真面目な近衛騎士は借金返済のために雄っぱぶ嬢になりました。

邪悪な娘と妻の末路(リーフ前公爵視点)

「うふふ、あなた。里帰りなんて久しぶりだわ、お兄様元気かしら？」

生まれつきの魅了持ち。
バジル=リーフにとって力は忌まわしいものでしかなく、ミルクティー色の髪を伸ばして眼や顔を隠すことでやり過ごしてきた。

帝国から押し付けられたスパイシーの対抗馬として指名されるまでは。

やむを得ず娶った悪女は、悪女ではあるが、悪意のない女で可愛らしいと感じるところもあった。

彼女は彼女で私に魅了されているらしく、私が諫めれば言うことを聞く。

問題は、常時見張ってはいられないところだった。


生まれた息子も娘もかわいかったが、娘は傲慢に育ち、息子は娘のいいなり。
矯正しようともしたが矯正できず、大きな問題を起こしていないように見えたのが間違いだった。


かたを付ける。帝国を倒す。
王太子殿下はニヤリと笑った。
私も裏で動きながら、殿下の側近が無血開城を先導していた。


「…………え、う、うそ。お兄様っ！」

帝国についた時、城では王族が縛られ、処刑されるところだった。

「スパイシー！この疫病神！お前たちが王太子妃を狙うから！こんなことに！！」

血走った眼で呪詛をはき、帝国の王は死んだ。



道を歩けば、スパイシーは石を投げられる。

傷心のスパイシーの魅了と催眠術の力を奪うため、護衛騎士であるゴルデン親子に野盗のふりをさせ、彼女の眼と口に傷を負わせた。
彼女の視力は極端に落ち、満足に発語できなくなり、顔に傷が残って自信をなくした。

国で起こったファーメントの事件を言うと、あっさりと彼女は娘を捨てた。

ティーポット王国の国境にある旧帝国の片隅に屋敷を購入し、彼女と暮らしていく。
ゴルデン親子は騎士が生き甲斐らしく、騎士としていられるなら、ずっと傍にいてくれるらしい。

………でもたぶん、彼らは私に魅了されている気がする。

私で良ければ、彼らに愛される生活も悪くない。
自信をなくしたスパイシーは、醜い自分に私は相応しくない、捨てないでいてくれるだけありがたいと思っているらしかった。



スパイシーは悪気がなかったが、悪意を持って人を操り、貶めた娘は、さらにどうしようもない。

催眠術がかけられないよう舌が切られ、罪人の入れ墨を顔いっぱいに入れられて、馬に乗せられて晒されながら、北の修道院に入れられた。
脱走したら即死する魔法を仕込まれて。


彼女は、脱走したら死ぬことを知らない。


すぐに死にそうだが、親としては少しでも罪を償ってほしい。



そして、満足に守ってやれなかったドライに、申し訳なく思う。