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プロローグ
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「榎木さん、お疲れ様です!」
「おつかれさま~!」
「キャー、和哉さんお疲れ様ぁ。今日もえりりんのこと可愛くしてくれてありがとうございましたぁ~!」
テレビ局のスタジオで、仕事仲間やタレントとすれ違う。
俺は局から委託を受けて派遣されている衣装係だ。
局では別の会社から派遣されているメイク係がいるからやらないけれど、メイクアップアーティストでもある。
本日の業務を終えると、もう時計の針は深夜で、電車なんかない。
スタジオ近くの物件は割高だったけど、気ままな独り身はワンルームのアパートで構わない……、そう思って近くに家があって正解だ。
「ふぅ……。夕飯どうしようかなあ。もう遅いしなあ…。コンビニで適当につまむものを買っちゃおうか…。コラボ商品出てたし…。」
もうすぐ30になろうっていう人間が不摂生かなぁ。でもなあ。分かってるんだけどついついコンビニ飯になっちゃうんだよなあ。
俺は綺麗なものが好き。
可愛いものが好き。
子どもの頃から、外を駆けまわるよりも家の中でキラキラするお姫様の物語を読んだり、虫取りよりもお花を摘んで花冠を作ったり押し花やハーバリウムを作る方が好き。
ビーズでアクセサリーを作るのも大好き。
編み物や、縫物だって。
俺はどちらかというと小柄で顔も中性的で、子どもの頃からあまり雰囲気が変わらなくて。
髭面の自分に違和感があって、毎日綺麗に手入れしていたせいもあるかもしれないけど。
だからかな。
男の友人もいたけど、女の子の友人も多かった。
同性愛者?って聞かれたこともあるけどよくわからない。
恋愛感情もよくわからない。
素敵な人は男でも女でも素敵だなって思うし…。
本当はヒラヒラ可愛い衣装を着て、メイクだってしてみたかったけど…、親の目とか勇気が出なくて。
専門学校いって、スタイリスト兼メイクアップアーティストになって、親がホッとしたのを感じた。
俺がゲイなんじゃないかって思ってたんだよね?
女装をしてニューハーフになるんじゃないかって。
いつか男の恋人を連れてくるんじゃないかって。
随分女々しい趣味嗜好だと兄ちゃん姉ちゃんにも言われてきたけど、日本って不思議なもんで、『職業』になった途端バカにされないところがある…。
俺の性嗜好や性が本当のところどうだったのか、それは俺にも分からない。
だって、友達がいて、仕事があって、生活に困らなくて、毎日充実してて、それで俺は充分幸せだった。
だから、どうでもよかったんだ。
それに、自分をどこかの定義に当てはめる必要なんてないんじゃないかって。
自分は自分だから。
「和哉………。」
自分を呼ぶ声にハッとなり、振り返る。
物陰から現れたのは、ひょろっとした高身長の男。
自分が知るより細長く感じるのは、痩せてやつれたからだろうか。
「……い 石井さん……。どうしたんですか?」
女性にモテそうな知的で端正な顔が台無しだ。
眼鏡の下の隈は酷く、目が濁っているような感じで表情がおかしい。
うん、おかしい。
この人はおかしい人だ。
この人は派遣元の社員で元同僚…。
だから俺は逃げたのだ…。上司にお願いして、テレビ局に出向できるように。
この人は都外に異動していたはずなのに。
「和哉くん…酷いよ。僕に黙ってテレビ局に出向するなんて…、あっ、そうか。和哉くんは照れ屋さんだから恥ずかしくなったんだよね。」
き…きもぉ…っ。
「僕にはすぅぐわかったよー♪このドラマの衣装さんは和哉くんだって…。だって和哉君のセンスは輝いてるからね…っ。さ、やっとマンションを買えたんだ。今日から一緒に暮らそう。愛しのハニー…♡」
ハニーってなんだよ!
付き合ってないし!
