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カルテ1:熱を出したら小型犬になりました。

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「くしゅ!」


あぁ~。躰が熱っぽい…。

頭、がんがんする……。


行きたくないなぁ。


布団からもぞもぞ顔を出し、目の前にある時計を見る。

お日様はカーテンの隙間から存在を主張していて。



だるい。

行きたくないけど。

今日行かないとやばい。


重い体を引きずるように、白犬狛はベッドから降りた。


1LDKの狭いアパート。

実家は飛行機と船を乗り継いでいかなければならない、田舎の小さな島だ。


島の入口に赤い鳥居があって、そこをくぐらなければ島には入れない。

自然が豊かで、どこかノスタルジックなところだけど、生活に不自由はない。

だが、なぜか島には風習があって。

1度はみな、島の外に出るのだ。


殆どの者が、大学進学で島を離れ、そしてお婿さんかお嫁さんを連れて島へ戻る。



狛はこの春、東京の大学の農学部へ入学したばかりだ。

お母さん似のふわふわした髪の毛はつやつやのサラサラだし、お父さん似の円らな大きな目鼻立ちは美人だと褒められるが、そのせいか得をすることもあれば、損をすることもあった。

在学中に俺だって伴侶を見つけたい。
デートしたり、エッチなことだって関心はある。

顔が良いのは伴侶を見つけるのに有効だ。
だが、絡まれるのだ。





同じ大学の男。学部は知らんが、同じ学年で、共通科目の講義でいつも一緒になる。

猿田彦文。

いつも眠そうな顔をして、実際居眠りしたりしているくせに、いつもテストの点が良い。

それに、俺よりモテる!


俺の知らないところでモテてくれればいいのに、こいつは俺に絡んでくる。

お前が俺に寄ってくるから、俺がモテないんだよ!




今日はテストがあるんだ。

単位もそうだけど、絶対に負けられない…!




熱を押して大学へ行った俺は、ものすごく後悔することになる。








(あれ……?)

なんとかテストを終えて、気が抜けたのか倒れてたみたい?

その割には目線がおかしいような…。


なんで椅子の上にいるのだろう?

しかも服の上?

え?


俺って今、裸なの????!!



思わず服を寄せようと、伸ばした手を見て驚愕する。


「え………」




毛並みの良い白い毛におおわれた、小さな犬の手。

手のひら、のはずが肉球があり。




なんで俺が犬になってるの―――――――――――――――!!!!!?
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