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攫われたスティーブ
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「今日の炊き出しはシチューですよ。パンも一切れ持って行ってくださいね。」
「いつもありがとう。シチューは、あなたも作っているのか?」
「料理は得意なので…。」
「お礼がしたい。」
「お礼?」
「少し、裏に………。」
いつもの没落貴族だと思われる人。
いつかの自分が思い起こされて、自然と親切にし過ぎたかもしれない。
手を止めて、シスターに断り、ついて行った。
物陰から現れた男たちに抑えつけられ、魔法が使えないようにまず猿轡を咬まされる。
私が魔法を使うと知って………⁉
なんでこんなことを…。
戸惑いながら見上げると、顎をクイッと持ち上げられる。
「お前を気に入った。不遇な扱いを受けているのだろう?私の愛娼として、大事にしてやろう。」
愛娼⁉
私は娼館に送られたことになっているから、実際はジェームズが保護していたと流しても、平民まで浸透させるのには時間がかかる。
そういう目で見られていても仕方がないか………。
実際に体を舐められたり、触られたりはされていたのだから。
「私はオリエント帝国の王太子、ターメリック=パウダー=オリエント。近々ここは戦場になる。私のところにいれば、安全だ。」
そこで私の意識は途切れた。
恐らく、領地の何処か。
彼らは皆、炊き出しで見かけたから。
王太子とその側近だろう。
帝国は内乱が起きて、解体され、帝国の王族は処刑されたと聞いている。
生き残りがいたのだ。
王太子の実力は分からないが、私の体を抑えつけた二人は帝国の腕よりの騎士だろうし、彼の後ろで不測に備えて魔法の準備をしていた男は宮廷魔術士だろう。
いくら学生時代、成績がよかったといったって、私程度が出し抜けるとは思えない。
後手に縛られている縄が痛い。
固いベッドに転がされ、ガタガタの窓から見えるのは、月。
(ジェームズ………っ。)
心に想うのは。
どうにかして逃げなければ。
ガタッ。ターメリックが入ってくる。
「ターメリックさま、腕が痛いです。外してくださいませんか?」
「逃げないか?」
「私をあの家から助けてくださったのに?」
従順なふりをしよう。
今さら私の体なんて………。
こいつが油断するのなら、娼夫だって演じてやる。
胸が痛むのは気のせいだ。
にんまりとした男の腕が、私の体に触れた。
「いつもありがとう。シチューは、あなたも作っているのか?」
「料理は得意なので…。」
「お礼がしたい。」
「お礼?」
「少し、裏に………。」
いつもの没落貴族だと思われる人。
いつかの自分が思い起こされて、自然と親切にし過ぎたかもしれない。
手を止めて、シスターに断り、ついて行った。
物陰から現れた男たちに抑えつけられ、魔法が使えないようにまず猿轡を咬まされる。
私が魔法を使うと知って………⁉
なんでこんなことを…。
戸惑いながら見上げると、顎をクイッと持ち上げられる。
「お前を気に入った。不遇な扱いを受けているのだろう?私の愛娼として、大事にしてやろう。」
愛娼⁉
私は娼館に送られたことになっているから、実際はジェームズが保護していたと流しても、平民まで浸透させるのには時間がかかる。
そういう目で見られていても仕方がないか………。
実際に体を舐められたり、触られたりはされていたのだから。
「私はオリエント帝国の王太子、ターメリック=パウダー=オリエント。近々ここは戦場になる。私のところにいれば、安全だ。」
そこで私の意識は途切れた。
恐らく、領地の何処か。
彼らは皆、炊き出しで見かけたから。
王太子とその側近だろう。
帝国は内乱が起きて、解体され、帝国の王族は処刑されたと聞いている。
生き残りがいたのだ。
王太子の実力は分からないが、私の体を抑えつけた二人は帝国の腕よりの騎士だろうし、彼の後ろで不測に備えて魔法の準備をしていた男は宮廷魔術士だろう。
いくら学生時代、成績がよかったといったって、私程度が出し抜けるとは思えない。
後手に縛られている縄が痛い。
固いベッドに転がされ、ガタガタの窓から見えるのは、月。
(ジェームズ………っ。)
心に想うのは。
どうにかして逃げなければ。
ガタッ。ターメリックが入ってくる。
「ターメリックさま、腕が痛いです。外してくださいませんか?」
「逃げないか?」
「私をあの家から助けてくださったのに?」
従順なふりをしよう。
今さら私の体なんて………。
こいつが油断するのなら、娼夫だって演じてやる。
胸が痛むのは気のせいだ。
にんまりとした男の腕が、私の体に触れた。
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