婚約破棄に先手を打った悪役令息は、契約により王太子の側妃という名の奴隷になる

勝負の日

ミリアナは宿にお金を払うと、表情が曇ったままの人形のようなワイルを従えて、外へ出た。


せっかく楽しませてあげようと思ったのに、ワイルは全くタたなかった。

この私が擦ってあげたり、胸に挟んであげたり、いろいろサービスしてもダメだった。




不能かしら。

隣国に逃れたら、ワイルを捨ててしまおう。


ちょっと強めに魅了をかけたら、なにも話せなくなったし、エッチもできないんじゃもういらないわ。


だけど、女の一人旅は物騒だから、隣国に着くまでは一緒にいてもらおう。


ワイルは騎士になっただけあって、意識を操った状態でも、戦闘面では頼りになった。










山道に入り、ミリアナは振り返る。



「全くしつこいわね。」


なんでわかったのよ。







「結界展開！」

レイチェルがミリアナとワイルを囲む。


「ちいぃっ！」

「魅了返し！」

レイチェルの隣に並び立ち、マリアナが魅了の力を解き放った。



「えっ！？？うそ――――


「ワイル！！！！！！！！」


一瞬で正気に戻ったワイルをその腕に抱きしめるため。アーモンドは横から飛び出した。

「アーモンド！」

最愛同士はもう離さないと抱きしめあう。




「くそ！くそ！くそ！！！！！」



「さあ、君の魅了はもう効かない。断罪の時間だ！」



ぎろりと目をむいて、髪を振り乱した女が呪う。


なぜ私だけ幸せになれない。

私は幸せが欲しいだけ。


素敵な男の人と、リッチな暮らしがしたい。


それを願うだけなのに、なんでうまくいかないの。




腹の中でどす黒いオーラが練りあがる。


「うぇ、うぇえええええええええええっ。」



口から黒いタールのようなものを吐き、黒から、魔物が生まれた。