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男が怖い<後編>

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「それにしても…。王族相手にも商売をうまくやれているようだからと、仕事がしやすいようにお前に当主代理の権限を与えておくのではなかったな。答えが同じにせよ、ちゃんと了解をとってから行動しなさい。」

「大変申し訳ございません。」

「…まあ、緊急だったのだろう。私も宰相として城に出ずっぱりだったからな。」


「大変です!坊ちゃま!リリアン様が!」


駆け込んできた若い侍従に、悪い予感がした。









「ひゅーっ、ひーっ、ひーっ、」

「リリアン!しっかりして!リリアン!!」


息苦しそうに青い顔には汗。
絨毯の上に横向きに倒れこむリリアンの側でカカオが必死に声をかける。


「あ、あぁ……。」

壁際には部屋への案内を言づけた侍従が壁に背を預けるようにして狼狽していた。


「何があったんだ、カカオ?!」


「リリアンが服をリメイクして…。だからそこの侍従が早速着替えさせようと…。着替えは見ないほうがいいと思って席を外したんだ!リリアンの事情は知っていたのに…!自分にとっては当たり前のことだったから……!!」

しっかり者のカカオだが、まだ12歳なのだ…。はらはらと泣きながらもリリアンに呼びかける。


「申し訳ございませんっ!!」
謝り続ける侍従。
彼に注意をしていなかったこちらの落ち度。彼には申し訳ないことをした。


「坊ちゃま!ドクターが来ました!」


駆けつけたドクターは眼鏡の男。ダメだ。


「ダメだ、これは精神的なものだ!シガレット伯爵家とブルックリン男爵家の間の道を探し、ブルックリン男爵家には急ぎ使いを出せ!ケイト=ブルックリン男爵夫人を一刻も早く連れてくるんだ!カカオ、お前はリリアンの運命の番だ。まだ幼く認識できていなくても、お前が声をかけ、背中をさすってやれ。お前なら大丈夫だ!」


「う、うん…!!」


だいじょうぶ、僕はここにいるよ、リリアン。だいじょうぶ、だいじょうぶだから…!



声変り前の少年の声を震わせ、愛しい番に語り掛ける。


なんでこんなトラウマを抱えているか分からないが、男性に恐怖を感じるらしいリリアン。
虐待まではいかなくても冷遇されてきたリリアン。
リリアンの事情は分からないが、この状況を見るに、二人が結ばれるのは難しいのかもしれない。

リリアンは、番の認識ができないどころか、恋愛感情を自覚することが難しいかも。

今は少しでも落ち着き、少しでも早く男爵夫人が駆けつけるのを願うしかない。

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