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ワイルは意外と馴染んでいる
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「ワイルお疲れぇ。武器の手入れと整理よろしくぅ。」
「はい!」
最初はなんで俺がこんなことと思っていたが、アーモンド団長が、新人は最初はやることだと教えてくれたから、雑務も文句を言わずにやった。
自分が使うものが綺麗になるのは嬉しい。
俺が元貴族だと分かっている奴らは、俺に厳しい。
俺は、他に行くところもないから頑張るしかない。
少しずつ強くなったと思うし、少しずつ役目を与えてもらえるようになった。
昔の俺なら考えられないが、同僚とも仲良くやっている。
職位とか関係なかった。
むしろ貴族の騎士よりも、たたき上げで努力をしている彼らの方が強いと思うし、優秀だと思う。
どこにいたって、この国を守っているのは変わりない。
この仕事が誇らしい。
貴族の子息の隊の寮と、俺たちの寮は棟が違う。
今日は遅くまで連続勤務明けのハイテンションで同僚たちと酒を飲み、へべれけになって寮に戻った。
「おい、ワイル。久しぶり。」
ニヤニヤと見知った顔。
どっかの伯爵令息とどっかの子爵令息だったと思う。
俺と一緒に騎士団の入団試験を受けて合格した奴ら。
俺は平民の隊に入ったが、奴らは貴族が中心の部隊に配属になっている。
もちろん俺は平民の寮で、奴らは貴族の寮。
寮同士は棟が別だが、寮に向かうまでの通路は隣り合う。
「元貴族が平民に混じって、泣かされているんじゃないかって思ってたんだが、馴染んでるみたいじゃん。」
「もう、あいつらにヤらせたのか?」
何言ってるんだ。
そりゃあ最初はそんな雰囲気もあったが、奴らはすぐに俺を認めてくれた。
大体、俺なんて抱きたいタイプじゃないだろ?
ウチは長男だけどマイル兄さまの方が小柄で可愛らしい容姿をしてた。
俺は最近は筋肉量が増えて体格がよくなりつつあるとはいえ、平均的な身長でよくある茶色の髪と目の男。
顔は整ってはいると思うけど、それだけだ。
「おい、ふざけるな!」
手を伸ばされて払いのける。
「お前はもう侯爵令息じゃない。俺たちの方が上だ。逆らうのか?」
ニヤニヤと笑う男たちを見て、俺も前はこんなふうだったんだろうなと思った。
「はい!」
最初はなんで俺がこんなことと思っていたが、アーモンド団長が、新人は最初はやることだと教えてくれたから、雑務も文句を言わずにやった。
自分が使うものが綺麗になるのは嬉しい。
俺が元貴族だと分かっている奴らは、俺に厳しい。
俺は、他に行くところもないから頑張るしかない。
少しずつ強くなったと思うし、少しずつ役目を与えてもらえるようになった。
昔の俺なら考えられないが、同僚とも仲良くやっている。
職位とか関係なかった。
むしろ貴族の騎士よりも、たたき上げで努力をしている彼らの方が強いと思うし、優秀だと思う。
どこにいたって、この国を守っているのは変わりない。
この仕事が誇らしい。
貴族の子息の隊の寮と、俺たちの寮は棟が違う。
今日は遅くまで連続勤務明けのハイテンションで同僚たちと酒を飲み、へべれけになって寮に戻った。
「おい、ワイル。久しぶり。」
ニヤニヤと見知った顔。
どっかの伯爵令息とどっかの子爵令息だったと思う。
俺と一緒に騎士団の入団試験を受けて合格した奴ら。
俺は平民の隊に入ったが、奴らは貴族が中心の部隊に配属になっている。
もちろん俺は平民の寮で、奴らは貴族の寮。
寮同士は棟が別だが、寮に向かうまでの通路は隣り合う。
「元貴族が平民に混じって、泣かされているんじゃないかって思ってたんだが、馴染んでるみたいじゃん。」
「もう、あいつらにヤらせたのか?」
何言ってるんだ。
そりゃあ最初はそんな雰囲気もあったが、奴らはすぐに俺を認めてくれた。
大体、俺なんて抱きたいタイプじゃないだろ?
ウチは長男だけどマイル兄さまの方が小柄で可愛らしい容姿をしてた。
俺は最近は筋肉量が増えて体格がよくなりつつあるとはいえ、平均的な身長でよくある茶色の髪と目の男。
顔は整ってはいると思うけど、それだけだ。
「おい、ふざけるな!」
手を伸ばされて払いのける。
「お前はもう侯爵令息じゃない。俺たちの方が上だ。逆らうのか?」
ニヤニヤと笑う男たちを見て、俺も前はこんなふうだったんだろうなと思った。
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