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悪い魔女の力
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マリーンは天真爛漫で、歌が好きなとても綺麗な男の子だった。
魔法を使えば、男の子でも子どもを産めるから、男子であっても家柄重視の繋がりが必要な場合やその子自身が求められた場合には、婚約が取り交わされることがある。
マリーンは一人っ子だったけれど、王子たちの遊び相手として城に上がっている間に、求められて婚約が成立した。
でも、最初は第二王子が相手だったのだ。
トールが入婿として公爵家に入る予定だった。
ある日、ミルポット公爵とマリーンは、王家に呼び出された。
「すまないが公爵。マリーンはリチャードの婚約者にお願いしたい。」
「リチャード様は王太子になられるお方。まさか、王太子をトール様に?」
「そうではない。マリーンを妃に貰いたいのだ。」
「マリーンは一人っ子。うちの妻は体が弱く、もう望めません。うちには後継がおりません。」
「二人の子に公爵を継がせるから!頼む!! 病弱で引っ込み思案のあの子が初めて自分の気持ちを主張したのだ…! 」
マリーンは、父親の隣で俯いて、涙を零した。
「マリーン…。」
父親も息子の気持ちを分かっていた。息子はトールのことが好きで、二人は相思相愛だった。
「…リチャード様には、既に婚約者がおられるでしょう。その方はどうされるのでしょうか。」
「トールは、しばらく婚約者は要らないと言っている。婚約者を交換するようなことはない。その子には責任をもってよい縁談を探すよ。」
泣きながらトールへのお別れの手紙を書き、お城から帰る帰り道。
グレイシャス侯爵にばったりと出会った。
グレイシャス侯爵やリチャード様の婚約者になるはずだった彼の息子に申し訳ない思いがあったため、彼にお茶をと誘われて、二人とも断れなくなった。
「……陛下から伺っておりますよ。うちのビビアンではなく、マリーン様をと。リチャード様の意思でしたら仕方ないですな。全く陛下も子どもに甘い。」
「……すまない。私たちも断ることが出来ず。」
「仕方ないことですよ。臣下であれば、陛下のいうことに反対できるわけがない。」
さ、お茶をどうぞ。最近手に入れた特別なお茶です。
促され、口に含むと。得体のしれない何かを感じた。
一口飲んで、カップを床に落とし、割ってしまう。
「……侯爵…!こ、これはっ……。」
「……うぅっ!」
「ふふふふふ!ははははははははははっ!!!!!」
うずくまる二人に、侯爵は高笑いを浮かべた。
「リチャード様は病弱で頼りないが、必ずゆるぎない王太子に据える!そして、そのとき妃になるのはうちのビビアンだ!!!!!!!」
侯爵は、聞きもしないのに得意そうに恍惚とした表情で語りだした。
優秀で快活なトールを王太子に推す声が年々高まっている。
そのことで、正妃様は心を痛めておられる。
私の魔法の力で、必ずやリチャード様を健康で、誰からも称賛される王太子にしてみせるとお約束している。
それなのに、うちのビビアンでなく、ちょっと声がきれいでかわいいからってその子に鞍替えするとは許せない。
「マリーン。お前の美貌と美しい声を代償に、リチャード様を健康で立派な王太子にする魔法をかけよう。そのお茶は、私の魔法を強化してくれる。誰にも解けない、強力な魔法だ…!!!美貌が損なわれたお前など、リチャード様はきっとそのうち嫌気がさして、うちのビビアンを婚約者に戻すことだろう。」
「侯爵…!!!きさまぁ……ッ!!!!」
「おっと、このことを誰かに言おうものなら言ってみるがいいさ。まあ、できないだろうがね。だってマリーンは声が出せなくなるし、お前はこれから私の傀儡となるのだ。自分で何も考えられない、私の思うままのお人形。そうだ、陛下たちにも同じ魔法をかけよう。それがいい。この国は私のものだ……!!!」
この瞬間、艶やかだった髪は輝きを失くし、顔も別人のようになってしまった。
声も出せない。
父も、侯爵の操り人形。
家に帰宅し、母も家令たちも私たちの代わり様に驚いた。
しかし、どうにもならないこと。騒ぎだてれば、他のものまで魔法で恐ろしい目に遭ってしまうかもしれないことを手紙で書いて伝えた。
突然の代わり様に別人だと思われたくはない。
だけれど、この姿を見られたくない。
前髪で顔を隠し、話すことも出来ず。大好きだった歌も歌えない。
悲しみに打ちひしがれていた時、トールが私にこっそり会いに来てくれた。
私はトールから逃げた。
だって、こんな顔見られたくない。
おでこから目の下あたりまで、焼けただれたような引きつったあざができていた。
まるでガマガエルのような。
でも、トールは私を捕まえて。
そして、顔を見て。
全てを察した。
醜いおでこにキスを落として、抱きしめて。
