真面目な近衛騎士は借金返済のために雄っぱぶ嬢になりました。

竜鳴躍

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ターメリックの誤算

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(どうして……、帝国では一騎当千の側近たちがなんであんなにボコボコになるんだ。どうして…?)


魔法が使えないように施された特別製の牢の中。

ターメリックは片隅に膝を抱えて座っている。


自分たちは帝国の王太子とエリート。

属国のようなものだったティーポット王国なんて、少数でも簡単に制圧できる。

そう信じていた。


だが彼は失念していた。

ティーポット王国やウーロン国が恐れていたのは、オリエント帝国の巨大さだった。

それに、諸国を制圧して領土を拡大してきた国だとしても、それが純粋に戦闘力の強さを表すものではなかった。

ターメリックの魅了の力は弱いが、強い魅了の力の王さえいれば、それだけで相手は戦意喪失してきたのだから。


ゆえに常勝軍団の精鋭だとしても、本来の力は大したことはなかったのである。

勘違いした国、勘違いした王族、勘違いした軍部………。



「さあて、我の出番じゃなー。シェンちゃんも後々のためによおく見ておくのだぞ!」


牢から出されたと思ったら、頭に動物の耳をつけた白髪の男が前に出てきた。


「……我はこの地の守り神のようなものだ。しかし我には戦うための攻撃的な力はない。富を司る神だから。だが、それでもお前たちにおあつらえ向きの罰を与えることはできるぞ?」

白髪の男に捕まったと思ったら、私たちは見たこともない場所にいた。


「ここは神だけが住まう世界。ここで一生、下男としてこき使われるといい。虐げられる者の痛みを思い知れ。」







目が痛くなるようなカラフルな世界。

「おや、人間だ。みんな、人間が捨てられているぞ。」

「ケケ、齧ってみようか。」

「神に捨てられるなんて、よっぽどの悪人なのだろう。ふむ、みんながいいように貰ってもいいようだぞ。」

嘘だろう。

もちろん神だから、私の魅了なんて役に立たない。

自分はそこそこ美形だと信じて来たけれど、周りは信じられないくらいの美形ばかりで、彼らに比べれば自分はみすぼらしく、醜い。


「え、うそでしょう?異空間収納が使えないの?」

「人間ってひ弱!腕を切ったら生えてこないなんて。」

「100桁の数の計算くらい、1秒で応えてくれなきゃ。」

私たちは、自信を持っていた力や、知能や、美しさ、魔力の高さを悉くけなされた。


井の中の蛙。



見た目は綺麗な世界だけど、私たちは自尊心を削られながら、神たちの無理難題を叶えるためにこき使われる。
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