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紛れ込む偽聖女
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聖者の祭りはおもちゃ箱のようにキラキラしていて、貴族も聖女も平民もみんなが楽しみにしているお祭りだ。
季節は収穫の秋を通りこして冬となり、朝晩は空気が冷え、清浄な心地よさがある。
ピンキー男爵の商会は、大量のターキーや祭りのオーナメントを仕入れ、国の活気に一役買っている。
ショックはかき入れ時とばかりに、右へ左へ大忙しだ。
ワイルやアーモンド隊長らも、祭りの警邏で目を光らせている中、例の聖女紛いは紛れていた。
(うふふ。やったわ!)
祭りへ参加して目立てれば、聖女の中でも上等な仕事をきっと回してもらえる。
それに、騎士とお近づきになれるチャンス!
―――――――――でも、そのためには事件が必要よね。
私の聖女の力をアピールするための素敵な事件が。
ミリアナは、出入りの商人にお願いして譲ってもらった『魔物の血』をこっそり舞台の袖に撒いた。
王族などが登壇する舞台だが、だからこそいいのだ。
傷ついた者を、自分が治癒する。
なんて完璧な計画かしら。
ワイルは、舞台袖と屋台の間が持ち場だった。
隣の屋台からぷーんとおいしそうな香りが漂い、ついうっかり食べたくなる。
そこをぐっとこらえ、ワイルはあたりを見回す。
今年の祝福はレイリーがやるのか。
祝福を授ける者は舞台に登壇する。
今思えば、それ程嫌う相手ではない。
おかしなものだ。
どうしてあれほど嫌だったのか。
それはきっと、レイリーには愛や恋がなかったからなのかもしれない。
騎士団に入って鍛えられ、ワイルは大人になった。
季節は収穫の秋を通りこして冬となり、朝晩は空気が冷え、清浄な心地よさがある。
ピンキー男爵の商会は、大量のターキーや祭りのオーナメントを仕入れ、国の活気に一役買っている。
ショックはかき入れ時とばかりに、右へ左へ大忙しだ。
ワイルやアーモンド隊長らも、祭りの警邏で目を光らせている中、例の聖女紛いは紛れていた。
(うふふ。やったわ!)
祭りへ参加して目立てれば、聖女の中でも上等な仕事をきっと回してもらえる。
それに、騎士とお近づきになれるチャンス!
―――――――――でも、そのためには事件が必要よね。
私の聖女の力をアピールするための素敵な事件が。
ミリアナは、出入りの商人にお願いして譲ってもらった『魔物の血』をこっそり舞台の袖に撒いた。
王族などが登壇する舞台だが、だからこそいいのだ。
傷ついた者を、自分が治癒する。
なんて完璧な計画かしら。
ワイルは、舞台袖と屋台の間が持ち場だった。
隣の屋台からぷーんとおいしそうな香りが漂い、ついうっかり食べたくなる。
そこをぐっとこらえ、ワイルはあたりを見回す。
今年の祝福はレイリーがやるのか。
祝福を授ける者は舞台に登壇する。
今思えば、それ程嫌う相手ではない。
おかしなものだ。
どうしてあれほど嫌だったのか。
それはきっと、レイリーには愛や恋がなかったからなのかもしれない。
騎士団に入って鍛えられ、ワイルは大人になった。
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