「マリーン。愛しいマリーン。僕が何年かかっても、きっと君たちにかけられた魔法を解いてみせるから!だから、待っていて。」
魔法を使えば、男の子でも子どもを産めるから、男子であっても家柄重視の繋がりが必要な場合やその子自身が求められた場合には、婚約が取り交わされることがある。
マリーンは一人っ子だったけれど、王子たちの遊び相手として城に上がっている間に、求められて婚約が成立した。
でも、最初は第二王子が相手だったのだ。
トールが入婿として公爵家に入る予定だった。
ある日、ミルポット公爵とマリーンは、王家に呼び出された。
「すまないが公爵。マリーンはリチャードの婚約者にお願いしたい。」
「リチャード様は王太子になられるお方。まさか、王太子をトール様に?」
「そうではない。マリーンを妃に貰いたいのだ。」
「マリーンは一人っ子。うちの妻は体が弱く、もう望めません。うちには後継がおりません。」
「二人の子に公爵を継がせるから!頼む!! 病弱で引っ込み思案のあの子が初めて自分の気持ちを主張したのだ…! 」
マリーンは、父親の隣で俯いて、涙を零した。
「マリーン…。」
父親も息子の気持ちを分かっていた。息子はトールのことが好きで、二人は相思相愛だった。
「…リチャード様には、既に婚約者がおられるでしょう。その方はどうされるのでしょうか。」
「トールは、しばらく婚約者は要らないと言っている。婚約者を交換するようなことはない。その子には責任をもってよい縁談を探すよ。」
泣きながらトールへのお別れの手紙を書き、お城から帰る帰り道。
グレイシャス侯爵にばったりと出会った。
グレイシャス侯爵やリチャード様の婚約者になるはずだった彼の息子に申し訳ない思いがあったため、彼にお茶をと誘われて、二人とも断れなくなった。
「……陛下から伺っておりますよ。うちのビビアンではなく、マリーン様をと。リチャード様の意思でしたら仕方ないですな。全く陛下も子どもに甘い。」
「……すまない。私たちも断ることが出来ず。」
「仕方ないことですよ。臣下であれば、陛下のいうことに反対できるわけがない。」
さ、お茶をどうぞ。最近手に入れた特別なお茶です。
促され、口に含むと。得体のしれない何かを感じた。
一口飲んで、カップを床に落とし、割ってしまう。
「……侯爵…!こ、これはっ……。」
「……うぅっ!」
「ふふふふふ!ははははははははははっ!!!!!」
うずくまる二人に、侯爵は高笑いを浮かべた。
「リチャード様は病弱で頼りないが、必ずゆるぎない王太子に据える!そして、そのとき妃になるのはうちのビビアンだ!!!!!!!」
侯爵は、聞きもしないのに得意そうに恍惚とした表情で語りだした。
優秀で快活なトールを王太子に推す声が年々高まっている。
そのことで、正妃様は心を痛めておられる。
私の魔法の力で、必ずやリチャード様を健康で、誰からも称賛される王太子にしてみせるとお約束している。
それなのに、うちのビビアンでなく、ちょっと声がきれいでかわいいからってその子に鞍替えするとは許せない。
「マリーン。お前の美貌と美しい声を代償に、リチャード様を健康で立派な王太子にする魔法をかけよう。そのお茶は、私の魔法を強化してくれる。誰にも解けない、強力な魔法だ…!!!美貌が損なわれたお前など、リチャード様はきっとそのうち嫌気がさして、うちのビビアンを婚約者に戻すことだろう。」
「侯爵…!!!きさまぁ……ッ!!!!」
「おっと、このことを誰かに言おうものなら言ってみるがいいさ。まあ、できないだろうがね。だってマリーンは声が出せなくなるし、お前はこれから私の傀儡となるのだ。自分で何も考えられない、私の思うままのお人形。そうだ、陛下たちにも同じ魔法をかけよう。それがいい。この国は私のものだ……!!!」
この瞬間、艶やかだった髪は輝きを失くし、顔も別人のようになってしまった。
声も出せない。
父も、侯爵の操り人形。
家に帰宅し、母も家令たちも私たちの代わり様に驚いた。
しかし、どうにもならないこと。騒ぎだてれば、他のものまで魔法で恐ろしい目に遭ってしまうかもしれないことを手紙で書いて伝えた。
突然の代わり様に別人だと思われたくはない。
だけれど、この姿を見られたくない。
前髪で顔を隠し、話すことも出来ず。大好きだった歌も歌えない。
悲しみに打ちひしがれていた時、トールが私にこっそり会いに来てくれた。
私はトールから逃げた。
だって、こんな顔見られたくない。
おでこから目の下あたりまで、焼けただれたような引きつったあざができていた。
まるでガマガエルのような。
でも、トールは私を捕まえて。
そして、顔を見て。
全てを察した。
醜いおでこにキスを落として、抱きしめて。
「マリーン。愛しいマリーン。僕が何年かかっても、きっと君たちにかけられた魔法を解いてみせるから!だから、待っていて。」
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