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カカオが…
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「カカオ!」
お義父様である公爵様とお義母様が駆けつける。
公爵家の主治医はすぐにカカオを診てくれたけど、体に異常はないらしい。
だけれど、このまま目を覚まさないのでは…。
祈ったのに、カカオは起きなかった。
何故、肝心な時に力が効かないのだろう。
俺は、聖女なんでしょ?
違ったの?!
「お義父さま、ヴィラン王国へ連絡を。最新の医療機器とそれを扱える医師を呼んでください!」
意識がないのでは、衰弱してしまう。
この世界は中世くらいの文明だから、体に異常がなくても、意識不明のまま続けば、水分や栄養を与えることがうまくできずに衰弱させてしまう。
でもきっと、ヴィラン王国だったら!
『フフ………悲しい?ハハ、いい気味だわ……』
覚えがある声が聞こえる。
まさか。
ドス黒い悪意が、カカオの周りを囲んでいた。
『なんだかうまくいかなかったんだけど……。呪い殺そうと思ったら逆にうまくいっちゃった♡………あんたの顔を苦痛に歪めさせてあげるわ!』
「なんでっ、どうして!?俺を狙えばいいだろ!」
『いやぁよ、あなたを狙ったって、あなたってなんだか知らないけど近寄れないし。それに、あなた、自分が攻撃されたってへっちゃらでしょ!昔、私がわざとあなたにまともな服がいかないようにしても平気だったし…!無表情でいっつも気持ち悪かったのよ!あなたって、わたしたち家族のこと、家族だって思ってなかったのよね!どうでもよかったから、なにされても平気だったんでしょ!』
「リリアン!?私たちには何も見えないが、何かいるのかい!?」
「ごめんなさい、オリーブです!オリーブがカカオを…!」
「なんてこと!神殿の神官はこんなことにならないようにしたんじゃなかったの!」
俺が――――――――。
「俺が必ずカカオを救います。」
意識のないカカオ。
建てたばかりの新居はまだ荷物が少なくて、俺、寂しいよ。
だってここにはまだカカオとの思い出もないし、カカオの匂いもないから。
カカオがいなかったら俺嫌だよ。
俺、オリーブになんて負けないから。
絶対に負けないから。
黒い、霧の中に囚われた。
「ここはどこだ…。夢、悪い夢でも見ているのか?リリアンが心配してる。早く戻らないと…。」
「ごきげんよう、カカオ。」
リリアンに外見だけはよく似ている金髪の少女がほほ笑む。
似ているのは外見だけで、嫌な空気を漂わせている。
「オリーブだろう。私をどうするつもりだ。私はリリアンのところへ帰る!私は絶対に負けない!お前からリリアンを救ってみせる!」
「ふふ………。」
「何がおかしい?」
「だって、貴方がそれをいう?あいつを救う?貴方が?守る?笑えるわ。」
指をさされた先には鏡がある。
そこに映る私は、不健康そうに眼の下に隈がある、労働者。
ぐちゃぐちゃに真っ赤になった何かを見下ろして、泣き叫んでいる。
「前世のあなたが、あいつを殺したのよ。」
私が??
リリアンを…???
「確かに、ストーンから逃げてリリアンが飛び出した。だけど、鉄の馬車でひいて殺したのは貴方。」
あ、あぁ……
「思い出したかしら。そういうことだから、貴方は前世でかかわりがあったのに、記憶がなかったのかもね。都合が悪い記憶だから。だけど、それだけじゃないわよ。」
オリーブの姿が変わる。
手足が伸び、スラリと。
女性らしい丸みの帯びたラインではない。
若草色のスーツを着た、美しい青年の姿に変わった。
「第二王子グレー=トウ=グリム。第一王子ヘンゼル=トゥ=グリムの影のような王子。誰からも期待されないみすぼらしい王子。貴方、私と共犯者だったじゃないですか。」
知らない。
覚えていない。
その名は。
その名は…。
「貴方があいつを八つ裂きにしたんですよ?愚かな王子様。リリアンの前の前。前回も聖女だったあいつを。」
うわぁあああ……!
