70 / 89
番外編
四葉の花嫁4
しおりを挟む
信じられない。
ワタシが今、クローバーの花嫁としてヴァージンじゃないけどヴァージンロードを歩いているなんて。
テネシー伯爵家の当主様—--キウイ(スティーブ)のお母様のお兄様がワタシをエスコートしてくれる。
昔、戦場に出ていた時。
たまの正装で着ていたような真っ白な回復魔導士の騎士服に近いデザインのそれは、彼と結ばれた時のことを思い出させる。
あの時と違うのは、頭からヴェールをマントのようにひっかけていることと、胸や耳を飾る琥珀。
白い服にはアクセントのように茶色のラインが入っているところかしら。
彼の色に染まれるような白と彼の色を纏えることが嬉しい。
どこから話を聞きつけたのか知らないけど、元実家の面々が呼ばれてもいないのに式に来て、侯爵家の者に追い出されていた。
きっと披露宴にもしゃしゃり出てくるんだろうけど、もうご縁のないことだから。
絶対に侯爵家の敷居は跨がせない。
今生の別れになるけど、回復魔術師の給料も殆ど彼らが使い込んだのだから、それが手切れ金代わりでいいと思うの。
子どもの頃からナヨナヨして気持ち悪いだの、図体は立派なのにだの散々言って、私の学園の成績すら気にしていなかった人たちだもの。
上の兄二人の成績よりよっぽどワタシの方が優秀だったのにね。
それこそクローバーの補助役として、先生が侯爵様に推薦するくらいには。
昔はそれでも両親のために家のために助けになろうと思っていたけど、流石に自分の給料を勝手に使い込まれた上に廃嫡されれば、情も枯れるというものだわ。
兄たちは自分のことばかりで親のことなんかこれっぽっちも考えない。
後になって後悔しても、もう遅い。
ワタシって薄情かしら?親不孝者かしら?
違うわよね。
親を思う心は、この先、テネシー伯爵家やハピネス侯爵の両親に注ぐことにするわ。
神父さんの前で愛を誓い、署名をする。
ステンドグラスとろうそくの光に照らされたクローバーは、あの時より年をとって、すっかりイケオジになったけど、ワタシも同じくらい年をとった。
あの頃は、貴方と結ばれる夢なんて見ちゃいけないって思ってた。
あの頃―――――――。
「アバッキオ=クルトンです。クルトン男爵家の三男です。よろしくお願いいたします。」
まだ今みたいに体は出来上がっていなかったけど、身長も高く、実家の手伝いで子どもの頃から薪割りや畑仕事をしていたワタシは、学園を出たての新人としては、肉付きもいい方だったと思う。
回復魔術師だったけど、それなりに剣術や体術の腕もよかったから、前線でも耐えられる回復魔術師として先生の推薦で、憧れのクローバー=ハピネス侯爵令息の所属する部隊に配属になったのだ!
クローバー様は実直で、正義感にあふれ、とっても素晴らしい人。
傍で呼吸ができるだけで幸せ…。
前線が危険だとか関係ない。
「アバッキオは回復魔術師だって聞いているけれど、きちんと鍛えているんだね。」
見詰められると恥ずかしい!
「実家が貧乏男爵家なので…、家の手伝いで力仕事をしていたから。頑丈さだけが取り柄です!」
「頼りにしているよ。前線で回復魔術師が同行しているというのはとても助かる。戦える回復役は貴重だ。」
あぁ、クローバー様がワタシに微笑んで…。
学園ではずっと隅っこから見てました!
大きな手…。
ワタシの手もたいして大きさは変わらないけど。
あー。いやだな、かわいくないもの。
剣だこ。
クローバー様たくさん頑張ってたものね。
この人の力になろう。
一緒にいて、会話をして、それだけで幸せだった。
だけど、一線を越えちゃったのよね。
ワタシが今、クローバーの花嫁としてヴァージンじゃないけどヴァージンロードを歩いているなんて。
テネシー伯爵家の当主様—--キウイ(スティーブ)のお母様のお兄様がワタシをエスコートしてくれる。
昔、戦場に出ていた時。
たまの正装で着ていたような真っ白な回復魔導士の騎士服に近いデザインのそれは、彼と結ばれた時のことを思い出させる。
あの時と違うのは、頭からヴェールをマントのようにひっかけていることと、胸や耳を飾る琥珀。
白い服にはアクセントのように茶色のラインが入っているところかしら。
彼の色に染まれるような白と彼の色を纏えることが嬉しい。
どこから話を聞きつけたのか知らないけど、元実家の面々が呼ばれてもいないのに式に来て、侯爵家の者に追い出されていた。
きっと披露宴にもしゃしゃり出てくるんだろうけど、もうご縁のないことだから。
絶対に侯爵家の敷居は跨がせない。
今生の別れになるけど、回復魔術師の給料も殆ど彼らが使い込んだのだから、それが手切れ金代わりでいいと思うの。
子どもの頃からナヨナヨして気持ち悪いだの、図体は立派なのにだの散々言って、私の学園の成績すら気にしていなかった人たちだもの。
上の兄二人の成績よりよっぽどワタシの方が優秀だったのにね。
それこそクローバーの補助役として、先生が侯爵様に推薦するくらいには。
昔はそれでも両親のために家のために助けになろうと思っていたけど、流石に自分の給料を勝手に使い込まれた上に廃嫡されれば、情も枯れるというものだわ。
兄たちは自分のことばかりで親のことなんかこれっぽっちも考えない。
後になって後悔しても、もう遅い。
ワタシって薄情かしら?親不孝者かしら?
違うわよね。
親を思う心は、この先、テネシー伯爵家やハピネス侯爵の両親に注ぐことにするわ。
神父さんの前で愛を誓い、署名をする。
ステンドグラスとろうそくの光に照らされたクローバーは、あの時より年をとって、すっかりイケオジになったけど、ワタシも同じくらい年をとった。
あの頃は、貴方と結ばれる夢なんて見ちゃいけないって思ってた。
あの頃―――――――。
「アバッキオ=クルトンです。クルトン男爵家の三男です。よろしくお願いいたします。」
まだ今みたいに体は出来上がっていなかったけど、身長も高く、実家の手伝いで子どもの頃から薪割りや畑仕事をしていたワタシは、学園を出たての新人としては、肉付きもいい方だったと思う。
回復魔術師だったけど、それなりに剣術や体術の腕もよかったから、前線でも耐えられる回復魔術師として先生の推薦で、憧れのクローバー=ハピネス侯爵令息の所属する部隊に配属になったのだ!
クローバー様は実直で、正義感にあふれ、とっても素晴らしい人。
傍で呼吸ができるだけで幸せ…。
前線が危険だとか関係ない。
「アバッキオは回復魔術師だって聞いているけれど、きちんと鍛えているんだね。」
見詰められると恥ずかしい!
「実家が貧乏男爵家なので…、家の手伝いで力仕事をしていたから。頑丈さだけが取り柄です!」
「頼りにしているよ。前線で回復魔術師が同行しているというのはとても助かる。戦える回復役は貴重だ。」
あぁ、クローバー様がワタシに微笑んで…。
学園ではずっと隅っこから見てました!
大きな手…。
ワタシの手もたいして大きさは変わらないけど。
あー。いやだな、かわいくないもの。
剣だこ。
クローバー様たくさん頑張ってたものね。
この人の力になろう。
一緒にいて、会話をして、それだけで幸せだった。
だけど、一線を越えちゃったのよね。
53
お気に入りに追加
820
あなたにおすすめの小説
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
ある日、人気俳優の弟になりました。2
樹 ゆき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。
平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる