俺がお前を王にしてやる―隠れオメガクイーンは勇者様―

竜鳴躍

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甲斐甲斐しいお兄様

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「兄上……。毎日助かることは助かるのだが。」


アキレスは書類仕事の途中で顔をあげた。


「?」

目の前の美丈夫は40代になるというのに、いまだに若々しく美しい。

アキレスの方が年下なのに、兄の方が年下に見える。

パーツの一つ一つは殆ど一緒でも、全体の雰囲気を母に似た兄は、どこか中性的に見える。


「もうだいぶ体の調子はよくなった。いつまでも公爵が私の補佐官だとジョシュアンに悪い。」


「ジョシュアンは優秀だし、私だって家にいるときは仕事をしているよ。ちゃんと回せているから心配しないで大丈夫だよ。」

書類の束を整理して、処理がしやすいように分類する彼の指はアキレスの剣だこのある指と違って繊細で細い。




「あの……。兄上は本当に結婚されないのか?」



公爵はきょとんとして睫毛をぱちぱちする。



「今更結婚しても…。」


確かにそういわれてしまえばそうだけども。
ましてや、兄は自分のために生殖機能を捨ててしまった人だ。


「俺ももう結婚はいい。アイツらが落ち着いたらアーサーに王位を渡して、隠居しようと思うけど……、その時に誰かパートナーを傍に置くつもりはない。ましてや、兄上は傍に置かない。俺はさ、幸せだよ。愛する人と結婚して子どもが生まれて、またその子が結婚して、幸せに笑っているんだから。お兄様、もう何にも縛られる必要はない。その時がもしきたら、遠慮しなくていいからな。」






うーん。

確かに質のいい薬も今はあるし、第二の性のせいで暴走する心配もない。

幸せ…。しあわせ、ねぇ。


リングス公爵は馬車で公爵領に戻りながら、ぼうっと窓の外を見て考えた。


(なってもいいんだろうか。誰かの妻に。)

言われてみれば考えないようにしていたが、自分はずっと誰かの妻になって愛されたかったのかもしれない。

漫画で気を紛らわせていたけど……。



「でも今更ねぇ…。」


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