真面目な近衛騎士は借金返済のために雄っぱぶ嬢になりました。

竜鳴躍

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さぁ、断罪の時間だ。

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(私が指示してから4か月よ?あのオリバー、『城に忍び込んで妃を暗殺するって時間がかかるんです』ってのらりくらり…。でも、ついに!ついにやったのよ!!)

1週間前、ついに『ことが済んだ』と報告があったけれど、すぐに駆け付けたら私が怪しまれる。
今朝方、あいつが姿をみせなくなり、貴族たちの間で『暗殺されたのでは?』と噂になっていると、オリバーから報告があった。

行くなら今だと。

だから、喜び勇んで城に駆けつけた。




(……?なんか城の中にやたらめかしこんだ貴族が多いわね?噂を聞きつけたのかしら。負けてられないわ!)


素敵な白字にオレンジの縁取りをした衣装に、エメラルドの胸飾りを身に着けた殿下を見つけて、とびきり心配気な顔で駆け寄る。

「殿下。この度は、たいへん残念なーーー」




「何が残念なのかな?」


「え?」




「今日はむしろおめでたい席ですのに。」

「リーフ公爵令嬢はどうして普段着なのかしら…?」



「え?」


人混みに流されるように、ホールへ押し出される。

私以外の人々は、正装姿で髪をアップにし、豪華な装飾品に身を包んでいる。

そう、まるで夜会のように。


(………ど、どういうこと????)



音楽隊がファンファーレを鳴らし、陛下と王妃が入ってくる。

そして、殿下にエスコートされたオランジェが。

(何なの???オリバぁああああああああああ!!死んでないじゃないのよぉ!!)



「今日はめでたい席だ!息子の妃であるオランジェが、子を懐妊した。安定期に入り、皆に伝えることとした。オランジェはこれにて、ダージの正妃となる!」

「なんですって!?陛下、おそれながら男にどうして子が出来るというのです?」
陛下ったら乱心でもしたの?
まさかあいつ、催眠術でも覚えたのかしら!

「ペコー伯爵領の東の山は、伝説の山だった。金脈の麓に『誰でも子が産めるようになる桃』が生えていると。それは真実であった。オランジェの実家であるペコー家は、代々ウーロン国との懸け橋であり、我が国の聖者としてその神の山を奉り、家から神の妻を出していた。この度、前当主であるオレンジ=ペコーが神・シェン様の妻になったことにより、神の力の恩恵が与えられることとなった。皆の者、紹介しよう。我が国の守り神、シェン様とその妻のオレンジ=ペコー、二人の子であるシェン様である!」

うわぁあぁあ、と歓声の中、白い美丈夫と現れる………え??あれがオレンジ=ペコー?若くないかしら?
私は何を見せられているの?

どうしてみんな受け入れているの?

なに?

お茶会をしてた?知らないわよ?

え?みんな姿だけ若返らせてもらったの?

そういわれてみれば………知っている夫人たちの肌が若い…?王妃様も頬の肉が上がって首にしわがないような…。


「さらに、ペコー家は神と縁を繋いだことにより、豊富な金脈を得た。ペコー家の後ろには、シェン様とウーロン国がある。これからも領地は国の要所となり、ますます発展していくことだろう。神の山を守り、国を守る。課せられた責任も重い。王家でさえ忘れていたこのような重責を、人知れず行ってきたかの家を伯爵家のままにさせておくわけにはいかない。ペコー家はこれより、リーフ公爵家との本家分家関係を切り、独立して侯爵家となる。オレン=ペコー、前に。」

え??

目の前で綺麗な格好をしたオレンと、地味だったはずの子爵令嬢がとんでもない美人になって新たな爵位を拝命する。

なによ!

分家じゃなくなる!?

どういうことなの??????


いやよ!


「これでオランジェの実家は侯爵家。後ろ盾として弱いと正妃に相応しくないと思う者もいないと思う。」

陛下が私をみて睨んだ?

幸せそうに微笑みあう殿下とオランジェ………。


姿を見せなくなったのは……、暗殺されたのではなく、妊娠したから安静にしていたってこと!!!??


でも、でもなんで?

私は確かに指令を出して………。


それで――――――――




何かがおかしい。


いつだって私は騙す側だった。


でも、今日は―――――――。


汗が流れる。


「そして今日は、リーフ公爵家の代替わりも宣言しよう。」


え?


「長年、リーフ公爵にはオリエント帝国から我が国を守るため、犠牲になってもらっていた。おかげで魅了による大きな混乱は避けられたと思う。帝国での血で血を洗うような混乱を思えば、その功績は大きい。向こうは我が国を内乱に陥れ、国力を削ぐつもりであっただろうから。しかしながら、かの令嬢により、これまで小さな災いはあった。ダージにターゲットが一点集中したおかげで、結果的に被害は少なかった。が、少なかったとはいえ、一人だけ……、それにより汚名を着せられた者がいる。防げなかったこと、娘が独自に雇っている人間に気付けなかった責任をとり、前公爵は代替わりを望み、妻を連れて帝国へ向かった。」



え??

え?


お母様たちは旅行……じゃないの?????


「ドライ=リーフ。」

「は。」


え??


私に逆らえない、死んだ目のお兄様。

なんでそんなに爽やかスッキリの顔をしているの?


「長年、彼は妹の指令下にあった。その力により思考を操られておったのだ。秘密裏に保護し、完全にその力から解放された。一度破った暗示は二度とかからない。」

「今までの愚行、恥ずかしく存じます。これから生まれ変わった気持ちで、国のため働きます。」

「わしらは見ておるぞ。これからの生き方で、信頼を勝ち取るように。」


「はい。リーフ公爵として努めます!」


ええ!


「へ、陛下!次期公爵は私と決まっていて――――!」


「無礼な!口をはさむ出ない。そもそも初めはドライ=リーフの予定であった。男色だったから子が出来ぬという理由で降りただけ。ならば、男同士でも子が期待できる今なら、なんの問題も無し。元に戻るが筋。そして、この瞬間より、公爵はドライである。つまり、ファーメント=リーフ………。そなたは公爵令嬢ではない。の娘、元リーフ公爵という平民の娘である!」



「へ、へいみん…??わたしが…??嘘よ、お母様は王女よ!大国、オリエント帝国のッ!」


「帝国で持て余され廃嫡された元王女。帝国の要らないもの、のな。」


「うそよ……帝国のおじさまは……。」


「帝国から何か贈り物があったことが一度でもあるか???」


―――――――――――ない。



今までの価値観が崩れていく。

なのに、まだまだ終わらない。
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