「ふふふふふ……苦しめばいい。貴方はきっとアイツが助けるし、すぐに私は消されるだろう。今度こそ、跡形もなく。だけど、もう貴方はリリアンのもとに帰れる?帰って前のように愛せる?貴方にその資格はある??ふふふ…っ。苦しめばいい!お前も、リリアンも!!!」
(私の嘘を、今更誰も分かることはないのだから…。)
お義父様である公爵様とお義母様が駆けつける。
公爵家の主治医はすぐにカカオを診てくれたけど、体に異常はないらしい。
だけれど、このまま目を覚まさないのでは…。
祈ったのに、カカオは起きなかった。
何故、肝心な時に力が効かないのだろう。
俺は、聖女なんでしょ?
違ったの?!
「お義父さま、ヴィラン王国へ連絡を。最新の医療機器とそれを扱える医師を呼んでください!」
意識がないのでは、衰弱してしまう。
この世界は中世くらいの文明だから、体に異常がなくても、意識不明のまま続けば、水分や栄養を与えることがうまくできずに衰弱させてしまう。
でもきっと、ヴィラン王国だったら!
『フフ………悲しい?ハハ、いい気味だわ……』
覚えがある声が聞こえる。
まさか。
ドス黒い悪意が、カカオの周りを囲んでいた。
『なんだかうまくいかなかったんだけど……。呪い殺そうと思ったら逆にうまくいっちゃった♡………あんたの顔を苦痛に歪めさせてあげるわ!』
「なんでっ、どうして!?俺を狙えばいいだろ!」
『いやぁよ、あなたを狙ったって、あなたってなんだか知らないけど近寄れないし。それに、あなた、自分が攻撃されたってへっちゃらでしょ!昔、私がわざとあなたにまともな服がいかないようにしても平気だったし…!無表情でいっつも気持ち悪かったのよ!あなたって、わたしたち家族のこと、家族だって思ってなかったのよね!どうでもよかったから、なにされても平気だったんでしょ!』
「リリアン!?私たちには何も見えないが、何かいるのかい!?」
「ごめんなさい、オリーブです!オリーブがカカオを…!」
「なんてこと!神殿の神官はこんなことにならないようにしたんじゃなかったの!」
俺が――――――――。
「俺が必ずカカオを救います。」
意識のないカカオ。
建てたばかりの新居はまだ荷物が少なくて、俺、寂しいよ。
だってここにはまだカカオとの思い出もないし、カカオの匂いもないから。
カカオがいなかったら俺嫌だよ。
俺、オリーブになんて負けないから。
絶対に負けないから。
黒い、霧の中に囚われた。
「ここはどこだ…。夢、悪い夢でも見ているのか?リリアンが心配してる。早く戻らないと…。」
「ごきげんよう、カカオ。」
リリアンに外見だけはよく似ている金髪の少女がほほ笑む。
似ているのは外見だけで、嫌な空気を漂わせている。
「オリーブだろう。私をどうするつもりだ。私はリリアンのところへ帰る!私は絶対に負けない!お前からリリアンを救ってみせる!」
「ふふ………。」
「何がおかしい?」
「だって、貴方がそれをいう?あいつを救う?貴方が?守る?笑えるわ。」
指をさされた先には鏡がある。
そこに映る私は、不健康そうに眼の下に隈がある、労働者。
ぐちゃぐちゃに真っ赤になった何かを見下ろして、泣き叫んでいる。
「前世のあなたが、あいつを殺したのよ。」
私が??
リリアンを…???
「確かに、ストーンから逃げてリリアンが飛び出した。だけど、鉄の馬車でひいて殺したのは貴方。」
あ、あぁ……
「思い出したかしら。そういうことだから、貴方は前世でかかわりがあったのに、記憶がなかったのかもね。都合が悪い記憶だから。だけど、それだけじゃないわよ。」
オリーブの姿が変わる。
手足が伸び、スラリと。
女性らしい丸みの帯びたラインではない。
若草色のスーツを着た、美しい青年の姿に変わった。
「第二王子グレー=トウ=グリム。第一王子ヘンゼル=トゥ=グリムの影のような王子。誰からも期待されないみすぼらしい王子。貴方、私と共犯者だったじゃないですか。」
知らない。
覚えていない。
その名は。
その名は…。
「貴方があいつを八つ裂きにしたんですよ?愚かな王子様。リリアンの前の前。前回も聖女だったあいつを。」
うわぁあああ……!
「ふふふふふ……苦しめばいい。貴方はきっとアイツが助けるし、すぐに私は消されるだろう。今度こそ、跡形もなく。だけど、もう貴方はリリアンのもとに帰れる?帰って前のように愛せる?貴方にその資格はある??ふふふ…っ。苦しめばいい!お前も、リリアンも!!!」
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