笑うとリアルで花が咲き泣くと涙が宝石になる化け物の俺は、おひとり様を満喫しようと思っていたのに何故か溺愛されています。

竜鳴躍

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可愛い弟分

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「びっくりするくらい、少ない荷物でしたね。」

カカは、眠ってしまったリリアンを膝の上に乗せて、呟いた。
すぅすぅと寝息を立てて眠っている幼子。

男性、特に身長の高い細身の眼鏡をかけた男を前にすると、一瞬だが体をこわばらせる。

伯爵家の家令がまさにそうで、彼に虐げられているのかと思ったらそうではなかった。

虐待とまでは言い難い、でも、明らかに冷遇はされている。


他の子どもたちはいつも新品の綺麗な服を身に着けているのに、リリアンだけが誰かのおさがり。
ある時は端切れを綺麗に縫い合わせたベストと左右で生地の違うパンツを身に着けていた。

それは、画期的であか抜けていて、思わず声をかけた。

驚くことに、まだ幼い子が自分で作ったと聞いて驚いた。


リリアンの荷物を持ってきてくれた侍女――――――彼女だけが赤ん坊の時からリリアンの側にいてくれたらしいが、彼女に洋裁道具を用意してもらい、自分で縫ったのだという。
先ほど別れた彼女の髪には、ピンクの布でできた髪飾りがあった。

ケイト=ブルックリン男爵夫人だったか。

これを機に暇を貰うと言っていたから、こっちで雇えないか打診してみよう。


「そんなことよりカカオ。そろそろ姉さんからお前を返せと煩いんだが?」

「嫌ですよ。僕が公爵家に戻ったら婚約者がどうのと煩いじゃないですか。それに、あの王太子…、年が近いうえに親戚だからって側近候補の筆頭なんですよ。僕は叔父さんのようにのびのびしたいんです。あのクズの側近なんて死んでもゴメンですし、あんな阿婆擦れたちに言い寄られるなんて考えただけでも鳥肌が立つ。僕はこの子がいいな…。まだ熟してないけど、この子はオメガ。僕のオメガだと思う。ほのかに香る薔薇の香り…、癒される。」


「カカオ。この子、男性恐怖症だろう。ビジネスライクに扱う分には平気のようだが、好意を向けると途端に逃げるだろうよ。無理強いだけはするんじゃないよ。」

「当り前です。まだ大人になるまではたっぷり時間がある。僕のことを好きになって。それからでしょ?」

「ふむ、そうなるだろうと思ってね。リリアンは私の養子にしておいたよ。あいつら、自分の子の出生届も出してなかった。おそらくだが、オリーブ嬢をオメガとして申請している節がある。伯爵も伯爵夫人もオメガの女性には嫌悪感がないようだが、男性に相当の嫌悪感があるね。」

「オメガで男性は珍しいですし…。差別はありますからね。でもだからって出生届を偽るなんて、バレたらたいへんなことになるでしょうに。」

「双子で、リリアンは死にかけていたらしいからね。死亡届を既にだしていたのかもしれないね。」



お茶会にも参加させてもらえず、「存在しない子」として狭い箱に閉じ込められていたリリアン。

新しいおうちについたら、いっぱいお絵描きをしよう。


そして、たくさん服を作ろう。


リリアンが望むように、その才能をのばしてあげたい。


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