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ニア
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「………やぁ。」
離宮へ戻る途中で、第一王子のニア様に呼び止められ、礼をする。
「君は弟の妃じゃないか。礼はいいよ。」
「…はい。あの、ニア様。体の調子があまりよくないのですか?」
「そうだね。あはは、恐らく知っていると思うけど、私の種は元気がなくて、女性と睦あっても、子はできにくいのだよ。さすがにね、男としてショックでね…。」
「大丈夫ですよ、きっと。できにくいのであって、できないんじゃないのでしょう?きっと何か改善する手立てはありますよ。………病気、であれば治せませんが、僕が癒してみましょうか?」
優しい。押し付けでないところが心地いい。
じゃあ、と男にしては細くてきれいな指が私の肩に触れる。
温かい光が体の中に流れ込み、なんだか体が軽くなる。
躰と一緒に、心も少し軽くなったようだ。
「どうですか?」
マドレーヌとは違う、けれど、この温かさ。
優し気な笑みとは裏腹な赤が首筋にあるのに気付いた。
「君は、ギアに無体を強いられているのか…?」
言葉に詰まり、目が伏せられる。
「ギアのことは――――――
「僕は、あの人の奴隷ですから。」
ギアに何もかも奪われて、少しちょっかいを出せたら少しは意趣返しになってスッキリする。
そう思って、からかうつもりだったのに。
目の前の儚い青年が折れそうで。
これは決して恋ではないが、ニアの本来の持って生まれた正義感に火がついた。
「レイリー!いやだったら嫌だって言っていいんだ!私がなんとかしてやる!」
「え?ちょ!まっ」
ニアはレイリーの手をとると、ずんずん歩いて行った。
目的地は父上!
離宮へ戻る途中で、第一王子のニア様に呼び止められ、礼をする。
「君は弟の妃じゃないか。礼はいいよ。」
「…はい。あの、ニア様。体の調子があまりよくないのですか?」
「そうだね。あはは、恐らく知っていると思うけど、私の種は元気がなくて、女性と睦あっても、子はできにくいのだよ。さすがにね、男としてショックでね…。」
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優しい。押し付けでないところが心地いい。
じゃあ、と男にしては細くてきれいな指が私の肩に触れる。
温かい光が体の中に流れ込み、なんだか体が軽くなる。
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「どうですか?」
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そう思って、からかうつもりだったのに。
目の前の儚い青年が折れそうで。
これは決して恋ではないが、ニアの本来の持って生まれた正義感に火がついた。
「レイリー!いやだったら嫌だって言っていいんだ!私がなんとかしてやる!」
「え?ちょ!まっ」
ニアはレイリーの手をとると、ずんずん歩いて行った。
目的地は父上!
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