人魚姫は復讐する~婚約破棄してくれてありがとうございます~

竜鳴躍

文字の大きさ
上 下
12 / 12
マジック王国で

【完結】エンディング

しおりを挟む
カヌレ王国では、王妃が王のそばにたたずんでいた。

「ねえ、あなた。子どもは神様からの贈り物。必ず何人も男の子が生まれる保証はないわ。それに、トールの性格であれば、側妃は設けないでしょう。もし、一人しか男の子が生まれないか、子どもが産まれなかったらどうするか。そのことも、向こうへのお手紙に書いておくべきじゃないかしら。」

「…ああ、そうだな。さすが我が妃。そうしたほうが我々の誠意も向こうに伝わるだろう。こちらは絶縁されているわけだしな。」


王は、さらさらと文書にこう付け加えた。


『もし、叶わない場合は、我が国を帰国と併合してもらえないだろうか。』


「まあ、こう書いても、あれだけ仲良しなら大丈夫だろう。トールもマリーンも若く健康だ。」



「そうね。」

王妃は悲しそうに、目線を落とした。長い袖の中には。


「………ぐっ!な、なにをっ!」


「私の大切なリチャードの仇よ!」

王妃の目には深い悲しみが宿っていた。

「カヌレの正妃は結婚の儀で契約魔法が施される!けして夫に逆らわず、夫の意に沿って支えなければならない契約が!だけどね、あなた。ご存じかしら。あまりに深い悲しみは、魔法を解くのよ?」


あなたは馬鹿なの?

体の弱いあの子に薬を使うなんて。

子どもができるまで頑張れと、二人を閉じ込めるなんて。

あの子が死んだのはあなたのせいよ!



「……あの子の亡骸を見て。私はおかしいって思ったわ。二人それなりに時間をかけて歩み寄って、暮らしているものだとばかり思っていたのに。私はいつだってなにも詳しいことは聞かされないもの!」


「ぐっ、ぐはああ!やめ、や。…あ。」

王をめった刺しにし、血濡れになってこと切れ、床に倒れた王を見た王妃は。

ふふふ、と力なく笑い。そして、自分も息を引き取った。









マジック王国では、奇跡が起きていた。

「マリーン、マリーン!」

トールの涙が、マリーンの口の中に零れる。


すると、ぱあっと体が光り。

泡になっていた体がすっかりもとに戻っていった。

「……トール?」


「よかった、マリーン!」



「トールのお母様は、聖女だったと聞くよ。きっと、トールも力をいくらか受け継いでいたんだね。本当に良かった…。」

キシリトール殿下も、目を潤ませ、その体は騎士団長が支えていた。



その後、カヌレ王国はマジック王国に吸収される形で併合となった。

王となったトールと王妃になったマリーンの間には、二人の王子と姫が生まれ、二人はどの子にも平等にしっかりとした教育を施した結果、立派に育った。

王太子になった王子には、キシリトール殿下と騎士団長の娘が嫁ぎ、末永く幸せに暮らしたのだった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】愛してるから。今日も俺は、お前を忘れたふりをする

葵井瑞貴
BL
『好きだからこそ、いつか手放さなきゃいけない日が来るーー今がその時だ』 騎士団でバディを組むリオンとユーリは、恋人同士。しかし、付き合っていることは周囲に隠している。 平民のリオンは、貴族であるユーリの幸せな結婚と未来を願い、記憶喪失を装って身を引くことを決意する。 しかし、リオンを深く愛するユーリは「何度君に忘れられても、また好きになってもらえるように頑張る」と一途に言いーー。 ほんわか包容力溺愛攻め×トラウマ持ち強気受け

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

博愛主義の成れの果て

135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。 俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。 そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。

彼は罰ゲームでおれと付き合った

和泉奏
BL
「全部嘘だったなんて、知りたくなかった」

悪役のはずだった二人の十年間

海野璃音
BL
 第三王子の誕生会に呼ばれた主人公。そこで自分が悪役モブであることに気づく。そして、目の前に居る第三王子がラスボス系な悪役である事も。  破滅はいやだと謙虚に生きる主人公とそんな主人公に執着する第三王子の十年間。  ※ムーンライトノベルズにも投稿しています。

【完結】《BL》溺愛しないで下さい!僕はあなたの弟殿下ではありません!

白雨 音
BL
早くに両親を亡くし、孤児院で育ったテオは、勉強が好きだった為、修道院に入った。 現在二十歳、修道士となり、修道院で静かに暮らしていたが、 ある時、強制的に、第三王子クリストフの影武者にされてしまう。 クリストフは、テオに全てを丸投げし、「世界を見て来る!」と旅に出てしまった。 正体がバレたら、処刑されるかもしれない…必死でクリストフを演じるテオ。 そんなテオに、何かと構って来る、兄殿下の王太子ランベール。 どうやら、兄殿下と弟殿下は、密な関係の様で…??  BL異世界恋愛:短編(全24話) ※魔法要素ありません。※一部18禁(☆印です) 《完結しました》

かくして王子様は彼の手を取った

亜桜黄身
BL
麗しい顔が近づく。それが挨拶の距離感ではないと気づいたのは唇同士が触れたあとだった。 「男を簡単に捨ててしまえるだなどと、ゆめゆめ思わないように」 ── 目が覚めたら異世界転生してた外見美少女中身男前の受けが、計算高い腹黒婚約者の攻めに婚約破棄を申し出てすったもんだする話。 腹黒で策士で計算高い攻めなのに受けが鈍感越えて予想外の方面に突っ走るから受けの行動だけが読み切れず頭掻きむしるやつです。 受けが同性に性的な意味で襲われる描写があります。

王子と俺は国民公認のカップルらしい。

べす
BL
レダ大好きでちょっと?執着の強めの王子ロギルダと、それに抗う騎士レダが結ばれるまでのお話。

処理中です...