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コネクト=シガレット

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私はコネクト=シガレット。

私と同年にはストーン王太子殿下にカカオ公爵令息がいる。


私は子どもの頃から出来がよくて、父は王太子の側近に!と息巻いていたが、それはかなわなかった。
父は、呪詛のように『我が家が悪魔を生んだ家系だからか…!』と言っていたけど、その頃は何を言っているのか分からなかった。

私がもうすぐ7歳になろうとするとき、母が弟と妹を生んだ。

双子の出産は危険で、弟の方は一時心臓が止まってしまった。
でも、奇跡的に命を取り留めた。


お腹の中にいるときから楽しみにしてた。
生まれたら何をしてあげようかって。


妹はベータ、弟はオメガだった。


第二次性徴が始まるまでは大丈夫だと思ったけど、兄弟で万が一があってはいけないからという理由で、アルファの私はリリアンと関わることを止められた。

私も弟を襲いたくはないから従った。

でもそれは建前だったらしいと気づいたのは、それからすぐのことだった。

オリーブのことを溺愛するベータの母親は、その割にリリアンに愛情を全く見せなかった。
母にとってリリアンは、気味が悪い悪魔の子。

ケイトというまだ若い美しい女性が、母親代わりでリリアンを育てていた。

父にとっては、リリアンはいつ亡くなるか分からない子どもで、私のスペアにもなりえない子ども。
そして、憎むべき存在だったらしい。

私は父から、シガレット家の歴史を聞かされた。


それって、リリアンは悪くないですよね?
同じことが起きたら……と構える心情はわかるけど、リリアンは凄くいい子で、けして誰かの相手に横恋慕したり、自分の欲のために誰かを唆したりしてライバルを排除しようなんて、恐ろしい性格ではないと思う。

むしろ、オリーブや母の方が…。

そういうことをしたのは男オメガだからではなく、この家門に流れる性質なのだと思った。

私に甘えてくるオリーブが、私は苦手だ。




リリアンが3歳になり、衣服が気になって来た。
1歳2歳のリリアンは、オリーブが着ない色や好まなかったデザインの服をそのまま与えられていたと思うが、3歳になっても両親はリリアンのためには衣装屋を呼ばなかった。

使用人の子が着ていたような古着を着ているリリアン。

清潔にしてはいたが、いくらなんでもおかしい。
両親に言おうとしたが、言葉が口から出て来なくて、リリアンの侍女に私の服をあげた。
手先の器用そうな人だから、リリアンのために直してくれるだろう。


食事の時、1人だけ離れた席に座るリリアンが、自分の服をリメイクして着てくれているのを見ると、嬉しい気持ちになった。



リリアンが気になって、よく見てみると、表情は無だが、感情は豊かだ。
なにを考えているかもわかるし、とても利発な子だ。

リリアンが6つの年、学園に上がった。


私の成績は公爵令息の次。次席らしい。
私は勉強ができたが、剣術の才能もそこそこあったようだ。


私は綺麗な顔立ちらしい。令嬢に人気があるのだそうだ。
伯爵令息ならば、届きやすい位置なのだろう。


休みの度にリリアンを書庫で見かける。
リリアンの読んでいる本は、大人が読むような専門書だ。
私など足元にも及ばないような天才なのだ。

アルファであったならば。
私などよりよほど当主に相応しいのに、と思った。


気が付けば、母がリリアンを商人に売り払っていた。
リリアンの戸籍がないことも、この時初めて知った。
リリアンの香りで対外的にはオリーブをオメガだと偽っていることも。

何考えてるんだ、父は!
犯罪だぞ!



とうとう、明るみになった時、ここだと思った。

私は父から当主の座を奪い、田舎に追いやった。


そして、妹を矯正しようとして、できなかったのだ。




やらかした責任は当主がとらなければならない。
あんな妹でも、命をとられるのは忍びない。
牢から出たら、修道院に入れてほしいと殿下にお願いした。

そして私は、騎士団の性奴隷として、ある夜、彼らの詰所に投げ込まれたのだった。
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