真面目な近衛騎士は借金返済のために雄っぱぶ嬢になりました。

あれは絶対にアバッキオだ

あれは絶対にアバッキオだ。

私が間違えるものか。

大体、190を越えるような体格のいい美人で、あんなにかわいい人が他にいてたまるか。


アバッキオは面倒見がよくて、優しくて。
あのおおらかさに私は癒やされていた。


この手はまだ君を覚えている。



働く場所が変わっても、私は君と離れるつもりはなかった。
君は強いから心配することじゃないかもしれないけど、私のいない前線にはいてほしくなくて、治療院へ紹介しようと思っていた。

だって君は人気があったから、私のいないそこで、他の男に手を出されたくなかった。


君は同性であることを気にしていた。
だから後継は弟に譲った。
でもそれ以上に君は、男爵家の三男であることを気にしていた。

分かっていたのに、後手に回ってしまった。


もう逃さない。逃がしたくない。



「オランジェ妃殿下、ジェームズ、今の方は？」



すれ違ったまま蕾のままの愛の花が咲くのは、もうすぐ。