「い、石井さんっ、やめてくださいっ!」
振り切って走り出す。
そして俺は―――――――
キキィイイイイ!!!!! ガシャン!!
29年の生涯を終えた。
あー、ふわふわ。
あたたかい。
ねむたい。
微睡む目を開けると、視界は不鮮明で。
ん、なんだか体も動かしづらい…。
事故で脊髄でも損傷したのだろうか。
あー…もう仕事できないのかなぁ。
腕は動きそうだ。
ゆっくり持ち上げて、目の前に………。
「ふへ?」
目の前に現れた俺の腕は、どうみても『赤ちゃん』の腕だった。
ももももももももももももしかしてこれは異世界転生とかいうやつでは!?
やったぁ!無双系かなあ?だけど、物騒なのは嫌だなあ。
お股の感覚は前世と変わらないから、多分男の子だと思うんだけど、この世界は男の子が縫物したり刺繍したりすることに寛容なのかな?
お部屋の中はまだよく見えないけど、いい匂いがするし、天井高そうだし、なにより俺が寝かされている布団もふわふわだし、きっと貴族かそうじゃなくても相当の金持ちだと思う!
うへへ…。
この世界の洋服ってどんなかなぁ。
素敵なレースとかあるのかなぁ。
ぽろぽろっ。
(ん?)
い、いま。俺のほっぺから何か落ちた…????
おそるおそる腕を動かして掴むと、それはピンクの薔薇…………
こっ こわ……。
「ふ、ふぇ…。」
恐ろしさに涙がこぼれる。
だが、その涙は、頬を伝う間にダイヤモンドに変わった。
えええええ!!なんなの、これ!
確かに好きでよく読んでた童話とかは、美少女を表す表現として、笑うと頬に花が咲き、瞳からは宝石が……ってよくあったけど!あったけどさぁああ!!
それって比喩表現じゃなかったの!?まじで?リアルに俺のカラダ、花とか石とか生むの!?
俺、化け物じゃん!!!
「おつかれさま~!」
「キャー、和哉さんお疲れ様ぁ。今日もえりりんのこと可愛くしてくれてありがとうございましたぁ~!」
テレビ局のスタジオで、仕事仲間やタレントとすれ違う。
俺は局から委託を受けて派遣されている衣装係だ。
局では別の会社から派遣されているメイク係がいるからやらないけれど、メイクアップアーティストでもある。
本日の業務を終えると、もう時計の針は深夜で、電車なんかない。
スタジオ近くの物件は割高だったけど、気ままな独り身はワンルームのアパートで構わない……、そう思って近くに家があって正解だ。
「ふぅ……。夕飯どうしようかなあ。もう遅いしなあ…。コンビニで適当につまむものを買っちゃおうか…。コラボ商品出てたし…。」
もうすぐ30になろうっていう人間が不摂生かなぁ。でもなあ。分かってるんだけどついついコンビニ飯になっちゃうんだよなあ。
俺は綺麗なものが好き。
可愛いものが好き。
子どもの頃から、外を駆けまわるよりも家の中でキラキラするお姫様の物語を読んだり、虫取りよりもお花を摘んで花冠を作ったり押し花やハーバリウムを作る方が好き。
ビーズでアクセサリーを作るのも大好き。
編み物や、縫物だって。
俺はどちらかというと小柄で顔も中性的で、子どもの頃からあまり雰囲気が変わらなくて。
髭面の自分に違和感があって、毎日綺麗に手入れしていたせいもあるかもしれないけど。
だからかな。
男の友人もいたけど、女の子の友人も多かった。
同性愛者?って聞かれたこともあるけどよくわからない。
恋愛感情もよくわからない。
素敵な人は男でも女でも素敵だなって思うし…。
本当はヒラヒラ可愛い衣装を着て、メイクだってしてみたかったけど…、親の目とか勇気が出なくて。
専門学校いって、スタイリスト兼メイクアップアーティストになって、親がホッとしたのを感じた。
俺がゲイなんじゃないかって思ってたんだよね?
