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番外編
元影の妃5 妃 ややR?
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セレモニーで見かける陛下と妃は、鎖で繋がっている。
エン陛下は言った。
「俺がひと時も離れたくないから繋がっている。」
誰とでも平気で床につける人だと眉を顰められたシャーマンは、献身的に夫を支え、真面目に執務に取り組む様子が、やがて、尊敬を集めるようになった。
エン陛下はギア王太子の友人であるだけあって、どちらかといえば理系の人間だった。ロジカルに表やグラフで表したり、収入支出を計算することは得意でも、文章としてまとめたり、法令案を作ったりするのは苦手だった。
そういったことは、シャーマンが上手に作って見せた。
爵位を問わず、本人の能力・資質や人柄、政治思想等を判断して、毎年役人を増やす。
組織がガタガタになった騎士団も、新たな人材を投入した。
エン陛下とシャーマンはトゥルース王国をまねて、教育と医療の無償化を進め、平民の識字率をあげた。
将来の人材確保のために。
次第に国が豊かになり、かつての活気を取り戻し、不貞を疑うような視線がなくなったころ、シャーマンの胎に子が宿り、エンにそっくりな燃えるような赤い髪の男児が誕生した。
もう、鎖は要らない。
そもそも、心と心は初めから繋がっているのだ。
国中が祝い、腕の中の柔らかい存在を見る。
何の穢れも知らない、これから国を背負っていく我が子。
自分なんかが、とはもう言わない。
だって、この子の母親は自分なのだから。
「エン。今夜、しよ。」
にやりと笑って、夫を誘う。
「俺もしたい。」
シャーマンはたくさん子を産もうと思う。
誰が将来、王になるかは分からない。
だが、等しく愛して、王にならなくても、きっと兄弟同士、支え合えるように育てるつもりだ。
「あっ、あ、あぁ…」
今日も寝所からはマットの音と、息遣いが聞こえる。
エン陛下は言った。
「俺がひと時も離れたくないから繋がっている。」
誰とでも平気で床につける人だと眉を顰められたシャーマンは、献身的に夫を支え、真面目に執務に取り組む様子が、やがて、尊敬を集めるようになった。
エン陛下はギア王太子の友人であるだけあって、どちらかといえば理系の人間だった。ロジカルに表やグラフで表したり、収入支出を計算することは得意でも、文章としてまとめたり、法令案を作ったりするのは苦手だった。
そういったことは、シャーマンが上手に作って見せた。
爵位を問わず、本人の能力・資質や人柄、政治思想等を判断して、毎年役人を増やす。
組織がガタガタになった騎士団も、新たな人材を投入した。
エン陛下とシャーマンはトゥルース王国をまねて、教育と医療の無償化を進め、平民の識字率をあげた。
将来の人材確保のために。
次第に国が豊かになり、かつての活気を取り戻し、不貞を疑うような視線がなくなったころ、シャーマンの胎に子が宿り、エンにそっくりな燃えるような赤い髪の男児が誕生した。
もう、鎖は要らない。
そもそも、心と心は初めから繋がっているのだ。
国中が祝い、腕の中の柔らかい存在を見る。
何の穢れも知らない、これから国を背負っていく我が子。
自分なんかが、とはもう言わない。
だって、この子の母親は自分なのだから。
「エン。今夜、しよ。」
にやりと笑って、夫を誘う。
「俺もしたい。」
シャーマンはたくさん子を産もうと思う。
誰が将来、王になるかは分からない。
だが、等しく愛して、王にならなくても、きっと兄弟同士、支え合えるように育てるつもりだ。
「あっ、あ、あぁ…」
今日も寝所からはマットの音と、息遣いが聞こえる。
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