俺がお前を王にしてやる―隠れオメガクイーンは勇者様―

竜鳴躍

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婚約者になったのに

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「やぁ、義理の息子よ。どうだい、王妃教育は進んでいるのかい?進んでいるのだろうね、君のことだから。」


あれから俺と王太子になったアーサーはめでたく婚約者同士となり、俺は王太子の婚約者として将来の王妃教育を受けるため、店の経営をしながら城へ通っている。
イスリスはすっかりメッキが剥がれて塔に押し込められたし、その母親と元ラム伯爵家の一族は平民になって農場へ送られた。
アムール伯爵家は伯爵家のままだけどワイズマン家が乗っ取ったようなもので、伯爵夫人やその子どもたちは特に肩身の狭い想いをしているとか。
カリスはワイズマン家の派遣した事務員の下で事務仕事や営業をさせてみたけれど、全く使い物にならなくて、『アルファの癖に。やっぱりアルファだから優秀だというのは間違ったソースらしいですね。』とベータの職員に言われてブチ切れ、今ではマリアンヌ夫人や妹のマリエッタと一緒にお母様の開発する化粧品や毛髪の染料の治験者になっているようだ。最終的には治るだろうけど、自慢の肌や髪は荒れるだろう。


「ええ、あと1週間もあれば終わるんじゃないですかね。それから陛下、まだアーサーとは『婚約者』ですので…。」

「固いこというな。どうせあっという間に結婚式だ。だが……まあ、そうだな。イスリスの派閥は復権を企んでるし、どうせ大したこたできねぇだろうが、お前の元婚約者は今更お前に執着してるみたいだし。まだまだ波乱は続きそうだ。よその国の王族や有力貴族も、アーサーとの縁談を破談にさせてお前に取り入ろうとしているみたいだぜ。気を付けろよ。」

自分の妃と一応子どもを切り捨てたというのに、全く気にも留めていない。
いや、本当は最初から愛していたのは、アーサーとその母親である前正妃様だったのだ。

にっと笑う陛下は不敵だ。

陛下の仮面を取り払った彼は、先代勇者で、本来王位には彼の兄がつく予定だったのだという。
自由奔放に諸国を渡り、冒険者として名を馳せ、婚約者の公爵令嬢をヒーラーにして連れまわし(いや、聖女たる彼女が望んでいたのかもしれないが)、気が付けば名誉を得てしまい、国民の人気が後押しして、兄から王位を奪ってしまう形になった。


「はぁ…。それ程先を見通せて、どうしてラム伯爵家から妃をとったんです。側妃をとるにせよ、もっとマシな家もあったでしょうに。」


「仕方ねぇだろ?それが最善な未来だったんだ。結局、オデットは早逝しちまったけどさ。」


聖女・オデット。スワン公爵家の令嬢で、聖女…。アーサーの母親。

『未来』とはいったい。陛下は先読みができるのか?


「俺は特異点だ。何度もやり直しをしているんだよ。やりすぎてもうやり直しはできないけどな。」

別の誰かが特異点になれば別かもしれないが…。と陛下は呟いた。

陛下でなければ頭がおかしくなったかとしか思われない言葉だ。


「特異点?」


「そうだ。ある時間軸では、アーサーの性格はあんなふうじゃなかったさ。どちらかといえば俺に似ていたかな。あいつの自尊心を砕き、自信をなくさせたのはラム伯爵家の陰謀であり、オディールやイスリスだ。おっと、わかっているならなんで助けなかったか、っていいたそうだな?あいつらをどうにかしようとしたことはあったぞ?だけど、どんなに手を尽くしてもアーサーは暗殺されてしまった。オデットもそうだ。オディールと結婚をしないようにしたこともある。だが、あれらはライバルになりそうな令嬢を害していったし、オデットもその過程で少女時代に殺されてしまった。妃にだけしてイスリスを作らないようにしても、その場合もオデットとアーサーは殺された。結局、国民や本当に大事なものへの被害を最小限にするためには、大人しく妃にして、監視するしかなかった。」

因みに、あんな女抱けるわけがないから、幻覚を見せて男娼に抱かせたんだけどな。


「はぁ。イスリスは陛下の子ではなかったのですね。」


「本当は俺の子じゃなく男娼の子だと教えてやらなかっただけでも感謝してほしい。」





陛下と別れ、俺はアーサーのもとへ行く。

婚約者だからな。

お茶会だ。




「や、やぁ、ろ、ろーぜっ。」


前髪を綺麗に整えて、王子様然とした美形がいるが、性格というものはそんなに簡単に直るものではない。

たとえ、歪められたものだとしても。


菫色の瞳はまっすぐ俺を見つめるが、どこかオドオドしている。

白い生地に金糸で縁取られた衣服は上質で、シミやほつれ一つなく、彼を侮っていたラム伯爵の息がかかった使用人は全て解雇され、入れ替えられたことが分かった。


彼の母親がつくった薔薇園のテーブルセットに腰掛けようとすれば、彼は自ら椅子を引いてくれた。


「会いたかったよ、アーサー。聞いてくれ、見立てではあと1週間で妃教育も終わる。」

「すごい!さすがローゼは優秀だね!」


「だから、結婚式もすぐにできる。式の準備さえできればね。」

「ち、父から3か月後はどうかと。僕たちも参列者も準備が必要、だから、って…。それで、ね、あの…。」


「ふふ。アーサーは本当に可愛い。」真っ赤に熟れて。トマトみたいだ。


「かっ、かわっ…。」はわわわ!


「……俺のことはどう思ってるの?」


「………ローゼは、きれい…。」


すっと手を握る。


「俺たちの結婚式の準備について、話そう?アーサーの宮に連れて行ってよ。」


「う、うん…。」


手を繋いで。すこし冷えてきた庭を後にする。

お揃いの服を着て、アクセサリーをつけて。みんなから祝福されて、素敵な結婚式にしよう。



「婚約者なんだから、キスくらいしてもいいんだよ?」

「えっ。」


がんばります、と答えが返って来た。


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