真面目な近衛騎士は借金返済のために雄っぱぶ嬢になりました。

竜鳴躍

文字の大きさ
上 下
48 / 89

攫われたスティーブ

しおりを挟む
「今日の炊き出しはシチューですよ。パンも一切れ持って行ってくださいね。」


「いつもありがとう。シチューは、あなたも作っているのか?」

「料理は得意なので…。」


「お礼がしたい。」

「お礼?」

「少し、裏に………。」


いつもの没落貴族だと思われる人。
いつかの自分が思い起こされて、自然と親切にし過ぎたかもしれない。

手を止めて、シスターに断り、ついて行った。

物陰から現れた男たちに抑えつけられ、魔法が使えないようにまず猿轡を咬まされる。


私が魔法を使うと知って………⁉



なんでこんなことを…。
戸惑いながら見上げると、顎をクイッと持ち上げられる。

「お前を気に入った。不遇な扱いを受けているのだろう?私の愛娼として、大事にしてやろう。」

愛娼⁉


私は娼館に送られたことになっているから、実際はジェームズが保護していたと流しても、平民まで浸透させるのには時間がかかる。

そういう目で見られていても仕方がないか………。

実際に体を舐められたり、触られたりはされていたのだから。


「私はオリエント帝国の王太子、ターメリック=パウダー=オリエント。近々ここは戦場になる。私のところにいれば、安全だ。」


そこで私の意識は途切れた。






恐らく、領地の何処か。

彼らは皆、炊き出しで見かけたから。

王太子とその側近だろう。

帝国は内乱が起きて、解体され、帝国の王族は処刑されたと聞いている。
生き残りがいたのだ。

王太子の実力は分からないが、私の体を抑えつけた二人は帝国の腕よりの騎士だろうし、彼の後ろで不測に備えて魔法の準備をしていた男は宮廷魔術士だろう。

いくら学生時代、成績がよかったといったって、私程度が出し抜けるとは思えない。

後手に縛られている縄が痛い。


固いベッドに転がされ、ガタガタの窓から見えるのは、月。


(ジェームズ………っ。)

心に想うのは。



どうにかして逃げなければ。




ガタッ。ターメリックが入ってくる。


「ターメリックさま、腕が痛いです。外してくださいませんか?」

「逃げないか?」

「私をあの家から助けてくださったのに?」

従順なふりをしよう。

今さら私の体なんて………。

こいつが油断するのなら、娼夫だって演じてやる。


胸が痛むのは気のせいだ。

にんまりとした男の腕が、私の体に触れた。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

風紀委員長様は今日もお仕事

白光猫(しろみつにゃん)
BL
無自覚で男前受け気質な風紀委員長が、俺様生徒会長や先生などに度々ちょっかいをかけられる話。 ※「ムーンライトノベルズ」サイトにも転載。

嫁さんのいる俺はハイスペ男とヤレるジムに通うけど恋愛対象は女です

ルシーアンナ
BL
会員制ハッテンバ スポーツジムでハイスペ攻め漁りする既婚受けの話。 DD×リーマン リーマン×リーマン

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

朝起きたら幼なじみと番になってた。

オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。 隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた 思いつきの書き殴り オメガバースの設定をお借りしてます

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

処理中です...