真面目な近衛騎士は借金返済のために雄っぱぶ嬢になりました。

スティーブ出会う

「それでは、行ってまいります。」

スプーン侯爵領は、ジェームズが改革して大分よくなったとはいえ、まだ貧しい者も多い。

荷馬車にたくさんの生地や糸、ハムや根菜、ニラやネギ大蒜を含めた野菜を積んで教会へ向う。

(私も一時期はお世話になった………。冤罪をかけられ、まともに仕事にもありつけなくて。父上に娼館にたたきこまれたと思ったら、あの店にまわしてもらえたのだっけ………。あの時から父上は私が憎かったのだな。そして、ジェームズが手を回して守ってくれたのだ。)


教会には、最近流れてきた者たちもいた。

帝国が潰れて、行き場をなくした者たち。

この国では嫌われて、仕事が難しいかもしれない。


「はい、どうぞ。」

温かいスープを渡して微笑む。

「…………そなた。名は？」

「スティーブと言います。」

薄汚れたフードの隙間からは、元は艷やかだったと思われる金髪がのぞく。

高貴な方だったのだろう。

なおのこと不憫に思う。

「教養のある方とお見受けします。この領では、人材育成に力を入れています。実力があれば、人材派遣も。もし、よろしければ派遣登録されてはいかがでしょう？」

「ありがとう。か、考えて、おく。」









「殿下、炊き出しはもらえましたか？」

「ああ、なかなか綺麗な男だな。」

「領主の長男らしいですよ。だけど、次期当主の座は弟に取られたらしいですね。冤罪で長らく平民暮らしをして、男娼の仕事をさせられていたようですから、一生屋敷で飼い殺しになるんでしょうな。」

「不憫な…………。決めた！私が地位を取り戻したら、愛娼にしてやろう！」

あの綺麗な男は泣いて喜ぶに違いない。

なんだろう。この胸のトキメキは！