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漢を見せるとき

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スパイスの目は虚ろで、かくんと首を曲げ、口から得体のしれない化け物が姿を現す。


(めんどくせぇ!スパイスを殺すのは違うと思うし…!それにっ……!)



もうだいぶ薬を飲んでいない。

まだ本格的なヒートじゃないが、いつ来てもおかしくない。


だんだん、思考ができなくなっていく。


体の熱があがる。



まずい。


もうすぐヒートが来る。





運命の番の前でヒートが来たら結果は分かり切っている。
俺の気持ちはどうであれ、体中の力が抜けて、愛されることしか考えられなくなってしまうのだ。

早く逃げなきゃ……。




「ふフふ、ローゼっ……」


周りには棚があり、壺や瓶に保管された色とりどりの香辛料がある。
ここで暴れて、貴重な香辛料をダメにしたくない。


隙をついて、外へ飛び出す。



(少しでも開けたところへ!)



跳ねて、ビリヤニ伯爵領の所有する原野の方向へ逃げる。
転移魔法………は、今使える程頭はクリアじゃない。



何とか原野へ………




森と木が見えて安心したのもつかの間、足首に『影』が巻き付き、俺は草の上にたたきつけられ、少し引きずられた。

「…………ッ!」



「フフふフフふフフふフ!つかマえタ♡」

――――――――異形。


体の半分を影が巻き付き、表情が笑顔で固定されている。


「フフ、ふうフになロう♡」




や、やば……っ。


運命の番のフェロモンが、否が応でも押し寄せ、ヒートの発現を加速させる。


俺が、俺が好きなのはアーサーなのに!










「ホーリー!」





「ギャアっ!」

があたりを照らし、魔のモノを焼く音がつづく。


「ローゼッ!助けに来たよ!」




ああ。

もう、惚れ直すじゃないか。



「ありがとう、アーサー。」


弱気なはずの彼が、どれだけの勇気を振り絞ったのだろう。
逞しい背中にそれだけで嬉しい。


彼の手に支えられ、立ち上がろうとすると、ぐいっと体を引き寄せられた。

突然のキス。



「あアあああ!!!?ローゼは、オれのモノダァ!!!!ゆ、ユルセン!」



ううん、ちがう。



「具合はよくなった?ローゼ。」


「ああ!」


口移しで飲ませてもらった薬。頭が冴える。



さぁ。カタをつけるか!アーサーが漢をみせた。俺も見せなくちゃな!
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