上 下
19 / 78

実の弟が運命の番だった

しおりを挟む
「ソーン・リストレイン。」


城がガタガタと揺れ、大理石の床が割れて、巨大な薔薇の茨が蠢き、のびていく。


「!!?」


「ぎゃぁあ!」

「きゃあ!」


イスリスたちは態勢を崩し、その間にアキレスは消えた。



いや。



のびた茨の蔦に守られるように、アキレスはいる。

そして、そこにはアキレスの兄であるハムスト=リングスの姿があった。



「運命の神よ。運命の番は絶対で、人は運命を変えられないと言いましたね。だが、『運命』を否定するしかない場合もあるのです。ご存じでしょうが、私の『運命の番』はこのアキレスだった。」

蔦に守られ、肩で息をするアキレスは、その瞳を大きく開けて私を見る。


驚いただろう。軽蔑しただろうか。



実の兄弟。
結ばれるなど獣の所業。

それなのに、私の『運命』は弟だった。

弟の腕に抱かれたいと願ってしまった。
まだ第二次性徴もきていない子どもの弟に欲情し、夢の中では何度も睦みあう。
その唇を奪い、頬ずりをし、まだ小さな性器を愛でたい。

弟は素直に私を兄だと慕っているというのに、いつ襲ってしまうか気が気でない。
私は第一王子であり、王太子であるがオメガだった。
こんな私は王にはなれない。
奔放なようだけど、あの子にだって王の資質がある。
あの子を襲って兄弟で結ばれ、弟の子を産むようなことはあってはいけない。


だから私は、父に頼んで弟に第二次性徴が来る前に『運命の番』を分からなくする手術を秘密裏に施してもらい、自分には子どもを持てなくなる手術をして、弟と距離をとった。

あの子が大人になり、勇者となって名声をあげたタイミングで王位継承権を放棄して城から出たのだ。


「なる程…………。俺は兄上が大好きだった。そういうわけか。ありがとう、兄上。」


「お前も!運命に逆らったかのか!ちくしょう!俺は運命の神だあっ!」








「運命は押しつけられるものじゃない。選択し、自分で掴み取るんだ。」


ふわっと空気が変わる。

圧倒的なアルファとオメガのフェロモン。



壊れた天井から現れたのは、ローゼとアーサー。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

召喚聖女が十歳だったので、古株の男聖女はまだ陛下の閨に呼ばれるようです

月歌(ツキウタ)
BL
十代半ばで異世界に聖女召喚されたセツ(♂)。聖女として陛下の閨の相手を務めながら、信頼を得て親友の立場を得たセツ。三十代になり寝所に呼ばれることも減ったセツは、自由気ままに異世界ライフを堪能していた。 なのだけれど、陛下は新たに聖女召喚を行ったらしい。もしかして、俺って陛下に捨てられるのかな? ★表紙絵はAIピカソで作成しました。

貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話

タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。 叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……? エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

愛孫と婚約破棄して性奴隷にするだと?!

克全
BL
婚約者だった王女に愛孫がオメガ性奴隷とされると言われた公爵が、王国をぶっ壊して愛孫を救う物語

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

処理中です...