を仮眠室で寝かせてきてくれませんか?私の力ではうまく運べないんですよ。君なら楽勝でしょう?」
「はい。」
ふわりと漂うオレンジ。
ゆっくりと起こさないように気をつけながら、姫抱きにする。
「……軽い。」
こんな軽い体で強いんだから分からないよなあ。
気苦労も多いなんて、上に行くって楽じゃないんだな。
執務室の奥に、仮眠室はあった。
運ぶ前にドアを開けてベッドの布団をめくっておいたから、その真っ白なシーツの上にゆっくりと寝かせる。
「…………っ!」
行こうとしたら、服の裾を掴まれた。
「……かないで!置いていかないで!」
「……たい、ちょう?」
「怖いよ、寂しいよ、魔獣が来るっ、…いやだ、死にたくないっ!助けて、誰か助けて…!」
「隊長?」
今の隊長なら、魔獣なんて怖くはないはず。
ならこれは、いつの記憶なんだ?
「隊長、大丈夫。大丈夫ですよ。隊長なら魔獣なんかに負けません。死にません!」
ふるふると横に振る顔。長い睫毛から涙がこぼれる。
「お父様…なんで助けてくれないの?お母さま、どこへ行ってしまったの?バーバラ、ステンシルっ!二人はどこ!?―――――――なんで僕は愛されないの…?」
どういうことだろう。
「大丈夫、泣かないで。俺がそばにいますから。俺は貴方のファンですからね、絶対に離れないですから。」
抱きしめると落ち着いて、やがて、すーすーと穏やかな寝息に変わった。
「隊長に何が…。」
ステンシル、先輩の名前が出てきた。先輩なら何か知っているのだろうか。
ノックをして部屋に入ると、机の上に頬を乗せて、隊長が眠っている。
「おやおや。会議の帰りが昨日の夜遅くでしたからね。」
後からステンシル先輩が入ってくる。
スラリとした長身で、銀髪碧眼だけど、目が細い。
ミステリアスな美形だなぁと思う。
この先輩も、騎士になるようなタイプには見えないんだよなぁ。
「会議って、王都での?往復だけでも時間かかりますもんね。疲れますよね~。」
「いや、この人の場合はそれだけじゃないですよ。まあ、気苦労も何かと多い方なんです。ウルフ君、隊長を仮眠室で寝かせてきてくれませんか?私の力ではうまく運べないんですよ。君なら楽勝でしょう?」
「はい。」
ふわりと漂うオレンジ。
ゆっくりと起こさないように気をつけながら、姫抱きにする。
「……軽い。」
こんな軽い体で強いんだから分からないよなあ。
気苦労も多いなんて、上に行くって楽じゃないんだな。
執務室の奥に、仮眠室はあった。
運ぶ前にドアを開けてベッドの布団をめくっておいたから、その真っ白なシーツの上にゆっくりと寝かせる。
「…………っ!」
行こうとしたら、服の裾を掴まれた。
「……かないで!置いていかないで!」
「……たい、ちょう?」
「怖いよ、寂しいよ、魔獣が来るっ、…いやだ、死にたくないっ!助けて、誰か助けて…!」
「隊長?」
今の隊長なら、魔獣なんて怖くはないはず。
ならこれは、いつの記憶なんだ?
「隊長、大丈夫。大丈夫ですよ。隊長なら魔獣なんかに負けません。死にません!」
ふるふると横に振る顔。長い睫毛から涙がこぼれる。
「お父様…なんで助けてくれないの?お母さま、どこへ行ってしまったの?バーバラ、ステンシルっ!二人はどこ!?―――――――なんで僕は愛されないの…?」
どういうことだろう。
「大丈夫、泣かないで。俺がそばにいますから。俺は貴方のファンですからね、絶対に離れないですから。」
抱きしめると落ち着いて、やがて、すーすーと穏やかな寝息に変わった。
「隊長に何が…。」
ステンシル、先輩の名前が出てきた。先輩なら何か知っているのだろうか。
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