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番外編
四葉の花嫁4
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信じられない。
ワタシが今、クローバーの花嫁としてヴァージンじゃないけどヴァージンロードを歩いているなんて。
テネシー伯爵家の当主様—--キウイ(スティーブ)のお母様のお兄様がワタシをエスコートしてくれる。
昔、戦場に出ていた時。
たまの正装で着ていたような真っ白な回復魔導士の騎士服に近いデザインのそれは、彼と結ばれた時のことを思い出させる。
あの時と違うのは、頭からヴェールをマントのようにひっかけていることと、胸や耳を飾る琥珀。
白い服にはアクセントのように茶色のラインが入っているところかしら。
彼の色に染まれるような白と彼の色を纏えることが嬉しい。
どこから話を聞きつけたのか知らないけど、元実家の面々が呼ばれてもいないのに式に来て、侯爵家の者に追い出されていた。
きっと披露宴にもしゃしゃり出てくるんだろうけど、もうご縁のないことだから。
絶対に侯爵家の敷居は跨がせない。
今生の別れになるけど、回復魔術師の給料も殆ど彼らが使い込んだのだから、それが手切れ金代わりでいいと思うの。
子どもの頃からナヨナヨして気持ち悪いだの、図体は立派なのにだの散々言って、私の学園の成績すら気にしていなかった人たちだもの。
上の兄二人の成績よりよっぽどワタシの方が優秀だったのにね。
それこそクローバーの補助役として、先生が侯爵様に推薦するくらいには。
昔はそれでも両親のために家のために助けになろうと思っていたけど、流石に自分の給料を勝手に使い込まれた上に廃嫡されれば、情も枯れるというものだわ。
兄たちは自分のことばかりで親のことなんかこれっぽっちも考えない。
後になって後悔しても、もう遅い。
ワタシって薄情かしら?親不孝者かしら?
違うわよね。
親を思う心は、この先、テネシー伯爵家やハピネス侯爵の両親に注ぐことにするわ。
神父さんの前で愛を誓い、署名をする。
ステンドグラスとろうそくの光に照らされたクローバーは、あの時より年をとって、すっかりイケオジになったけど、ワタシも同じくらい年をとった。
あの頃は、貴方と結ばれる夢なんて見ちゃいけないって思ってた。
あの頃―――――――。
「アバッキオ=クルトンです。クルトン男爵家の三男です。よろしくお願いいたします。」
まだ今みたいに体は出来上がっていなかったけど、身長も高く、実家の手伝いで子どもの頃から薪割りや畑仕事をしていたワタシは、学園を出たての新人としては、肉付きもいい方だったと思う。
回復魔術師だったけど、それなりに剣術や体術の腕もよかったから、前線でも耐えられる回復魔術師として先生の推薦で、憧れのクローバー=ハピネス侯爵令息の所属する部隊に配属になったのだ!
クローバー様は実直で、正義感にあふれ、とっても素晴らしい人。
傍で呼吸ができるだけで幸せ…。
前線が危険だとか関係ない。
「アバッキオは回復魔術師だって聞いているけれど、きちんと鍛えているんだね。」
見詰められると恥ずかしい!
「実家が貧乏男爵家なので…、家の手伝いで力仕事をしていたから。頑丈さだけが取り柄です!」
「頼りにしているよ。前線で回復魔術師が同行しているというのはとても助かる。戦える回復役は貴重だ。」
あぁ、クローバー様がワタシに微笑んで…。
学園ではずっと隅っこから見てました!
大きな手…。
ワタシの手もたいして大きさは変わらないけど。
あー。いやだな、かわいくないもの。
剣だこ。
クローバー様たくさん頑張ってたものね。
この人の力になろう。
一緒にいて、会話をして、それだけで幸せだった。
だけど、一線を越えちゃったのよね。
ワタシが今、クローバーの花嫁としてヴァージンじゃないけどヴァージンロードを歩いているなんて。
テネシー伯爵家の当主様—--キウイ(スティーブ)のお母様のお兄様がワタシをエスコートしてくれる。
昔、戦場に出ていた時。
たまの正装で着ていたような真っ白な回復魔導士の騎士服に近いデザインのそれは、彼と結ばれた時のことを思い出させる。
あの時と違うのは、頭からヴェールをマントのようにひっかけていることと、胸や耳を飾る琥珀。
白い服にはアクセントのように茶色のラインが入っているところかしら。
彼の色に染まれるような白と彼の色を纏えることが嬉しい。
どこから話を聞きつけたのか知らないけど、元実家の面々が呼ばれてもいないのに式に来て、侯爵家の者に追い出されていた。
きっと披露宴にもしゃしゃり出てくるんだろうけど、もうご縁のないことだから。
絶対に侯爵家の敷居は跨がせない。
今生の別れになるけど、回復魔術師の給料も殆ど彼らが使い込んだのだから、それが手切れ金代わりでいいと思うの。
子どもの頃からナヨナヨして気持ち悪いだの、図体は立派なのにだの散々言って、私の学園の成績すら気にしていなかった人たちだもの。
上の兄二人の成績よりよっぽどワタシの方が優秀だったのにね。
それこそクローバーの補助役として、先生が侯爵様に推薦するくらいには。
昔はそれでも両親のために家のために助けになろうと思っていたけど、流石に自分の給料を勝手に使い込まれた上に廃嫡されれば、情も枯れるというものだわ。
兄たちは自分のことばかりで親のことなんかこれっぽっちも考えない。
後になって後悔しても、もう遅い。
ワタシって薄情かしら?親不孝者かしら?
違うわよね。
親を思う心は、この先、テネシー伯爵家やハピネス侯爵の両親に注ぐことにするわ。
神父さんの前で愛を誓い、署名をする。
ステンドグラスとろうそくの光に照らされたクローバーは、あの時より年をとって、すっかりイケオジになったけど、ワタシも同じくらい年をとった。
あの頃は、貴方と結ばれる夢なんて見ちゃいけないって思ってた。
あの頃―――――――。
「アバッキオ=クルトンです。クルトン男爵家の三男です。よろしくお願いいたします。」
まだ今みたいに体は出来上がっていなかったけど、身長も高く、実家の手伝いで子どもの頃から薪割りや畑仕事をしていたワタシは、学園を出たての新人としては、肉付きもいい方だったと思う。
回復魔術師だったけど、それなりに剣術や体術の腕もよかったから、前線でも耐えられる回復魔術師として先生の推薦で、憧れのクローバー=ハピネス侯爵令息の所属する部隊に配属になったのだ!
クローバー様は実直で、正義感にあふれ、とっても素晴らしい人。
傍で呼吸ができるだけで幸せ…。
前線が危険だとか関係ない。
「アバッキオは回復魔術師だって聞いているけれど、きちんと鍛えているんだね。」
見詰められると恥ずかしい!
「実家が貧乏男爵家なので…、家の手伝いで力仕事をしていたから。頑丈さだけが取り柄です!」
「頼りにしているよ。前線で回復魔術師が同行しているというのはとても助かる。戦える回復役は貴重だ。」
あぁ、クローバー様がワタシに微笑んで…。
学園ではずっと隅っこから見てました!
大きな手…。
ワタシの手もたいして大きさは変わらないけど。
あー。いやだな、かわいくないもの。
剣だこ。
クローバー様たくさん頑張ってたものね。
この人の力になろう。
一緒にいて、会話をして、それだけで幸せだった。
だけど、一線を越えちゃったのよね。
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