女装をしてニューハーフになるんじゃないかって。
いつか男の恋人を連れてくるんじゃないかって。
随分女々しい趣味嗜好だと兄ちゃん姉ちゃんにも言われてきたけど、日本って不思議なもんで、『職業』になった途端バカにされないところがある…。
俺の性嗜好や性が本当のところどうだったのか、それは俺にも分からない。
だって、友達がいて、仕事があって、生活に困らなくて、毎日充実してて、それで俺は充分幸せだった。
だから、どうでもよかったんだ。
それに、自分をどこかの定義に当てはめる必要なんてないんじゃないかって。
自分は自分だから。
「和哉………。」
自分を呼ぶ声にハッとなり、振り返る。
物陰から現れたのは、ひょろっとした高身長の男。
自分が知るより細長く感じるのは、痩せてやつれたからだろうか。
「……い 石井さん……。どうしたんですか?」
女性にモテそうな知的で端正な顔が台無しだ。
眼鏡の下の隈は酷く、目が濁っているような感じで表情がおかしい。
うん、おかしい。
この人はおかしい人だ。
この人は派遣元の社員で元同僚…。
だから俺は逃げたのだ…。上司にお願いして、テレビ局に出向できるように。
この人は都外に異動していたはずなのに。
「和哉くん…酷いよ。僕に黙ってテレビ局に出向するなんて…、あっ、そうか。和哉くんは照れ屋さんだから恥ずかしくなったんだよね。」
き…きもぉ…っ。
「僕にはすぅぐわかったよー♪このドラマの衣装さんは和哉くんだって…。だって和哉君のセンスは輝いてるからね…っ。さ、やっとマンションを買えたんだ。今日から一緒に暮らそう。愛しのハニー…♡」
ハニーってなんだよ!
付き合ってないし!
「い、石井さんっ、やめてくださいっ!」
振り切って走り出す。
そして俺は―――――――
キキィイイイイ!!!!! ガシャン!!
29年の生涯を終えた。
あー、ふわふわ。
あたたかい。
ねむたい。
微睡む目を開けると、視界は不鮮明で。
ん、なんだか体も動かしづらい…。
事故で脊髄でも損傷したのだろうか。
あー…もう仕事できないのかなぁ。
腕は動きそうだ。
ゆっくり持ち上げて、目の前に………。
「ふへ?」
目の前に現れた俺の腕は、どうみても『赤ちゃん』の腕だった。
ももももももももももももしかしてこれは異世界転生とかいうやつでは!?
やったぁ!無双系かなあ?だけど、物騒なのは嫌だなあ。
お股の感覚は前世と変わらないから、多分男の子だと思うんだけど、この世界は男の子が縫物したり刺繍したりすることに寛容なのかな?
お部屋の中はまだよく見えないけど、いい匂いがするし、天井高そうだし、なにより俺が寝かされている布団もふわふわだし、きっと貴族かそうじゃなくても相当の金持ちだと思う!
うへへ…。
この世界の洋服ってどんなかなぁ。
素敵なレースとかあるのかなぁ。
ぽろぽろっ。
(ん?)
い、いま。俺のほっぺから何か落ちた…????
おそるおそる腕を動かして掴むと、それはピンクの薔薇…………
こっ こわ……。
「ふ、ふぇ…。」
恐ろしさに涙がこぼれる。
だが、その涙は、頬を伝う間にダイヤモンドに変わった。
えええええ!!なんなの、これ!
確かに好きでよく読んでた童話とかは、美少女を表す表現として、笑うと頬に花が咲き、瞳からは宝石が……ってよくあったけど!あったけどさぁああ!!
それって比喩表現じゃなかったの!?まじで?リアルに俺のカラダ、花とか石とか生むの!?
俺、化け物じゃん!!!
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